交流送電に対するHVDCの利点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/11 08:37 UTC 版)
「直流送電」の記事における「交流送電に対するHVDCの利点」の解説
HVDCの利点は、少ない社会的コストで交流送電よりも低損失で、大量の電力を長距離にわたり送電可能なことである。電圧レベルと構造詳細によっては、損失は1,000 km当たり約3 %と見積もられる。高電圧直流送電は電力負荷中心から距離が離れているエネルギー源を効率的に利用することができる。 多くの適用事例では、HVDCは交流送電より効果的である。 例高い静電容量が付随的な交流損失をもたらすような海底ケーブル(例えば250 kmのスウェーデン・ドイツ間バルト海ケーブル (en:Baltic Cable) や600 kmのノルウェー・オランダ間en:NorNedケーブル)。 遠方地域における例えば中間タップのない端点-端点間の長距離大容量送電。 追加の配電線敷設が困難あるいは高価となる状況下で、既存の配電網の容量を増加。 非同期交流配電システム間の送電と安定化。 遠方発電所と配電網との接続。たとえばen:Nelson River Bipole。 交流優勢配電網の安定化。固有短絡電流en:prospective short circuit current増加なしでの。 配電線費用の低減。HVDCは複合位相に対応する必要がないために導体がより少なくて済む。また、HVDCが表皮効果に影響されないことから薄い導体が用いられうる。 異なる電圧や周波数を用いる異なる国間での送電の促進。 再生可能エネルギー源により発生した交流の同期。 長距離の海底高圧線は高い静電容量を持っており、これは絶縁体と導体シースの比較的薄い層で導体が囲まれているためである。この構造は長い同軸状のコンデンサとなっている。交流がケーブル伝送で用いられる場合、この静電容量は負荷と並列に生じる。ケーブルにおけるコンデンサを充電するため、負荷電流を余計に流す必要があり、これはケーブルの静電容量に対する追加損失となる。加えて、ケーブル絶縁体の素材には誘電体損失要素があり、これは電力を消費する。 けれども、直流を使用した場合、ケーブルに最初に通電するか、電圧を変化させたときのみケーブルのコンデンサは充電される。定常状態での追加的電流は不要である。長距離の交流海底ケーブルにとっては、全ての導体の電流通過静電容量は充電電流のみを供給するのに使われうる。これは交流ケーブルの長さを制限している。直流ケーブルはそのような制限がない。しかし、誘電体を流れ続ける直流漏えい電流もあるが、これはケーブル定格に比べればとても小さい値をとる。 HVDCは導体あたりの電力をより多く送ることができる。これは同じ電力定格において、直流の一定電圧は交流の波高電圧よりも低いためである。交流電力においては、実効値 (RMS) 電圧量が標準とみなされるが、RMSは波高電圧の約71 %に過ぎない。交流の波高電圧は実際の絶縁体厚さと導体の間隙により決められる。直流は常に最大電圧で作用するので、等しい寸法の導体と絶縁体を持つ既存の配電線路で、100 %以上の電力を電力消費の高い地域に、交流よりも低損失で送電することができる。HVDCは非同期交流配電システム間の送電を可能にし、これは一つの広域な配電網から別区域への伝播によるカスケード故障 (en:cascading failure) を避けることでシステムの安定性を増加することに寄与しうる。交流ネットワークの一部を非同期・分離することを生じさせる負荷変動は、同様に直流連系に影響しないだろうし、そして直流連系による電力潮流は交流ネットワークを安定化させる傾向にあるだろう。直流連系のどちらの端部でも、交流ネットワークを支持するために直流連系を通じた電力潮流の大きさと方向を直接指令して、必要に応じて変えることができる。
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