乳房炎
乳牛にとって、いちばん身近な病気のひとつが乳房炎です。これは、たとえば何かの理由でオッパイにばい菌が入ってしまい、このばい菌を排除しようとする防御反応で、炎症を起こしてしまいます。ばい菌の種類や健康状態にもよりますが、比較的かんたんに直るものから、重症になって死亡してしまうケースもあります。ですから、酪農家は、寝わらを毎日取り替えたり、こまめに牛舎を掃除したり、清潔な環境をつくることに、細心の注意を払っています。 乳房炎にもいくつか種類があって、最も症状が激しいのが、甚急性乳房炎。体温が上昇したり、呼吸が速くなったり、下痢をしたり、立つことが困難になるほどのケースもあります。放置すれば敗血症になることもあり、この乳房炎にかかった乳牛には早急な治療が必要になります。 また、真夏の放牧牛に発生しやすいのが夏季乳房炎。ハエなどが媒介すると考えられていて、甚急性乳房炎に似た症状を示します。乳房炎になると、ふつう、オッパイが赤くふくらんだり、患部を痛がったり、炎症が全身にひろがって体温が上がるなどの症状を示しますが、これとは別に、症状があらわれず、静かに病気が進行してしまうこともあります。 そのため、乳房の観察はもちろん、牛の歩く動作、食欲の急激な異常などにも、酪農家は気をつけているのです。 皆さんも、牧場を訪れたとき、搾乳体験などで乳牛のオッパイに触れるときは、牧場の人の注意を守って、きれいに手を洗ってからお乳を搾るようにしてください。 |
<ミルククラブ情報誌'98 WINTER vol.30より> |
乳腺炎
(乳房炎 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/31 20:22 UTC 版)
乳腺炎(にゅうせんえん、英: mastitis)とは、乳腺実質(霊長類の胸部、他の哺乳類の乳房(Udder))の炎症。乳房炎(にゅうぼうえん)とも。
泌乳動物では産褥性乳腺炎、それ以外の動物では非産褥性乳腺炎と呼ばれる。乳腺炎は雄でも発生するが極めて稀である。炎症性乳癌と乳腺炎の症状は非常に似ており鑑別が必要である。
乳腺内は微生物にとっても栄養豊富な環境である。乳中には抗菌物質リゾチーム、ラクトフェリン、乳糖などが存在するが万能ではない。乳中に過酸化水素分解酵素が存在し、微量でも過酸化水素が存在するとチオシアン酸が生成し、微量でも殺菌作用を示すが乳腺細胞に害を与えない[1]。
分類
急性乳腺炎
母乳が詰まり、乳頭から細菌感染が起こることが原因で発生する。授乳期に主に見られる疾患である。主な症状は、乳房の張れや痛み、しこり、高熱など。症状が初期の段階では抗生剤を服用するが、症状が進んだ状態では、皮膚を切開して膿のたまりまで管を入れて膿を排出させる必要がある。予防として考えられるのは、乳房マッサージや赤ちゃんに母乳を飲んでもらうこと[2]。
慢性乳腺炎
主な症状はしこりや硬結、皮膚の発赤、びらん(ただれること)。原因が不明な場合も多く、症状や画像所見で乳癌との区別が難しい場合は、細胞を採って確認する[3]。
脚注
- ^ 酒井仙吉 『哺乳類誕生、乳の獲得と進化の謎』 ブルーバックスb-1898、2015年1月20日、講談社、ISBN 978-4-06-257898-1
- ^ “乳腺外科|クリニックフラウ栄|名古屋市中区栄-乳腺外科・婦人科” (日本語). クリニックフラウ栄. 2022年8月31日閲覧。
- ^ “乳腺外科|クリニックフラウ栄|名古屋市中区栄-乳腺外科・婦人科” (日本語). クリニックフラウ栄. 2022年8月31日閲覧。
外部リンク
乳房炎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 00:02 UTC 版)
乳房に細菌が入り、この細菌を排除しようとする防御反応で、炎症を起こしてしまった症状をいう。細菌の種類や牛の健康状態によって軽度なものから重度なものまで症状はさまざまである。大腸菌性乳房炎にり患した場合、発熱や脱水、食欲の低下などの全身症状を示し、感染乳房は強い痛みと熱感を伴い腫脹する。症状が重篤な場合、泌乳停止や起立不能となり、死亡に至る。乳房炎は乳牛の身近な病気のひとつであり、平成28年度の乳用成牛の病傷事故では、泌乳器病は実に45%と最も多く、その大部分は乳房炎となっている。また死廃事故では、乳房炎は心不全、脱臼および筋損傷に次いで多く、約10%を占める 飼育環境が不衛生であること、牛の健康状態が悪いことが原因としてあげられており、過搾乳になりやすく環境にデリケートな高泌乳の牛ほど乳房炎になる確率が高い。 包括的乾乳牛療法(乳房炎を予防するために乳房に抗生剤を定期的に注入する措置を、次の出産に備えて泌乳を止めている2、3か月の間に、飼われている全ての乳牛が受けること)は一部の有機農家を除いてヨーロッパで広く行われており、乳牛は年に2回この措置を受ける。しかし、抗生剤の頻繁な使用は耐性菌の発生確率を高める。
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