九州大学第二内科の調査とは? わかりやすく解説

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九州大学第二内科の調査

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 10:37 UTC 版)

八丈小島のマレー糸状虫症」の記事における「九州大学第二内科の調査」の解説

九州帝国大学第二内科(現・九州大学大学院病態機能内科学)の望月代次と井上三郎2人は、「象皮病原因連鎖球菌である」とする吉永帖佐結論疑問持った望月井上一部象皮病患者ミクロフィラリア見られないからといってフィラリア症否定するのは早計であり、もっと多数患者検査する必要がある考え吉永帖佐調査行った翌年1912年大正元年9月上旬八丈島八丈小島訪れた望月井上による八丈小島調査はおもに鳥打村行われたが、その調査結果前年吉永・帖佐による結果大きく異なっていた。望月井上が行った血液検査結果は、鳥打村在住者のうち象皮病を持つ32名のうち15名(46.8%)にミクロフィラリアを見つけ、さらに象皮病持たない56名のうち26名(46.4%)にもミクロフィラリア見つけた。この検査成績年齢症状別に調べられており、それをまとめたものが次の表である。各数字分子ミクロフィラリア陽性者数、分母検査数である。 八丈小島鳥打村)における年齢別症状別のミクロフィラリア検出状況望月井上1912年/大正元年症状/年齢1-10歳11-20歳21-3031-40歳41-50歳51-60歳61-70歳合計丹毒(あり) 象皮(あり) 1/3 0/4 6/9 5/10 2/2 14/28 丹毒(なし) 象皮(あり) 1/2 0/1 0/1 1/4 丹毒(あり) 象皮(なし) 0/9 2/2 1/2 3/6 浮腫(あり) 象皮(なし)1/5 8/22 6/8 2/3 1/1 18/39 無 症 状2/3 0/4 2/3 1/1 5/11 合計3/8 9/30 11/17 4/10 6/10 6/11 2/2 41/88 このように象皮病症状有無問わず鳥打村住民血中ミクロフィラリア陽性率は4割以上の高率であり、「ミクロフィラリアは見いだせなかった」とする前年吉永帖佐調査結果大きく異なっている。なお、見出したミクロフィラリア種類については特に述べておらず、日本国内の他のフィラリア流行地と同様にバンクロフト糸状虫見なしたものと考えられている。望月井上はこの結果から、象皮病発生にはフィラリア糸状虫関与が必要であることを主張し連鎖球菌主因とした京大側の結論異論唱えた。ただし、フィラリア寄生によってリンパ系鬱滞が起こることが象皮病の主要因ではあるものの、鬱滞した部分細菌感染しやすくなるのも事実であって細菌感染による丹毒発作あり得るとし、感染過程のある時点では何らかの細菌関与があることを認めている。 なお、この九大の2名も八丈小島での臨床的観察において、下肢象皮病見られるが、陰嚢水腫乳糜尿については1例も見られなかったことを特記しており、さらに吸血したもの含め15匹のヤブカ剖検し、そのうちの3匹にフィラリア幼虫しきもの見出した記している。この調査短時間かつ簡易的行われたため不完全ではあるものの、八丈小島におけるフィラリア糸状虫伝播問題最初の記録であり注目に値すると、後年寄生虫学者の佐々学指摘している。なお、八丈島本島でも調査が行われ大賀郷村三根村樫立村中之郷村末吉村の計5か象皮病患者総計21名おり、もっとも多かった樫立村では症状のないものを含めた29名の村民のうち17名の血液中にミクロフィラリア検出しそのうち1名には陰嚢水腫認められたという。その後連鎖球菌説を主張する京大派とフィラリア説を主張する九大派の論争続いたが、最終的に京大側が矛を収めるになった九大による調査が行われた1912年大正元年)は寄生生物学者のステッフェン・ランバート・ブラッグ(英語版)がマレー糸状虫新種記載する15年も前のことであり、八丈島本島八丈小島フィラリア別種であることは誰も気づいていなかった。 こうして東京のはるか南に浮かぶ小さな島は、医学者研究の場として選ばれ象皮病成因について論議材料提供することになった。しかし、1912年大正元年)の九州大学による実地調査のあと、八丈小島訪れ調査を行う研究者長期間わたって現れなかった。研究者訪れることもなく無医村であった八丈小島では、その後依然としてバク病の流行途切れることなく続き島の人々病気苦しめられ続けていた。

※この「九州大学第二内科の調査」の解説は、「八丈小島のマレー糸状虫症」の解説の一部です。
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