象皮病とは? わかりやすく解説

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ぞうひ‐びょう〔ザウヒビヤウ〕【象皮病】

読み方:ぞうひびょう

リンパの循行障害のため、特に下肢皮膚皮下組織が象の皮のように厚く硬くなる慢性の病気バンクロフト糸状虫リンパ管内に寄生するために起こることが多い。アフリカ東南アジア中央アメリカなど熱帯地方多く日本では九州みられる


象皮病

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/23 04:27 UTC 版)

Elephantiasis
象皮病の女性患者
概要
診療科 感染症
分類および外部参照情報
象皮病の患者。

象皮病(ぞうひびょう、Elephantiasis)あるいは象皮症(ぞうひしょう)とは主としてバンクロフト糸状虫などのヒト宿主とするリンパ管リンパ節寄生性のフィラリア類が寄生することによるフィラリア症による、後遺症の一つ。

身体の末梢部の皮膚や皮下組織の結合組織が著しく増殖して硬化し、ゾウの皮膚状の様相を呈するため、この名で呼ばれる。陰嚢、上腕、陰茎外陰部乳房などで発症しやすい。

概要

葛飾北斎による象皮病患者の浮世絵。右の男は陰嚢が巨大化し、2人がかりで担いでいる

フィラリアは線形動物門(線虫類)に属する寄生虫で、今日の日本ではヒト寄生性のフィラリアがほぼ根絶されているため、イヌ寄生性のフィラリアの方が有名になっている。しかし、ヒト寄生性のフィラリアは江戸時代には全国的に分布し、重大視される感染症の一つであった。稀にイヌ寄生性のフィラリアも人体に感染することがあるが、これは心臓寄生性であり、象皮病は起こさない。

フィラリア類の雌はミクロフィラリアと呼ばれる幼生を多量に産生し、これが末梢の毛細血管中に移行して媒介者であるに吸引され、他の宿主に運搬される。バンクロフト糸状虫などはリンパ管やリンパ節に成虫が寄生するため、雌の産んだミクロフィラリアは、まずリンパ管内に出現する。患者は急性症状として成虫やミクロフィラリアに起因するリンパ管やリンパ節の炎症を起こし、これが繰り返されることでリンパ管の閉塞や破裂が起こる。リンパ管の主要な機能は身体末梢部に毛細血管から供給される組織液の回収であるので、リンパ管の破壊が進行すると身体末梢部に組織液が滞留し、むくみ(浮腫)を生じる。この浮腫の刺激によって皮膚や皮下組織の結合組織が増殖して象皮病をきたすのである。

このように、象皮病の直接的な原因はフィラリアの寄生ではなく、リンパ管の破壊と、それによる組織液の滞留である。そのため、体内のフィラリアが既に死滅して感染自体は終結していても、この症状は進行する。むしろ重症の象皮病の患者の体内からは既にフィラリアは見られないことが多い。

また、フィラリアの感染によらず、乳癌などの手術によってリンパ管を破壊しても、象皮病を起こすことがある。

著名な症例

  • 江戸時代に象皮病が日本に蔓延していたことは、葛飾北斎の画に象皮病の患者が描かれていることや、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』に象皮病の症状のことを詠んだ歌があることからもうかがえる。
  • 幕末維新志士である西郷隆盛は象皮病を患い、晩年は陰嚢が人の頭大に腫れ上がっていたという。藤田紘一郎の『空飛ぶ寄生虫』によると、西南戦争で自害し首のない西郷の死体を本人のものと特定させたのはこの巨大な陰嚢であったという。
  • 2017年に体重約500kgのエジプト人女性の緊急減量手術が行われることとなったが、幼少期に象皮症を患い病状の進行とともに動けない状態になってしまったことが原因とされている[1]

脚注

  1. ^ “体重500キロの「世界で最も重い女性」、インドで減量手術へ”. AFPBB News (フランス通信社). (2017年2月14日). https://www.afpbb.com/articles/-/3117657 2017年4月16日閲覧。 

関連項目

外部リンク


象皮病

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 10:37 UTC 版)

八丈小島のマレー糸状虫症」の記事における「象皮病」の解説

象皮病(ぞうひびょう Elephantiasis )はフィラリア症病態としてはもっともよく知られている。おもに四肢肥大により足や手が太く変形し、象の皮膚のように見えるためこの名前がある。象皮病はフィラリア成虫太もも付け根にあるリンパ管に「とぐろ」を巻いて居座ることが原因である。リンパ管内のフィラリア障害となってリンパ液流れ悪くするため、太ももより下部リンパ液胴体のほうへ戻りにくくなり、足に溜まったリンパ液によりリンパ浮腫(むくみ)が目立つようになることから、やがて多発した浮腫固定化されてしまう。初期浮腫痒み強いため爪などで掻くが、汚い爪で掻くとさまざまな細菌入りリンパ液培地として炎症起こすその結果痒みはさらに激しくなり、何度も掻き続けるため同じ場所の炎症何度も繰り返しついには皮下組織厚くなり毛が抜けてしまう。度重なる炎症浮腫によって足の肥大皮膚のただれ、変色起こし、まるで象の足のようになる。 象皮病は日本では古くから知られている。平安末期もしくは鎌倉初期作られたと考えられる病草紙異本)というさまざまな病気描いた絵巻物の中のひとつに十二単まとった貴族思われる若い女性描かれている絵がある。この女性は上半身下半身露わにし、両足黒く変色して皮膚ただれているように見える。付き添う2名の女官が心配そう表情で見つめる様子描かれており、これは今日でいう象皮病ではないか考えられている(右記画像外部リンク参照)。

※この「象皮病」の解説は、「八丈小島のマレー糸状虫症」の解説の一部です。
「象皮病」を含む「八丈小島のマレー糸状虫症」の記事については、「八丈小島のマレー糸状虫症」の概要を参照ください。

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