長崎大学による症状の再検
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 10:37 UTC 版)
「八丈小島のマレー糸状虫症」の記事における「長崎大学による症状の再検」の解説
八丈小島における伝研のマレー糸状虫調査研究が知られ始めると、フィラリア症を研究する他の研究機関も八丈小島を訪れその症状の再検を行った。長崎大学の北村精一(後の同大学長)と片峰大助(後の熱帯医学研究所所長長崎医科大学 (旧制)#東亜風土病研究所参照)は、九州各地におけるバンクロフト糸状虫症の臨床に関する豊富な経験を基にして、八丈小島のマレー糸状虫症との比較研究を行うため、1952年(昭和27年)9月に八丈小島を訪れ調査を行った。その結果の概略をまとめると次の通りである。 八丈小島における症状の概略は、バクと呼ばれる初期症状と、ミツレルの名で呼ばれる丹毒様およびこれに続発する四肢の象皮病である。 初期症状のバクの後、外傷などの誘因によって突然当該四肢に線状もしくは帯状のリンパ管発疹、さらに広範囲の丹毒様皮膚変化を起こし、悪寒、戦慄、発熱などの全身症状を伴った熱発作が襲来するようになる。島民はこの症状をミツレルと呼称し、バク初期症状と区別している。 ミツレル丹毒様発作を繰り返しているうちに漸次象皮病に移行することはバンクロフト糸状虫症の場合とほとんど同じである。 器質的病変としては四肢の象皮病のみで、他部の象皮病、陰嚢水腫、乳糜尿など一例も発見できなかった。 これにより改めて八丈小島のマレー糸状虫症の症状が明確に把握された。長崎大学の調査では観察した27名すべてバク初発症状を経験しており、そのうち11名がミツレル丹毒様発作を起こしている。残りの16名はバク様発作のみでその後の後遺症はない。また、象皮病の10名はいずれもミツレル丹毒様発作の既往歴があり、象皮病に発展にはミツレル丹毒様発作が欠くことのできない症状と考えられた。なお、バク初発の誘因として労働や疲労に関係することが多いのに対し、ミツレル丹毒様発作では外傷が大きな誘因であることが再確認され、最初のバク発作は季節的に見て夏から秋にかけて発症する例が圧倒的に多いことも確認された。
※この「長崎大学による症状の再検」の解説は、「八丈小島のマレー糸状虫症」の解説の一部です。
「長崎大学による症状の再検」を含む「八丈小島のマレー糸状虫症」の記事については、「八丈小島のマレー糸状虫症」の概要を参照ください。
- 長崎大学による症状の再検のページへのリンク