リガンドの結合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/09 14:30 UTC 版)
インスリン受容体 (IR) の内在性リガンドには、インスリン、インスリン様成長因子 (IGF-I、IGF-II) が含まれる。IRの細胞外領域へのリガンドの結合によって受容体内部の構造変化が誘導され、細胞内のβ鎖のTKドメイン内のさまざまなチロシン残基が自己リン酸化される。これらの変化によって、インスリン受容体基質 (IRS)、SH2-B (Src Homology 2-B)、APSといった特定のアダプタータンパク質や、PTP1B(英語版)のようなプロテインホスファターゼが呼び寄せられ、血中グルコース濃度の恒常性に関与する下流過程が促進される。 厳密に言えば、IRとリガンドの関係は複雑なアロステリック性を示す。これはスキャッチャードプロットによって示され、IRに結合しているリガンドと結合していないリガンドの比はIRに結合しているリガンド濃度の変化に対して線形関係になく、IRとリガンドは協調的結合を行う関係にあることが示唆されている。さらに、IRとリガンドの解離速度は結合していないリガンドの添加によって加速され、このことは負の協同性があることを意味している。すなわち、IRへの1つ目のリガンドの結合によって2番目の活性部位への結合が阻害される、というアロステリック阻害が起こることが示されている。 IRへのリガンドの結合の正確なメカニズムはまだ構造的に明らかにされていないが、システム生物学によるアプローチによって、現在利用可能なIRの細胞外領域の構造に基づいた、生物学的に妥当な条件下でのIR-リガンド(インスリン/IGF-I)動態についての予測がなされている。 これらのモデルでは、IRの単量体には2つのインスリン結合表面(site 1、2)があるとされる。Site 1はL1ドメインとαCTから構成される「classical」なインスリン結合表面で、site 2はFnIII-1とFnIII-2の接合部に位置し、インスリンの六量体形成面に結合する「novel」な結合表面である。IRの細胞外領域の各単量体は鏡像的相補性を示し、一方の単量体のN末端側のsite 1は、他方の単量体のC末端側のsite 2と向かい合い、反対側も同様となる。現在の文献では、2番目の単量体のsite 1とsite 2をsite 3とsite 4、またはsite 1' とsite 2' と命名することでこの相補的な結合表面を区別している。インスリンが特定の位置(site 1とsite 4/2' またはsite 3/1' とsite 2)に結合すると、リガンドによる結合表面間の「架橋」によって、2つの単量体はより近接する。現在のIR-インスリン動態の数学的モデリングからは、インスリンによる架橋によって2つの重要な帰結がもたらされる。1つ目は、IRへのさらなるリガンドの結合が減少するという、上述したIR-リガンド間の負の協調性である。2つ目は、架橋による物理的な運動によって、細胞内領域がチロシンのリン酸化が起こるコンホメーションとなることである。すなわち、これらの出来事が受容体の活性化と最終的な血中グルコース濃度の恒常性の維持に必要とされるのである。
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リガンドの結合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/27 15:14 UTC 版)
CBSドメインはAMPやATP、S-アデノシルメチオニンなどの分子のアデノシル基に結合することが示されているが、Mg2+などの金属イオンも結合する可能性がある。こうしたさまざまなリガンドの結合に伴って、CBSドメインは関係する酵素ドメインの活性を調節する。その分子機構の解明はまだ始まったばかりである。現時点では、2つの異なる機構が提唱されている。1つの機構では、リガンドのヌクレオチド部分はタンパク質構造に対して本質的に何の変化も誘導せず、結合部位の静電ポテンシャルの変化がアデノシンヌクレオチドの結合の最も重要な性質であるとされる。この「静的な」応答は、電荷による調節が有利な過程に関与しているとされる。対照的に、2つ目の「動的な」機構は、リガンドに結合に伴うタンパク質構造の劇的なコンフォメーション変化を伴う。こうした例は、Thermus thermophilusのMg2+トランスポーターMgtEの細胞質ドメイン、M. jannaschiiの機能未知タンパク質MJ0100、Clostridium perfringensのピロホスファターゼの調節領域で報告されている。
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