転写活性化機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/16 06:25 UTC 版)
「エストロゲン受容体」の記事における「転写活性化機構」の解説
従来ERの活性化のスイッチはリガンドの結合であると考えられてきた。リガンドの結合はERの二量体の形成とそれに引き続いて起こる核内移行を引き起こす。ERはさらにDNA上のエンハンサー配列であるEREに対して結合して遺伝子の転写活性化させ、その作用を発現するというのが古典的なモデルであった。確かにリガンドの結合によって転写活性化が引き起こされることには間違いないのだが、近年の研究ではERを含むステロイド受容体の活性化はリガンドの結合よりもむしろ翻訳後修飾が重要な役割を担っていることが分かってきており、リガンドの結合を必要としない転写活性化経路も存在する。この翻訳後修飾を「受容体の活性化」と呼ぶことがあり、例えばERのリン酸化はリガンド依存的・非依存的のいずれの転写活性化機構も促進し、中でもアミノ基末端側から118番目のセリン残基(S118)のMAPキナーゼやCDK(サイクリン依存性キナーゼ)7によるリン酸化が重要であることが報告されている。また、転写活性化には単にERがDNAに結合すればよいというわけではなく、そのほかにも多くの分子が関与する複雑な機構であることが分かってきている。これらのタンパク質との結合部位となるのが既述のAF-1およびAF-2ドメインであり、AF-1はリガンド非依存的な転写活性化機構に関与しており、その転写活性の強さは受容体のリン酸化状態と密接な関係がある。一方、AF-2を介した転写活性化はリガンド依存的であることが知られる。AF-2の機能にはリガンド結合ドメインのカルボキシル基末端側に位置するHelix12とよばれる短いらせん状の構造が重要である。
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