ランダムハウス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/29 14:09 UTC 版)
本社所在地 | ![]() ニューヨーク(世界本部) |
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設立 | 1927年 |
業種 | 情報・通信業 |
事業内容 | 印刷、出版業 |
代表者 | マークス・ドール |
売上高 | 21億4200万ユーロ(2012年度)[1] |
従業員数 | 5712人(2012年度)[1] |
主要株主 | ペンギン・ランダムハウス |
関係する人物 | ベネット・サーフ、ドナルド・S・クロッパー |
外部リンク | www.randomhouse.com |
ランダムハウス(Random House)は、アメリカ合衆国に所在する大手出版社である。
歴史
創業から1940年代
ランダムハウスの創業者の一人、ベネット・サーフは出版社ボニ・アンド・リヴライトで副社長をしていた。1925年、ベネット・カーフとドナルド・S・クロッパーはボニ・アンド・リヴライト社からモダン・ライブラリーを買収し、独立して事業を開始した。1927年、社名を変更し、ランダムハウスを設立した。名前の由来は「本題を離れてランダムに本をちょっとだけ出版するつもりと仲間内で言っていた」ことである。現在も使われている会社のロゴはこの時、友人のロックウェル・ケントが作成したものである。最初に出版されたのはヴォルテールの『カンディード』とハーマン・メルヴィルの『白鯨』の再版本である。この挿絵はケントが描いた[2]。
1930年代、現代文学や児童書の出版を行った。この頃から「ペーパーバック革命」と呼ばれる出版ブームが起きていた。1934年、発禁処分を受けたジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』を出版し名をはせた。その後、トルーマン・カポーティ(『ティファニーで朝食を』や『冷血』の作者)やユージン・オニール(ノーベル文学賞受賞)、ジョン・オハラ、ジェームズ・ミッチェナーなど、人気作家の著書を次々と出版した[3]。
1940年代、辞書出版に参入した。最初に出版されたのは「American College Dictionary」(1947年)である。その後、「Random House Dictionary of the English Language」大辞典(1966年)を出版した。後に日本語版として『小学館ランダムハウス英和大辞典』が出版された。現在は「Random House Webster's College Dictionary」を出版している。またカナダにも進出した(1944年)[4]。
1950年年代から1970年代
1959年、上場。1965年、ベネット・サーフは引退し、会社はRCAに売却された。1960年代以降、有力な出版社を次々と買収し、拡大路線に入った。アルフレッド・エー・クノッフ(1960年)やパンテオン・ブックス(1961年)、バランタイン・ブックス(1973年)などである。
1980年代から2000年代
1980年、アドバンス・パブリケーションに売却された。一方でイギリスに進出した(1987年)。またフォーセット・ブックス(1982年)やビラード・ブックス(1983年)、タイムズ・ブックス(1984年)、フォーダーズ・トラベルガイド(1986年)、クラウン・パブリッシング・グループ(1988年)などの出版社の買収も続け、企業規模は拡大した。
1998年、ドイツのメディア・コングロマリット、ベルテルスマンに売却された。ベルテルスマンの所有するバンタム・ブックスやダブルデイと合流し、企業規模はさらに拡大した。また世界中に進出した。2003年には「ランダムハウス講談社」(後の武田ランダムハウスジャパン[5])が設立された。
2010年代
電子書籍の台頭によりビジネスが変化する中、ランダムハウスはイギリスのピアソン傘下でやはり大手の一角であるペンギン・ブックスとの合併を発表[6]。2013年、ペンギン・ランダムハウスを設立した。
組織
世界16カ国に進出し[2]、各国ごとに子会社がある。子会社は傘下のインプリントをいくつかのグループに分けて統括している。
アメリカ合衆国
ランダムハウス・パブリッシング・グループ
- モダン・ライブラリー - 元祖ランダムハウス。
- バランタイン・ブックス - 3000タイトルを保有するアメリカ屈指の出版社の1つ[2]。
- デル・レイ・ブックス - アイザック・アシモフの著作などSFやファンタジー。最近は日本の漫画の英語版も出版している。
クラウン・パブリッシング・グループ
クノッフ・ダブルデイ・パブリッシング・グループ
- アルフレッド・エー・クノッフ - 硬派の文芸図書で知られている[7]。村上春樹の英訳版を出版している。
- ダブルデイ
- パンテオン・ブックス - クルト・ヴォルフが設立した出版社。最近は『マウス』(ピューリッツァー賞受賞)のようなアメリカン・コミックスにも力を入れている。
ランダムハウス・チルドレンズ・ブックス
世界最大の英語児童書の出版グループ。ドクター・スース『キャット・イン・ザ・ハット』『いじわるグリンチのクリスマス』やルース・スタイルス・ガネット『エルマーのぼうけん』など[2]。
- ゴールデンブックス - 絵本の出版社。
- プリンストン・レビュー - 受験参考書の出版。
RHデジタルパブリッシング・グループ
- フォーダーズ・トラベル - 世界最大の英語旅行観光情報の出版社。
関連文献
脚注
- ^ a b “Annual Results 2012” (PDF). ベルテルスマン. 2014年12月20日閲覧。
- ^ a b c d “Our Publishers”. ランダムハウス. 2014年12月20日閲覧。
- ^ “BENNET ALFRED CERF”. コロンビア大学. 2010年2月14日閲覧。
- ^ “Random House Inc.”. fundinguniverse.com (2005年2月10日). 2010年2月14日閲覧。
- ^ 2010年、代表取締役によるMBOで独立。社名には残したがランダムハウスと資本関係は消滅した。
- ^ “米ランダムハウスと英ペンギン合併、出版最大手に”. 日本経済新聞電子版 (2012年10月29日). 2014年12月20日閲覧。
- ^ 大原けい (2005年2月10日). “ランダムハウス ニューヨーク”. ランダムハウス講談社. 2005年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月14日閲覧。
関連項目
- 小学館ランダムハウス英和大辞典
- バンダイ - かつてゴールデンブックスの日本語版を発行していたことがあった。
- トムとジェリー - パロディでRandom Mouseという出版社の本が時々登場する。
- モダン・ライブラリーが選ぶ最高の小説100
外部リンク
- Random House(英語)
- randomhouse.biz(英語)
- ランダムハウス - メディア芸術データベース
ランダムハウス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/05 09:49 UTC 版)
1925年、サーフはボニ・アンド・リヴライト社からモダン・ライブラリー(英語版)の権利を20万ドルで購入する機会を得た。サーフは友人のドナルド・S・クロッパー(英語版)と50対50のパートナーシップを組んで買収し、独立して事業を始めた。サーフらはこのシリーズの人気を高め、1927年には自分たちが「ランダムに」選んだ一般書籍の出版を開始した。これがサーフらの出版事業の始まりであり、やがてこの事業は「ランダムハウス」と名づけられた。ランダムハウスのロゴには、サーフの友人でありコロンビア大学の卒業生でもあるロックウェル・ケント(英語版)が描いた小さな家が使われていた。 サーフは、人間関係を構築・維持する才能に恵まれ、ウィリアム・フォークナー、ジョン・オハラ(英語版)、ユージン・オニール、ジェームズ・ミッチェナー、トルーマン・カポーティ、セオドア・スース・ガイゼルなどの作家と契約を結んだ。また、アイン・ランドの著書『肩をすくめるアトラス』を出版したが、この本で表明されているランドの哲学「オブジェクティビズム」にサーフは激しく反対していた。サーフはランドの「誠実さ」と「輝き」を賞賛し、2人は生涯の友となった。 1933年、サーフは合衆国対ユリシーズ裁判(英語版)で、政府の検閲に対する画期的な判決により勝訴し、ジェームズ・ジョイスの『ユリシーズ』をアメリカで初めて無修正で出版した。この裁判は、マーガレット・アンダーソンとジェーン・ヒープによるシカゴの文芸誌『ザ・リトル・レビュー』にこの小説の一章が掲載されたことで、「猥褻な作品」と判断されてしまったことを発端とする。1933年、アメリカでの出版権を持っていたランダムハウス社は、訴追を恐れずに作品を出版するために、暗黙の禁止令に挑戦する試訴を手配した。そして、フランス版の本を輸入し、作品を積んだ船が到着したときに、アメリカ税関(英語版)に押収してもらうように手配した。税関に本が到着するという通知があったにもかかわらず、現地の職員は「誰でも持ち込むものだ」と言って没収を拒否した。サーフらは、最終的に作品を押収するように説得した。その後、連邦検事は、法的手続きを先に進めるかどうかを決めるまでに7か月を要した。この作品の猥褻性を評価するために任命された連邦検事補は、この作品は「文学的な傑作」であるが、法的な意味での猥褻物であると考えた。そこで、地方検事が訴えを起こすことができる1930年関税法に基づいて、この作品を訴えたのである。サーフはその後、このフランス語の本をコロンビア大学に寄贈した。
※この「ランダムハウス」の解説は、「ベネット・サーフ」の解説の一部です。
「ランダムハウス」を含む「ベネット・サーフ」の記事については、「ベネット・サーフ」の概要を参照ください。
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