ヨーロッパの伝承
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 02:32 UTC 版)
ドイツでは胞衣を纏ったまま生まれた者は死後ナハツェーラーと成ると言われる。ヨーロッパにおいて吸血鬼伝承の多くが残る地域はバルカン半島のスラヴ人地域であるが、伝承そのものは、ほぼヨーロッパ全土に存在し、東はアナトリア半島・カフカス・ヴォルガ川沿岸地域にまで確認することが出来る。古代ギリシア語のラミアーは、ラテン語に入ってから女吸血鬼全般を意味するようにもなった。またロシアではウプイリという、人間の顔をした巨大コウモリ(美男や美女に変身できる)が伝承されている。 スラブの人々は4世紀ごろには既に吸血鬼の存在を信じていた。スラヴの民話によると、吸血鬼は血を飲み、銀を恐れる(ただし銀によって殺すことはできない)とされた。また首を切断して死体の足の間に置いたり、心臓に杭を打ち付けることで吸血鬼を殺すことができると考えられていた。 現在の吸血鬼に対する考え方は古代ルーマニアから続いているものである。古代ルーマニアは古来からの宗教や文化が、キリスト教やスラヴ民族と混ざりあう過程を経験した。異なる宗教と文化における矛盾、外からの人々の流入により新たな疫病が持ち込まれ不可思議な死が増加したことに対する答えとして吸血鬼伝承が生まれたと考えられている。この民話では吸血鬼によって殺された者は吸血鬼として復活することになっており、何らかの手段で殺されるまで新たな吸血鬼を増殖させることになる。この段階では吸血鬼は知性のない動物のような悪魔として扱われている。 カトリック教会地域における吸血鬼伝承は12世紀ごろから急激に消滅し、それ以降「夜間活動する死者」の伝承は、肉体性をまったく持たないもの、すなわち日本語で言う幽霊のようなものへと変化している。また、東ヨーロッパやバルカン半島においては、エンプーサ、モルモー、ヴルコラク、ストリゴイ、ヴコドラク、クドラクなど様々な吸血鬼伝承が存在している。 ルーマニアで最も一般的な吸血鬼はストリゴイ(自殺者、犯罪者、魔女、吸血鬼に殺された者、七番目の息子、猫に飛び越えられた死体、片思いの末に結婚出来ずに死んだ者が成る)である。私生児の親から生まれた私生児が死後成ると言われており、またブルガリアではウボウル・ヴァピール・ヴルコラク、ポーランドではウピオル、ロシアではウピルが知られている。
※この「ヨーロッパの伝承」の解説は、「吸血鬼」の解説の一部です。
「ヨーロッパの伝承」を含む「吸血鬼」の記事については、「吸血鬼」の概要を参照ください。
- ヨーロッパの伝承のページへのリンク