ヨーロッパの侯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/24 05:44 UTC 版)
侯は、東アジアにおける用例から転じてヨーロッパで貴族の称号として用いられるいくつかの語の訳語になっている。侯と訳されるヨーロッパ諸語は、大きく分けてラテン語のプリンケプス(英語ではプリンス)と同系統の称号に関連するものと、フランク王国の官職である辺境伯に由来する称号に関連するものの2種類がある。 プリンケプスの語はもともと「第一人者」を原義とし、ローマ皇帝の称号に由来する君主の称号で、中世以降のヨーロッパでは一定の領域を支配する有力な貴族のことを指した。このようなプリンケプス系統の称号をもつ支配者は日本語では公あるいは大公と訳すことが多いが、公爵が訳語として定着しているラテン語のdux(英語のduke)系統の称号との混同を避けるため、侯と訳す場合がある。また、フランス王国の領邦君主、神聖ローマ帝国の帝国諸侯などもラテン語でプリンケプスと称したので、このような意味でヨーロッパの有力貴族階層一般についても侯、諸侯という語が使われている。特に、ドイツ語のフュルストやそれと同系統の称号は、侯と訳すことが慣例になっている。 辺境伯(ドイツ語でMarkgraf)は、フランク王国において異民族と接する最前線の国境地帯である辺境区(Mark)においた特別な権限をもつ伯(Graf)のことを指し、後に地方の実権を掌握して大公(Herzog、ラテン語のdux)に次ぐ有力な領邦君主に成長した。このドイツ語のMarkgrafがフランス語化したのが marquis(ラテン語 marchio, 英語 marquess)であり、のちにフランス、イギリスなど西ヨーロッパの諸国で、伯(comes/earl)よりも強力で、公(dux)に準じる権威をもった有力領主の称号として用いられるようになった。これが公と伯の間の地位であることから古代中国の五等爵にあわせて侯と訳されるようになり、侯の称号が王から授けられる爵位の一種となったものを侯爵と日本語で呼ぶ。 なお、ドイツではフランスやイギリスの侯爵(marquis, marquess)にあたる称号は「辺境伯」なので、それに相応する爵位は本来存在しない。しかし、領邦君主たちから臣下に与えられる爵位の最高位としてフュルスト(Fürst、ラテン語でprinceps)という位があり、伯(Graf)の上に位置することから、侯あるいは侯爵と訳すことが慣例になっている。
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