ヨーロッパの伝統的な養豚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 05:32 UTC 版)
農業生産性に乏しく、人糞養豚の文化を持たない北西ヨーロッパでは、一年を通して豚の畜群を維持するだけの飼料(にとどまらず人間の食用としての農作物)を確保することが難しかった。夏に産まれた子豚を、秋にナラの森に放してドングリを食べさせて十分成長させて肥育。来年の繁殖用の親豚に使う個体のみを残して、冬の初めにまとめて屠畜し、塩漬け肉やハム、ソーセージ、ベーコン、ラードといった保存食品に加工して次の年の秋の終わりまで食いつなぐ(農作物が収穫できる春までは豚肉のみで食いつなぐ)という養豚システムが行われていた。しかし16世紀に、新大陸アメリカからジャガイモやトウモロコシといった寒冷な痩せた土地でも大きな収穫が得られる作物が導入されるようになった。これらが次第に普及していくと、人間が食用にする以上の余剰収穫が確保できるようになり、これが豚の飼料に当てられ、一年中生きた豚の形で動物性の蛋白質や脂肪をストックできるようになった。こうして「ジャガイモとソーセージ」に象徴されるドイツ食に代表されるような、新大陸産の新来作物と豚肉加工食品の組み合わせによる近代以降の北西ヨーロッパの食文化が成立したのである。
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