ミネルバのシステム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/08 03:51 UTC 版)
「ミネルバ (ローバー)」の記事における「ミネルバのシステム」の解説
完成したミネルバは、ローバーであるミネルバ本体を含め、合計5つのコンポーネントで構成されていた。 MUSES-Cにミネルバを据え付ける機構であり、小惑星までの飛行中にミネルバへの電源供給を担うOME-B OME-Bとミネルバとの間のカバーであるOME-C 探査機のデータバスとの間の中継器であるOME-E OME-Eがミネルバと通信を行うための平面パッチアンテナであるOME-Ant これら4つのコンポーネントが探査機本体に付属した。 小惑星へのミネルバ放出時にはOME-Bに固定されていたOME-Cとミネルバが切り離され、バネによって探査機から押し出される。OME-Cは秒速約40センチ、ミネルバは秒速約5センチで放出されるよう設計されており、探査機から放出後はミネルバとカバーであるOME-Cは分離する仕組みとなっていた。ミネルバ本体の重量は591g、ミネルバと他の4つのコンポーネントの総重量は1457gになった。 ミネルバ本体は直径12センチ、高さ10センチの正16角柱で、太陽電池が一面に貼り付けられている。そのためどのような姿勢であっても太陽光を得られる環境であれば電力を確保できる。着陸時の衝撃緩和と太陽電池の保護のためミネルバ表面から16本のピンが突き出ており、うち6本のピンには温度センサーが内蔵されていて、小惑星地面の温度を直接測定することができるようになっている。またピンはホップ時の摩擦を大きくする役割も担っていた。ミネルバと探査機本体側のOME-Eは同一のCPUシステムを持っていて、ミネルバが取得したデータはまず無線で中継器であるOME-Eへ送られ、中継器から探査機本体の搭載コンピュータやデータレコーダーに送られた後、地球へ送信される。また地球からミネルバへの指令もOME-Eを通して行われる。 ローバーを天体上の目的地まで導くためには任意の方向へ移動できる機能が必要とされる。任意の体勢から任意の方向へとホップさせるためには3自由度のアクチュエータ、とにかく任意の姿勢からホップするためには2自由度のアクチュエータが必要となるが、ミネルバは軽量化の必要性からモーターを2つとした。ミネルバ内には大きなターンテーブルがあり、ターンテーブルの上部にミネルバをホップさせるためのDCモーターが取り付けられた。そしてターンテーブル自体も旋回用のモーターによって動かすことができるようになっており、ターンテーブルを回してホップする方向を変えたり、またターンテーブルの回転によってホップさせることも可能である。またホップする速さを小惑星の脱出速度以下に抑えるため、ミネルバ分離前にホップする速度の設定を行うこととした。 電力はミネルバ全面に貼られた太陽電池から供給される。余剰電力は電気二重層コンデンサに蓄えられ、モーターの回転や写真撮影時など、太陽電池からの電力のみでは間に合わない大きな電力を必要とされる際にサポートする。電気二重層コンデンサは電解液の改良により低温では劣化しないが、130℃以上の高温下では少しずつ劣化する。そのため小惑星表面で活動を続けていくとやがて使えないようになる(最終的にMUSES-Cの目的地となったイトカワ上では3昼夜と考えられた)。電気二重層コンデンサが使えなくなった後、通信などは可能であるがホップや写真撮影はできなくなってしまうため、ミネルバが静止している場所の小惑星表面温度を継続的に測定する運用を検討していた。 ミネルバには表面から突き出たピンに内蔵された6つの温度センサー以外に、3つのカメラ、6つのフォトダイオードが外界センサーとして搭載された。カメラは3つとも同じものであり、2つのカメラは同一方向に向けて隣同士に設置され、近くをステレオ視可能である。これは主に小惑星表面を撮影する。残り一つのカメラは2台のカメラと反対側に据え付けられ、ホップ時に上空から小惑星を撮影することを主目的としている。フォトダイオードは光量の測定を行う目的で搭載されており、全て異なる方向を向いていて、各フォトダイオードが測定された光量で太陽の方角を推定するようになっていた。 ミネルバの上面と下面にはアンテナが取り付けられている。ミネルバの姿勢が変化していく中で、上下のアンテナのうち探査機を指向している側を使用することになっていた。ミネルバとOME-E間の通信速度は9.6kbpsで、最大距離20kmまで通信可能であった。
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