ミネルバの自律機能と小惑星探査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/08 03:51 UTC 版)
「ミネルバ (ローバー)」の記事における「ミネルバの自律機能と小惑星探査」の解説
ミネルバは極めて小さなローバーであり、太陽電池による発電量が少なく、そのため処理速度が速いコンピュータを搭載することはできず、高度に知能化されたローバーとすることは不可能であった。しかし地球から小惑星探査中のMUSES-Cまでは、往復で30分以上の通信時間を要する。しかも通信レートは低速で、地球とミネルバ間は探査機を通してデーターのやり取りを行うシステムであるため、地球からの指示をいちいち仰ぎながらでは探査時間が極めて短くなってしまう。そこで様々な工夫を行いながらミネルバは自律機能を強化していった。この自律的小惑星探査手法の実証は、ホップしながら小惑星表面を移動するという小天体用ローバーの移動メカニズムの実証と並び、ミネルバの工学実験の柱であった。 大気のない小惑星表面では、昼間は100℃以上、一方夜になると-100℃以下になると考えられた。しかしミネルバの動作温度は-50℃から80℃である。そこで内部機器を断熱材で覆って低温から保護する対策を講じるとともに、ミネルバは内部の温度を4つの温度センサーによって常時モニターして、動作温度の下限や上限に近づくとまずホップや写真撮影といった電力を食う機能を停止させ、内部の温度が動作温度を外れたら一部の機能を残して活動を停止することにした。断熱材の影響もあってミネルバから熱が逃げにくくなると考えられ、特に日中の温度が高い時間帯はミネルバは休止状態になる見込みであった。またフォトダイオードのモニター値から太陽の方向を判断し、温度条件が厳しくない小惑星上の朝や夕方の方向へホップする機能も備えていた。 ミネルバはフォトダイオードの測定値から自らが移動しているかどうかを判断する。つまりフォトダイオードが測定する光量が一定であれば小惑星上に静止しているものと判断し、表面のステレオ撮影を行って表面温度を測定した後、ホップして移動する。一方光量が変化している場合には、小惑星上をホップしながら移動している最中であると判断し、小惑星上空撮影用のカメラで表面撮影を行う。 しかしミネルバにはホップ時に小惑星にカメラを向ける機能は設けられていない。そのためどうしても二分の一の確率で小惑星とは反対側の宇宙空間を撮影してしまう。そこで撮影した画像はまず圧縮処理を行い、圧縮後のデータサイズが小さいものは画像を廃棄する。そして保存された写真も画像内をいくつかの領域に分け、情報量が少ない部分はやはり宇宙空間を撮影したものと判断してその部分を廃棄し、情報量の多い部分のみ保存するようになっていた。そして保存された画像は情報量に比例して優先度をつけ、優先度が高い画像から順次MUSES-Cへ向けて送信するようにした。 またミネルバのソフトウェアは自律して活動を行う自律モードの他に、地上のオペレーターがミネルバを直接制御するテレオペレーションモードも選択できるようになっていた。テレオペレーションモードの際はミネルバは自立的な活動は行わないようになっており、小惑星までの道中にミネルバの機能チェックを行う際などに使用された。
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