ミッドポイント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 03:02 UTC 版)
ミッドポイント (Midpoint) は、全体のおよそ半分、第二幕の中間60分ほどで起こる非常に重要なイベントである。ここで映画は前半と後半に分かれる。ミッドポイントからは主人公の危険度が急に上がる。主人公が敵対者と大きく衝突するため、このイベントはターニングポイントと同じ程度かそれ以上の転換シーンになる。ミッドポイントでは突然、主人公の目的や主張 (argument) を打ち砕く何かが起こり、ストーリーを正反対に方向転換させる。『タイタニック』('97) で氷山が船に衝突するシーンもこのポイントである (パニック映画ではミッドポイントで災害が発生する)。 ミッドポイントの代表的な例としては、『アナと雪の女王』('13) で、氷の城にたどり着いたアナがエルサ女王から魔法で心臓を撃たれるシーンが挙げられる (p. 70.)。また、『シックス・センス』('99) のように、「死者の声が聞こえる」という出来事によって、それまで主人公の信じていた世界観が破壊されるという、比較的静かなシーンがミッドポイントとなる場合もある。一方で、『アメリカン・スナイパー』('14) や『ベイマックス』('14) では、主人公がミッドポイントで「見せかけの勝利」(a false victory) を収め、ここから危機が本格化していく。 他には、『ゴーン・ガール』('14) で、行方不明の妻が妊娠していたことが証言され、主人公が妻を殺害した疑惑が濃厚となるシーン、『ゼロ・グラビティ』('13) で、上官が自ら命綱を外して犠牲となり、主人公だけが残されるシーン、『英国王のスピーチ』('10) では、国王が急死したが兄が即位したため、これまでの吃音治療が無駄であったとジョージ6世が思うシーン、『ソーシャル・ネットワーク』('10) で、ショーン・パーカーと出会ったことで仲間に亀裂が走り始めるシーン、『アバター』('09) では、主人公が先住民ナヴィの娘ネイティリと結ばれる (が、その直後に人類の重機に襲われる) シーン、『第9地区』('09) で、エイリアン化の始まった主人公が組織から脱出し、追われる身となるシーン、『Shall we ダンス?』('96) では、主人公がダンス・コンクールへの出場を決意し、厳しいトレーニングの始まるシーン、『幸福の黄色いハンカチ』('77) で、 一緒に旅をしている勇作 (高倉健) が出所したばかりの殺人犯であることが判明するシーンなどが、ミッドポイントにあたる。 ミッドポイントでは、主人公に新しい道標が与えられる。主人公がこれまで目指してきた試みは失敗したのであるから、新たにどこへ向かうべきかを知る必要がある。ここでは、登場人物が変化し始め、主人公がこれまでとは別の生き方を選んだり、新しい行動を開始したりする。ピクサー作品では、主人公の精神的な成長を描くため、主人公が旅の中間部でその目的を一時的に見失ってしまい、その間だけ目的が変化するという展開が必ず挿入される。 作品によっては、「人目を引きつけるシーン」がここに置かれる。人目を引きつけるシーンは、ストーリーの進行を一時停止させ、にぎやかに盛り上がるショーの場面である。このシーンは、次第にヒートアップし、テンポも急速に上がっていく [『美女と野獣』('91) のディナーのシーンなど]。それによりキャラクターが何かを達成したり、変化したりする。作品の全てのシーンの中で最も記憶に残る場合が多い。ミュージカル的な歌や踊りだけでなく、サーカス、カーチェイス、またはスポーツなども同様である。『ロッキー』('76) のトレーニングの場面も、その盛り上がり方から、人目を引きつけるシーンと言える。
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