第二幕前半
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 03:02 UTC 版)
第二幕の前半は、主人公が目的の障害に立ち向かうストーリーが始まるが、ほとんどの映画では、主人公にとって全ての物事が順調に進み、とくに問題もなく困難をクリアしていく展開となる。『アナと雪の女王』('13) では、ファースト・ターニングポイント (pp. 35-36., 前述) の後、主人公のアナが「乗ってきた馬に逃げられる」「狼の群れに襲われる」「氷の城の位置が分からない」といった障害を次々と全て突破し、エルサ女王を見つけ出すことに成功する。そしてミッドポイント (p. 70., 後述) が起こり、第二幕は後半に移ることになる。 シド・フィールドは、この第二幕の前半 (first half) の中間点に起こる重要な出来事 (45分) を、ピンチ I (Pinch I ) と呼んでいる。ピンチ I は、第二幕前半の中心となるイベントである。それは、第二幕の前半を一つにまとめ、ファースト・ターニングポイントからミッドポイントまでのストーリーをつなぐ。『テルマ&ルイーズ』('91) では、逃走中のテルマとルイーズが、ピンチ I でヒッチハイカーの J.D. を車に乗せる。二人はミッドポイントで、その J.D. に逃走資金を持ち逃げされてしまう。『アナと雪の女王』('13) では、アナが雪山に入ってから (p. 36., 前述)、氷の城で心臓に魔法を受けるまで (p. 70., 後述) の中間点で、雪だるまのオラフが登場し、氷の城にアナたちを案内してくれる (p. 52.)。 ブレイク・スナイダー(英語版)によれば、第二幕からは B-ストーリー (B-story) が始まる。B-ストーリーとはサブプロット(英語版) (subplot) のことである (ただし第一幕から始まる例もある)。B-ストーリーは「ラブ・ストーリー」であることが多い (主人公と同性のキャラクターとの出会いなどが描かれる場合もある)。B-ストーリーでは、新しいキャラクターの登場するケースがよく見られる。第二幕は「普通」の世界である第一幕とは正反対であるため、たいてい、この新たな登場人物もそれまでとは反対に「普通」ではない。B-ストーリーは、直前のターニングポイントのショックから観客を休ませ、なおかつ、ストーリーを加速させ前に進める「補助ロケット」である。それは場面転換である一方で、A-ストーリー (メインプロット) と無関係ではなく、作品のテーマも改めて示される。『アナと雪の女王』('13) では、アナが氷売りのクリストフと雑貨屋で出会う (p. 40.)。『アバター』('09) では、主人公のジェイクが先住民ナヴィの娘ネイティリに命を助けられる。 ファン・アンド・ゲームズ (※スナイダーの分類)ファン・アンド・ゲームズ (fun and games, お楽しみ) は、スナイダーによれば、「この作品はこういうものです」という「お約束」を果たすパートであり、「なぜこの作品を観ようと思ったのか」という観客の期待に応える部分である (第二幕の始まりからミッドポイントまで)。ポスターや予告編で使われ、観客はストーリーよりもこのパートを待望している。「お約束」を観るセクションであるため、ストーリーの目的とはやや外れ、他の部分より調子が軽い。例えば、『アナと雪の女王』('13) で、エルサ女王が "Let It Go" を歌いながら氷の城を建てるシーンもこのセクションである。また、雪だるまのオラフがアナたちの仲間になる (いずれも pp. 36-70.)。『ダイ・ハード』('88) では、主人公のジョン・マクレーンがテロリストの鼻を明かす展開が始まる。『スパイダーマン』('02) では、主人公が突然手に入れた力を使ってみる。フィールドの言うピンチ I (45分) はここで起こる。
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