ファースト・ターニングポイント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 03:02 UTC 版)
「三幕構成」の記事における「ファースト・ターニングポイント」の解説
第一幕の終わりでは、きっかけとなる出来事がダイナミックに起こり、主人公に直面する。主人公はこの出来事に上手く取り組もうと試みる。出来事は次のよりドラマティックなシチュエーションにつながる。これがファースト・ターニングポイントまたはプロットポイント I (First turning point または Plot point I ) である。これは、まず、(i) 第一部が終わる合図となる。さらに、(ii) 主人公の人生をがらりと変え、引き返せなくする。なおかつ、(iii) 冒頭のセントラル・クエスチョンが再び示される。ファースト・ターニングポイントから本当のストーリーが始まる。それは通常、全体のおよそ1/4、開始から20-25分または30分頃に配置される。代表的な例としては、『アナと雪の女王』('13) で、アナが姉のエルサ女王を追って雪山に向かうシーンが、ファースト・ターニングポイントにあたる (pp. 35-36.)。 ここでは、それまでの状況が一変して、主人公にとってのゴールが明確になり、主人公がそれを達成するためのストーリーが始まる。ファースト・ターニングポイントは、主人公の関係する何らかのイベントであり、ここから物語は第二幕に入る。主人公は安定した日常から、危険にあふれた非日常へと足を踏み入れる。二つの世界は著しく異なるため、自分から新しい世界に進む強い意志がなければならない。主人公は受け身のまま流されて第二幕に入ってはならない。自ら選択し、行動しなければ主人公ではない。これは言わば森の中に分け入る入り口のシーンである。必ず敵対者との衝突が起こるが、通常、対峙するだけで「戦闘」にはならない。一方で、主人公は、敵対者が予想外で思いもよらない存在であり、これまでの方法では立ち向かえないことを知る。主人公は「普通の世界」を去ろうとしているのである。このため、ストーリーに最初の転換が起こる。続く数シーンでは、主人公が森の中、すなわち新しい世界で、「普通の世界」の住人とは異なる人々に出会う。 ファースト・ターニングポイントでは、主人公の「ドラマ上の欲求」がそれまでとは変化する。このため、続く第二幕では、まず初めに、主人公の新たな「ドラマ上の欲求」が明らかにされる。『テルマ&ルイーズ』('91) では、親友テルマをレイプしようとした男をルイーズが射殺したことによって、「二人で週末の楽しい旅に出かけること」という欲求は、「二人でメキシコまで逃げること」へと変わる。これは、ファースト・ターニングポイントで主人公の「ドラマ上の欲求」が変化する例である。 ここで冒頭のセントラル・クエスチョンまでもが変わる訳ではない。『チャイナタウン』('74) では「主人公は水利権問題の黒幕を突きとめられるでしょうか?」というセントラル・クエスチョンは一貫している。主人公の探偵の「ドラマ上の欲求」は、このポイントで「浮気調査」から「誰がなぜ自分を騙したのかを突きとめること」へと変化し、セントラル・クエスチョンに重なる。よって、主人公はセントラル・クエスチョンで設定された目的の達成に向けて動きだし、ここから第二幕が始まる。 ファースト・ターニングポイントの例としては、『アメリカン・スナイパー』('14) で、イラクに派遣された狙撃兵の主人公が少年とその母親を射殺してしまうシーン、『ゴーン・ガール』('14) で、主人公が行方不明の妻を探すために記者会見をするシーン、『ベイマックス』('14) では、主人公がケア・ロボットのベイマックスを見つけるシーン、『ゼロ・グラビティ』('13) で、主人公が地球へ戻るためにスペースシャトルに乗り込もうとするシーン、『英国王のスピーチ』('10) では、ジョージ6世がどもらずに朗読できたことを知らされるシーン、『ソーシャル・ネットワーク』('10) で、ザッカーバーグが The Facebook の制作をひそかに始めるシーン、『借りぐらしのアリエッティ』('10) では、アリエッティが初めての「借り」に出て、人間の少年に見つかるシーン、『塔の上のラプンツェル』('10) で、ラプンツェルが初めて塔の外に出るシーン、『アバター』('09) では、主人公が異星でのジャングル探索に初参加して遭難するシーン、『第9地区』('09) で、主人公がエイリアンの住居で謎の液体を浴びるシーンなどが挙げられる。 他には、『ロード・オブ・ザ・リング』('01) で、主人公のフロドが指輪を運ぶために村を出るシーン、『マトリックス』('99) では、主人公のネオが真実の世界に目覚めるための錠剤を選ぶシーン、『タイタニック』('97) で、ローズがジャックと出会い、船から飛び降りることを思いとどまるシーン、『Shall we ダンス?』('96) では、主人公が初めてダンス・サークルに参加するシーン、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』('85) では、主人公のマーティがデロリアンに乗って過去にタイムトラベルするシーン、『幸福の黄色いハンカチ』('77) で、一緒に旅をすることになる3人が再び出会うシーン、『スター・ウォーズ』('77) で、主人公のルーク・スカイウォーカーが旅立つことを決意するシーンなどが、ファースト・ターニングポイントの例である。
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