マンガの制作体制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 14:24 UTC 版)
「フジオ・プロダクション」の記事における「マンガの制作体制」の解説
赤塚はフジオ・プロ設立とともに、執筆のスピードアップを計るべく、正式に完全分業システムを採用。赤塚、長谷、古谷、担当編集者を交えた「アイデア会議」を経て、赤塚がネーム(コマ割りとセリフ)とアタリ(人物の表情や動き、背景のなどのラフな下描き)を作成し、高井と古谷(のちにあだち勉、しいやみつのり、吉勝太など)が下絵を完成させて製作を進行という形を取った。この様に漫画製作にアシスタントらが大きく関与しているため、赤塚はプロダクションを設立して以来、雑誌掲載時のクレジット表記を長年「赤塚不二夫とフジオ・プロ」としていた。劇中でもフジオ・プロのロゴを無関係な場面に登場させたり、内輪ネタの一環でフジオ・プロを強調することも多かった。 赤塚マンガのキャラクターの作り方にはいくつかのパターンがあったようで、北見けんいちは、赤塚が作画スタッフに「大体こういう感じ」と伝えて描かせたものを、話し合いにより少しずつ修正していくという手法を取り、全てのスタッフがアイデア出しや作画に協力するという分業での制作を行っていたと語っている。 また、長谷邦夫、高井研一郎は、『おそ松くん』のイヤミ、デカパン、ハタ坊、ダヨーン、『もーれつア太郎』のココロのボスなどのキャラクターについて、赤塚が作画スタッフ(高井研一郎)にラフ画を渡し描かせたものを、その後赤塚が自ら描きやすいように修正して、完成させていく手法を取っていたと証言している。高井研一郎が退社(1968年)した以降は、赤塚がキャラクターデザインを実質一人で施すようになり、バカボンのパパ、ニャロメ、ケムンパス、べし、ベラマッチャ、ウナギイヌ等はその代表的なキャラクターである。 横山孝雄によれば、フジオ・プロでは、通常の漫画製作プロダクションとしては異例な能力給システムを採用しており、各スタッフの能力がフルに発揮出来る環境を用意していたという。 アイデア会議を経た後、十三ページの作品が完成するまでに費やされる時間は、ネームに2時間、アタリに4時間で、赤塚の担当箇所は約6時間。その後、赤塚は他の作品の執筆に取り掛かる。赤塚の手を離れたアタリ原稿は、スタッフの手によって、3時間の流れ作業を経由し、概ね9時間を掛け、一本の作品として完成したという。 スタッフが大幅に減少した80年代から90年代の旧作のリメイクでは長谷邦夫がネームから下書きまで手がけていたと伝えられることもあったが、当時のチーフアシスタントだった吉勝太は(赤塚本人が)「ちゃんとかいてました」と否定している。また、現フジオプロ・スタッフの松木健也も、実際の赤塚本人のアタリ(下書き)原稿を提示し、「簡単なラフに見えるが、この「アタリ」が非常に重要で、不二夫が描かない(仮にアシスタントらが代筆する)と全く違う雰囲気の作品になってしまう。構図はもちろん、キャラクターの豊かな表情と絶妙な等身バランス、躍動感は、この「アタリ」で決まると言っても過言ではない」と分析している。実際の赤塚本人による「アタリ」は、『少女漫画家 赤塚不二夫』(2020年、ギャンビット)のほか、『コアでいいのだ!赤塚不二夫』(2019年、出版ワークス)所収の「レアリティーズブック」、『夜の赤塚不二夫』(2021年、なりなれ社)で様々な具体例が公開されている。
※この「マンガの制作体制」の解説は、「フジオ・プロダクション」の解説の一部です。
「マンガの制作体制」を含む「フジオ・プロダクション」の記事については、「フジオ・プロダクション」の概要を参照ください。
- マンガの制作体制のページへのリンク