マルグイム、ウルク、ニップル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 17:20 UTC 版)
「グングヌム」の記事における「マルグイム、ウルク、ニップル」の解説
グングヌムの治世第19年(前1914年)の年名によれば、グングヌムはマルグイム(英語版)の軍勢を撃破し、「道沿いの建物を確保して[訳語疑問点]、アン神、エンリル神、ナンナ神の命により「山の運河の源流を解放した[訳語疑問点]」。この二つの言説の正確な意味を判断するのは困難であるが、マルグイムがマシュカン・シャピル(英語版)と、ティグリス川とディヤラ川の合流点よりも北の、ティグリス河岸のどこかに位置していたことから、マルグイムに対する勝利は、ティグリス川沿いに行われたグングヌムの北方遠征の実施を明確に示している。この地域はイシン市の北東に位置し、グングヌムがここへ侵入したことは、ラルサがいまやこれまで以上に北方まで達する軍事的勢力を持っていたことがわかる。アン、エンリル、ナンナに言及する同年の年名はグングヌム統治下でのラルサの拡張の更なる証拠である。これらの神々は名目としてはそれぞれウルク、ニップル、ウルの神である。この時点でグングヌムのウルでの権威は既に良く確立されていたが、他の二つの都市神への言及は、彼が更にウルク市とニップル市の権力を握った可能性があることを示している。ウルクの場合、ラルサのたった25キロメートル北東に位置し、かつてイシンによってリピト・イシュタルの時代まで保持されていたことが知られている。だが、リピト・イシュタルの死後、ウルク市の政治的地位は非常に不明瞭なものとなり、そしてグングヌムがこの都市を支配下に置くことができた可能性は明確に存在する。このようなシナリオはウンム・アル・ワウィヤ(Umm al-Wawiya)と呼ばれる土地で、グングヌムの名前が刻まれた煉瓦が発見されたことで更にあり得るものとなっている。ウンム・アル・ワウィヤはウルクのすぐ近くに位置しており、古代のデュルム(Durum)の町である可能性がある。グングヌムがウルクの目と鼻の先まで手を伸ばしているということは、彼がウルク市自体も支配していたという可能性を更に高めている。 一方で、ニップル市はイシン市の北30キロメートルに位置し、メソポタミアの聖地として名高い都市であった。ここにはシュメール神話とアッカド神話における最高神、嵐の神エンリルの神殿があった。このことにより、ニップル市の支配者はこの都市の統治をすることによって重要な政治的威信を帯び、エンリルの神権を持つという認識を得ることにより、「シュメールとアッカドの王」という称号を主張することができた。この称号は南部メソポタミア全体の支配権をほのめかすものであった。このニップル市の思想的重要性はこの都市の支配をグングヌムにとって魅力的な栄誉としたであろうし、事実彼がこの聖なる都市を最終的にイシンから奪い取り、自らの領域に組み込むことに成功したことを指摘する重要な証拠がある。年名上におけるエンリル神への言及とは別に、グングヌムがマルグイム市を撃破してから僅か2年後に作成した王碑文において、彼は「シュメールとアッカドの王」という称号を用いている(それ以前は「ウルの王」という限定的な称号のみ使用していた。)。同時に、同じ時期の二つの年名はニップル市付近に仮設された一連の建築活動に言及する。最後に、ニップル市を調査した考古学者たちはグングヌムによって作成されたウルの守護神ナンナの規範がどのようなものであるか[訳語疑問点]を記述した讃美歌のコピーを発掘しており、奉納品を捧げる行列をエンリルの神殿へと先導している。エンリル神の聖域におけるこのラルサからもたらされた讃美歌の写本の存在は、ニップルの聖職部門がその宗教的規範を受け入れたことを示唆している。これはグングヌムがこの都市を揺り動かしていた時代のことであった可能性が最も高い。 これらの証拠は全て、グングヌムが少なくとも治世第19年以降ニップル市を支配していたことをほぼ確実なものとしているが、この聖地に対するラルサの支配がそれほど長く続いていない事も同様に明らかである。このことはイシン王ウル・ニヌルタのものである二つの年名によって明らかである。この年名はウル・ニヌルタが彼の手から失われたニップル市を奪回することに成功したことを強く示している。彼がどの外国勢力からニップルを奪回したのかについては記録されていないが、それがラルサ以外の国である可能性はほぼ無い。しかしながら、現存するウル・ニヌルタの年代順年名リストは不完全であり、イシンによるニップル市の奪回が、グングヌムの生前の出来事であるのか、或いは前1906年の彼の死以降の出来事であうるのか確定することは不可能である。
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