フーガ演奏教本とは? わかりやすく解説

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チェルニー(ツェルニー):フーガ演奏教本

英語表記/番号出版情報
チェルニーツェルニー):フーガ演奏教本Schule des Fugenspiels Op.400出版年1837年  初版出版地/出版社: Diabelli  献呈先: Herrn Musik Director Felix Mendelssohn Bartholdy

作品解説

2011年5月 執筆者: 上田 泰史 

 フーガ西洋芸術音楽における伝統的な多声書法であり、18世紀J. S. バッハによってその技法が高度に体系化された。フーガによる楽曲複数独立した声部からなり主題が各パート順次提示されモチーフ拡大縮小断片化されたりときには反転逆行されたりしながらパズルのように巧みに組み合わせられ展開する鍵盤楽器適用されフーガとして最も名高いのは2巻からなるJ. S. バッハの《平均律クラヴィーア曲集》であることは言うまでもない全ての調性による前奏曲とフーガによって構成されるこの作品今日ほど一般に知られてはいなかったものの、鍵盤楽器教育においてチェルニー世代にいたるまで伝承され教材として用いられていた。

 この練習曲集は、バッハの《平均律》の校訂版と同じ年に出版されている。恐らく彼は1830年代後半バッハ作品校訂作業同時期か、あるいはかなり近い時期にこの曲集を書いたであろうチェルニー編集した平均律》にメトロノーム速度楽想運指スラースタッカートなどを加えたが、この作品400においても同様にテンポ厳格に指示し指番号リタルダンドアクセント記号などを入念に書き込んでいる。

 ところで、なぜチェルニーはこの作品を単に「前奏曲とフーガ」とは呼ばずフーガ演奏の「学習Schule/Etude」と名付け練習用作品位置付けたのだろうかフーガはじめとする多声音楽演奏においては、指を書法に従わせなければならないために、薬指中指交差や同じ指の連続的な使用など多く変則的な指使い要求される交錯する複数声部自在に10本の指で捉え、しかも速いスピード演奏し、かつ全ての声部提示される主題際立たせ作品構造を音に変換するには、繊細かつ敏捷な指のコントロール楽曲の構造性格読み取る分析的な視点読譜能力要求されるこうした素質はいずれチェルニー重視した教育的観点であり、その統合可能にするのが《フーガ演奏学習作品400のであるチェルニー出版譜に掲載した序文によれば上のような演奏意図があるゆえに、それぞれの曲に書き込んだ指示(とりわけテンポ指使い)には十分な注意払われる必要があった。いずれの曲もテンポ速く、手の交差跳躍オクターヴ三度連続など、同時代ピアノ効果最大限引き出同時代的なピアニズムと、厳格な伝統的声部書法見事な融合果たしている。この点、本作品はテクニック教育集成であると同時にチェルニー伝統根ざした芸術家として気概全面押し出した大作である。

 曲集は4巻からなりそれぞれの巻にはプレリュードとフーガ3組ずつ6曲収められている。《平均律》とは異なり全調を網羅するわけではなく調性配列にも特別な意図認められない前奏曲多くポリフォニック書かれており、様々な性格小品ないし練習曲体裁をとる。続くフーガは、しばしばその主題前奏曲モチーフ関連付けられた濃密なポリフォニーである。前奏曲とフーガ集めた曲集としては、他にリスト献呈した全調による姉妹作古典様式のピアニストー全24長短調による前奏曲とフーガ作品856がある。F.メンデルスゾーン献呈された。




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