フラン_(化学)とは? わかりやすく解説

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フラン (化学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/23 03:31 UTC 版)

フラン (化学)
識別情報
3D model (JSmol)
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.003.390
KEGG
PubChem CID
CompTox Dashboard (EPA)
特性
化学式 C4H4O
モル質量 68.07 g/mol
外観 無色透明の揮発性の液体
密度 0.936 g/mL
融点

-85.6 °C, 188 K, -122 °F

沸点

31.4 °C, 305 K, 89 °F

危険性
GHS表示:
Danger
H224, H302, H315, H332, H341, H350, H373, H412
P201, P202, P210, P233, P240, P241, P242, P243, P260, P261, P264, P270, P271, P273, P280, P281, P301+P312, P302+P352, P303+P361+P353, P304+P312, P304+P340, P308+P313, P312, P314, P321, P330, P332+P313, P362, P370+P378, P403+P235, P405, P501
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
Health 3: Short exposure could cause serious temporary or residual injury. E.g. chlorine gasFlammability 4: Will rapidly or completely vaporize at normal atmospheric pressure and temperature, or is readily dispersed in air and will burn readily. Flash point below 23 °C (73 °F). E.g. propaneInstability 1: Normally stable, but can become unstable at elevated temperatures and pressures. E.g. calciumSpecial hazards (white): no code
3
4
1
引火点 −36 °C (−33 °F; 237 K)
390 °C (734 °F; 663 K)
爆発限界 Lower: 2.3%
Upper: 14.3% at 20 °C
致死量または濃度 (LD, LC)
> 2 g/kg (ラット)
安全データシート (SDS) Pennakem
関連する物質
関連する複素環式化合物 ピロール
チオフェン
関連物質 テトラヒドロフラン (THF)
2,5-ジメチルフラン
ベンゾフラン
ジベンゾフラン
2-フロ酸
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

フラン: furan)は、4個の炭素原子と1個の酸素原子から構成される複素環式芳香族化合物である。分子式 C4H4O、分子量 68.07 で、CAS登録番号は[110-00-9]。フランIUPAC命名法における許容慣用名で、系統名では1-オキサ-2,4-シクロペンタジエンである。環の一部にエーテル結合があるため環状エーテルでもある。可燃性の無色透明の液体で、沸点室温に近いため揮発性が非常に大きい。消防法に定める第4類危険物 特殊引火物に該当する[2]

五員環であるが、酸素原子に孤立電子対がありヒュッケル則を満たすため芳香族性を有する。

フランの親化合物はペントース含有材料の熱分解、特に松脂乾留で得られる。パラジウム触媒を用いて水素化すると有機溶媒などに使われるテトラヒドロフランが得られる。

歴史

「フラン」という名称は、ラテン語ふすまを意味する"furfur"にちなむ[3]

フランは当初は誘導体として発見された。1780年カール・ヴィルヘルム・シェーレがふすまからカルボン酸誘導体の2-フロ酸を発見。1831年ヨハン・デーベライナーギ酸の副生成物としてフルフラールを発見したが、1840年にジョン・ステンハウスによりふすまなどの植物体の蒸留によっても得られることが発見された。そして、純粋なフランそのものは1870年にハインリヒ・リンプリヒトにより発見された(リンプリヒト自身は「テトラフェノール」と呼んでいた)[4][5]

化学的性質

融点は−85.6 ℃、沸点は31.4 ℃である。特異臭を持つ無色透明液体で、空気中で褐変しやすい。引火点は−35 ℃のため室温で容易に引火する。純粋なフランは容易に重合反応を起こすため市販品には重合禁止剤が添加されている。有機溶媒に溶けやすいが、には溶けにくい。

フランの酸素原子は炭素原子と同じくsp2混成している。環平面に垂直なp軌道上に2つの電子を提供し、環平面内のsp2軌道上には1つの非共有電子対が存在する。この軌道上の2電子は6π電子系の形成に寄与している。

置換した誘導体が多数あり、このような化合物の母体として重要である。代表例としては、ホルミル基が置換したフルフラール (C5H4O2)、ヒドロキシメチルフルフラール (C6H6O3) などが挙げられる。

フランは求電子置換反応を受けやすい。これはフランが双極性の共鳴混成構造を持つことによる。

汚染物質としてのフラン

環境汚染物質としてしばしば言及される「フラン」は、フランそのものではなく、フラン環を持つジベンゾフランの誘導体のポリ塩化ジベンゾフラン (PCDF) のことである。PCDFはポリ塩化ジベンゾジオキシン(PCDD、ダイオキシン)に似た構造と毒性を持ち、ダイオキシン類に含まれる。

脚注

  1. ^ Nomenclature of Organic Chemistry : IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013 (Blue Book). Cambridge: The Royal Society of Chemistry. (2014). p. 392. doi:10.1039/9781849733069-FP001. ISBN 978-0-85404-182-4 
  2. ^ 法規情報 (東京化成工業株式会社)
  3. ^ Alexander Senning. Elsevier's Dictionary of Chemoetymology. Elsevier, 2006. ISBN 0-444-52239-5.
  4. ^ Limpricht, H. (1870). “Ueber das Tetraphenol C4H4O”. Berichte der deutschen chemischen Gesellschaft 3 (1): pp. 90–91. doi:10.1002/cber.18700030129. 
  5. ^ Rodd, Ernest Harry (1971). Chemistry of Carbon Compounds: A Modern Comprehensive Treatise. Elsevier 

関連項目


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