ヒュッケル則とは? わかりやすく解説

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ヒュッケル則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/23 04:16 UTC 版)

ヒュッケル則(ヒュッケルそく、: Hückel's rule)は、平面環状分子についてその芳香族性を推定する規則で、π電子の数が 4n + 2 (n は0を含めた正の整数)であれば芳香族性を有するというものである[1]。この4n + 2をヒュッケル数と言う。1931年ドイツ物理化学者のエーリヒ・ヒュッケルによって量子力学を基に考案された[2][3]。簡潔に 4n + 2 ルールと表現したのはフォン・デーリング(1951)であるが[4]、数名の著者が同時期にこの式を使用している[5]。ヒュッケル則を明確に満たすのは n = 0 からせいぜい n = 6 までである[6]

環状炭化水素

環状炭化水素では、ヒュッケル則に従えば芳香族としての性質をもつと言い換えてもよい。ベンゼン (n = 1) やナフタレン (n = 2)、アズレン (n = 2)、アントラセン (n = 3)、はヒュッケル則を満たす。

アヌレン

アヌレンでは炭素数が4で割り切れないシクロデカペンタエン英語版 (C = 10)、シクロテトラデカヘプタエン (C = 14)、シクロオクタデカノナエン (C = 18) がこの規則を満たす。しかし、立体的な制約(sp2炭素の結合角が120°を取れない)のため芳香族性を帯び安定化できるのは炭素数18のシクロオクタデカノナエンだけである。炭素数が4の倍数のときは、共鳴安定化できないため不安定になる(反芳香族性)。例としては、シクロブタジエン([4]アヌレン)、シクロオクタテトラエン([8]アヌレン)などがあり、これらは平面構造ではなく曲がった構造をしている。メビウスの帯のようにひねりが加えられた分子では、π電子が 4n 個のときに安定化するが、この現象をメビウス芳香族性という。

カチオンとアニオン

通常の分子ではヒュッケル則を満たさなくても電子が抜けたり(カチオン)、逆に加えられたり(アニオン)することによってヒュッケル則を満たすものもあり、こうして発生したカチオンやアニオンなどのイオンは通常のイオンよりも安定である。この例としてはシクロプロペニルカチオン (n = 0) やシクロペンタジエニルアニオン (n = 1)、シクロヘプタトリエニルカチオン (n = 1) が挙げられる。

複素環式化合物

環の中に炭素の代わりに窒素や酸素・硫黄などのヘテロ元素が置換したものもヒュッケル則を満たせば芳香族性を示し、複素環式芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物などと呼ばれる。低分子量で代表的な例としてはピロールピリジンフランチオフェンなど、高分子量なものではポルフィリンや道路標識の青色に使われているフタロシアニンなどが挙げられ、いずれも平面化合物である。

関連項目

脚注

  1. ^ IUPAC Gold Book - Hückel (4n + 2) rule
  2. ^ Hückel, Erich (1931), “Quantentheoretische Beiträge zum Benzolproblem I. Die Elektronenkonfiguration des Benzols und verwandter Verbindungen”, Z. Phys. 70 (3/4): 204–86, doi:10.1007/BF01339530 . Hückel, Erich (1931), “Quanstentheoretische Beiträge zum Benzolproblem II. Quantentheorie der induzierten Polaritäten”, Z. Phys. 72 (5/6): 310–37, doi:10.1007/BF01341953 . Hückel, Erich (1932), “Quantentheoretische Beiträge zum Problem der aromatischen und ungesättigten Verbindungen. III”, Z. Phys. 76 (9/10): 628–48, doi:10.1007/BF01341936 
  3. ^ Hückel, E. (1938), Grundzüge der Theorie ungesättiger und aromatischer Verbindungen, Berlin: Verlag Chem, pp. 77–85 
  4. ^ Doering, W. v. E. (September 1951), Abstracts of the American Chemical Society Meeting, New York, p. 24M 
  5. ^ See Roberts et al. (1952) and refs. therein.
  6. ^ March, Jerry (1985). Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure (英語) (3rd ed.). New York: Wiley. ISBN 0-471-85472-7

ヒュッケル則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/06 12:23 UTC 版)

フロスト・ムスリン円」の記事における「ヒュッケル則」の解説

詳細は「ヒュッケル則」を参照 20世紀前半量子化学創始されると、芳香族基準考案された。1930年代エーリヒ・ヒュッケルにより次のような基準発表され、ヒュッケル則と呼ばれている。 芳香族とは (4n + 2) 個のπ電子を持つ平面単環分子である。 π電子とは、分子面に沿って存在せず、その上下に分布する電子をいう。 実験的に観測されているベンゼン組成式: C6H6)の特異的安定性芳香族結合原型であるが、ヒュッケルはこの理由結合性分子オービタルが(4 · 1 + 2 = 6) 個のπ電子によって二重占有されていることであると明らかにした。LCAO法用いると、構成原子原子オービタルを「混合」する(シュレーディンガー方程式の解同士計算上線結合をとる)。分子オービタル結合性オービタルと非結合性オービタル反結合性オービタルとに分類されフントの規則に従ってエネルギーの低い順に占有される。

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「ヒュッケル則」を含む「フロスト・ムスリン円」の記事については、「フロスト・ムスリン円」の概要を参照ください。

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