フタロシアニン
フタロシアニン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/14 23:46 UTC 版)
フタロシアニン[1] | |
---|---|
![]() |
|
![]() |
|
別称
無金属フタロシアニンブルー
Pigment Blue 16 |
|
識別情報 | |
CAS登録番号 | 574-93-6 ![]() |
PubChem | 5282330 |
|
|
特性 | |
化学式 | C32H18N8 |
モル質量 | 514.54 g mol−1 |
危険性 | |
Sフレーズ | S22 S24/25 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
フタロシアニン (Phthalocyanine) は、4つのフタル酸イミドが窒素原子で架橋された構造をもつ環状化合物。ポルフィリンに類似した構造を持つ。略語Pc。
特徴
中心部分は遷移金属をはじめとした様々な元素と錯形成し、安定な錯体を形成する。分子全体にπ電子共役系が広がっているため、平面構造をとり、また強い色を呈する。特に錯体では青から緑色を呈するものが多い。
用途
色合いに優れ鮮明で、耐光性が高く(褪色が少なく)、堅牢な(耐久性にすぐれる)ことから顔料として使用される。特に銅フタロシアニンはフタロシアニンブルー、フタロシアニン青、高塩素化銅フタロシアニンはフタロシアニングリーン、フタロシアニン緑と呼ばれ、それぞれ青と緑の有機顔料の代表的なものとして知られる。無金属フタロシアニン (Pigment Blue 16) も顔料として使用される。銅フタロシアニンブルーよりも緑味の顔料であるが、可視領域の長波長側の反射が大きく、不鮮明である。
青色の銅フタロシアニンのColour Index Generic NameはPigment Blue 15、より緑味の青色を呈する無金属フタロシアニンのColour Index Generic NameはPigment Blue 16、緑色の高塩素化フタロシアニン(高塩素化銅フタロシアニン)のColour Index Generic NameはPigment Green 7、より黄味の緑色を呈する低塩素化フタロシアニン(臭素化塩素化銅フタロシアニン)のColour Index Generic NameはPigment Green 36である。
プロセスカラーに最もよく使われるのは銅フタロシアニンのβ結晶であるPigment Blue 15:3で、これの分散性能を高めたものが、Pigment Blue 15:4である。カラーフィルターの青に良く使用されるのは、銅フタロシアニンのε結晶であるPigment Blue 15:6で、紫色のジオキサジンとの併用で採用される。カラーフィルターの緑に良く使用されるのは、臭素化塩素化銅フタロシアニンのPigment Green 36で黄色のアゾ顔料などと併用される。
道路標識、新幹線の車体の青などはフタロシアニンの色である。またCD-Rの記録媒体としても応用されている。有機半導体材料として有機ELや有機電界効果トランジスタ等にも使用される。光導電性を持つものは複写機やレーザープリンターの感光ドラム等に使用される。
歴史
1928年、イギリスの染料会社 Scottish Dyes, Ltd., Grangemouth, Scotland(後にICIに合併)の、フタル酸とアンモニアからフタルイミドを製造するプラントで、鉄が化合して偶然できているのを発見されたのが最初である。フタロニトリル、o-シアノベンザミド、フタルアニヒドライド、フタルイミドあるいはジイミノイソインドールなどのフタル酸派生物質を、銅などの金属塩と加熱することによっても得られる。
おもな関連化合物
![]() 銅フタロシアニンブルー Pigment Blue 15 |
![]() 高塩素化銅フタロシアニングリーン Pigment Green 7 |
関連項目
出典
参考文献
- 『顔料の事典』 伊藤 征司郎(編集) 朝倉書店 2000/10 ISBN 4254252439 ISBN 978-4254252439
- 橋本勲, カラーオフィス『有機顔料ハンドブック』カラーオフィス、2006年。 NCID BA82257636 。
- 小川昭二郎「フタロシアニンの化学と応用」『生活工学研究』第1巻第1号、お茶の水女子大学生活科学部生活工学研究会、1999年、78-85頁、 hdl:10083/2552、 CRID 1050001202947746432。
フタロシアニン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 06:29 UTC 版)
「フタロシアニン」、「アゾメチン」、および「錯体」も参照 青色顔料として現在最も多用されるのは、葉緑素に似た化学構造を持つフタロシアニンである。1933年、ICI(インペリアル ケミカル インダストリーズ)社のリンステッドたちがフタロシアニンと命名、1935年に工業化され、モナストラルブルーの名で商品顔料になった。アメリカでは、1936年に別の名で取引が始まる。鮮明で着色力が非常に強く、プロシア青の倍程の着色力がある。濃色では赤味が強いが淡色では赤味が減じる。有機溶剤には溶解しない。濃硫酸塩酸以外の酸、アルカリには溶解しない。酸化剤、還元剤にも耐性がある。赤と黄の光を殆ど吸収し緑と青の光を反射するので、三色印刷に求められる、理想的な純粋の青に極めて近いものになる。絵具として商品化されたのは1936年に商品化されたすぐ後である。フタロシアニン青である銅フタロシアニン Colour Index Generic Name Pigment Blue15:3などが印刷以外でも、色の三原色のひとつという認識の下使われることがある。Colour Index Generic Nameには銅フタロシアニンのPigment Blue 15、無金属フタロシアニンのPigment Blue 16、銅フタロシアニンのPigment Blue 76等が記載されている。他にもアルミニウムフタロシアニン等様々ある。銅フタロシアニンも無金属フタロシアニンも良く用いられる。 フタロシアニンのベンゼン環にスルホン基を導入して可溶性色素(染料)とし、金属塩を用いてレーキ化したものは、鮮明で安価なので学童用に用いられることがある。しかし、耐光性に劣り、油絵具化するとブリード(滲出)する。 フタロシアニン緑はフタロシアニン青に続いて開発され、塩素化銅フタロシアニンは1838年に商品化された。Colour Index Generic NameにはPigment Green 7、臭素化塩素化フタロシアニンのPigment Green 36、臭素化塩素化亜鉛フタロシアニンのPigment Green 58が記載されている。液晶テレビを含む液晶ディスプレイのカラーフィルタの緑には、構成要素としてPigment Green 36が使われている。
※この「フタロシアニン」の解説は、「青」の解説の一部です。
「フタロシアニン」を含む「青」の記事については、「青」の概要を参照ください。
フタロシアニンと同じ種類の言葉
固有名詞の分類
- フタロシアニンのページへのリンク