ダイヤ改正の手順
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 14:19 UTC 版)
ダイヤ改正を行うにあたっては、大きな改正であれば2 - 3年前から検討が始められることがある。特に新線の開業など大きな変更がある場合には、長い時間を掛けて検討が行われる。これは車両や線路の設備をどのようにするかにもダイヤが影響してくるため、概略を検討しておく必要があるためである。また、ダイヤは鉄道会社にとって商品に当たるため、経営戦略とも絡んで検討が行われる。 より具体的なダイヤは、改正まで1年をきった頃から実際の策定作業が始められる。新幹線や長距離列車といった骨格となる列車の計画が中央で行われ、地域輸送の普通列車などはその地域を担当する支社などが行うのが通常である。作成には路線ごとの輸送需要や線路容量、車両の速度種別や運用効率、乗務員の運用等が勘案される。所要時間については、車両性能や制限速度に基づき地点ごとの速度を表した運転曲線(ランカーブ)から基準運転時分を定め、そこに余裕時分を加えて決めている。手順としては最初に1時間ごとの大まかなダイヤグラムを作り、その後10分ごと数分ごととダイヤグラムを作っていき最終的には15秒単位の二分目ダイヤを作っていく。路線によっては一分目ダイヤを使うこともある。普通列車と比べ、優等列車(特急・急行列車など)の運転時刻が優先的に決められる場合が多い。 また、線路の容量をフルに使うのではなく、ある程度の余裕を見込む必要がある。特に保線作業を行うために必要な時間を確保する必要があり(これを「保守間合い」という)、通常は夜間に保守間合いが確保されるが、主要な路線においては夜行列車や貨物列車の運転との兼ね合いが最大の問題となる。昼間に大規模に列車を運休してリフレッシュ工事を行う路線もある。会社間を越えて乗り入れが行われている列車の場合は会社間で協議が行われる。1箇所での変更が他に影響を与えるため、何度も担当部署の間でやり取りが行われて詳細が策定されていく。 かつての国鉄時代に行われた全国ダイヤ改正会議では、全国の担当者を一堂に集めて数週間にもおよぶ下案会議や本会議が行われていた。これには、温泉旅館を借り切って長い時間を掛けて作業を行っていたため、「温泉会議」とも称されたが、JRに移行してからは全国規模で一斉に白紙ダイヤ改正を行わないため、このような光景はなくなった。 ダイヤの詳細が決定すると、ダイヤ改正の3か月前程度を目処にプレス発表が行われる。この時期に発表されるのは、ダイヤが確定する時期に合わせたものである。 実際に改正されたダイヤを実施するに当たっては、新製された車両の投入や既存の車両の転属を行うことがある。これらの回送の計画も一緒に行われる。新製車両を投入する時は、既存の車両と合わせると車両基地が溢れてしまうことがあり、一時的に他の場所で保管しておいて、ダイヤ改正に合わせて一斉に入れ替えることもある。 また、私鉄や地下鉄のように夜間に完全に列車の運行がなくなる場所ではあまり問題はないが、東海道本線や東北本線などの夜行列車や貨物列車が一晩中走り続けている重要幹線などでは、ダイヤ改正時の移り替わりが問題となる。このためにダイヤ改正前日または当日に一部の列車の時刻を変更したり、運休したりして対応する。この計画のことを移り替わり計画という。また改正日には駅の時刻表を貼り直したり、車両基地で編成の組み換えを行ったり、改正のための作業が徹夜で行われている。近年では作業の簡略化を目的として、改正後のダイヤが確定した時点で駅掲載の時刻表は改正後のものへの変更が順次なされ、改正日までは改正後の時刻表の上に改正前の時刻表が貼り紙で貼りだされていることが多くなっている。 ダイヤ改正を実行してしばらくすると、実行してみてはじめて判明した不都合な点が出てくることがある。これは乗換接続の問題であったり、特定の列車だけ遅れがちであるというような運行上の問題であったりする。こうした問題を解消するために、細かい時刻修正(訂補)が行われることがある。
※この「ダイヤ改正の手順」の解説は、「ダイヤ改正」の解説の一部です。
「ダイヤ改正の手順」を含む「ダイヤ改正」の記事については、「ダイヤ改正」の概要を参照ください。
- ダイヤ改正の手順のページへのリンク