ターンキー方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 15:20 UTC 版)
「福島第一原子力発電所1号機の建設」の記事における「ターンキー方式」の解説
1号機の契約はターンキー方式で結ばれ発電設備一式をGE社に発注する形となったが、これは東京電力としては初の契約方式であった。『原子力工業』1966年6月号によると、この契約方法について発注当時東京電力は詳しい説明を避けていたが、同誌は「特命発注することによってむしろ炉の購入価格を安くできる可能性が大きい、などからこうした措置を取ったものと見られている」と観測していた。また、同時にWH社のPWRを採用した関西電力はタービン、発電機についてはWH系の技術を導入しつつあった三菱原子力に発注しており、完全なターンキー方式を採用しなかった。『原子力通信』1966年5月4日号は、このような関西電力の動きが自社の動きに影響していることを東京電力も暗に認めており、その影響は敦賀1号機に比較した国産比率の増大であるとした。 1965年12月より文書課から原子力部次長に異動した松永長男によれば、1966年からスタートしたGEとの契約交渉では時間的制約から日本側での契約ドラフト作成は諦められ、GEのドラフトをベースに交渉することとなった。GE側が提示した契約書は同社の法律家、それも一般の弁護士ではなくこの種の契約を専門にする有資格者が作成した。そのため契約慣行は日本側とは相違点が多く、特徴としては予想されるあらゆる事態に対応できるように細部まで書き込まれているため、分量は多くなることが挙げられている。なお、東京電力側の交渉の主担当は常務だった田中直治郎と資材部長の正親であった。東京電力側は三井物産も仲介に入れて交渉に当たっており、その翻訳力は高く評価していたが、交渉を有利に妥結させる自信は無く、ブレークモア法律事務所にも相談し、松永は次の3条件 日本語を正文とする 日本の裁判籍を採用する ターンキー方式は日本の請負に類するので瑕疵担保の期限を長期とする を進言したが、GE側が了解したのは裁判籍の件だけで、契約書は日本語を正文としたものの英語が優先という形での決着、瑕疵担保はエスカレーションの概念を採用しその幅は5%で頭打ちとなった。『電気産業新聞』によれば従来の契約ではほとんどが英語のみの記述であったが、誤解が生じることがあったことが英日二本立てとされた背景にあったという。 また上之門典郎によるとこの契約によって、「原子力損害賠償は法解釈による」とされた。契約調印は1966年12月8日だったという。 『原子力産業新聞』によると、契約の特徴として設計・工事における安全確認に特段の配慮が盛り込まれた他、運転開始後の保証期間が従来の火力発電より長期間とし、輸入機器は通常火力で1年保証のところ、計測装置などは2年に延長、国産の一次系機器は5年とされたという。福島原子力建設所次長として1号機の完成に立ち会った加藤恒雄は特徴的な契約内容として保険を挙げている。GETESCOは1号機の工事全体にオールGETESCO保険をかけていたが、東京電力と直接契約を結んだ土木業者4社については、GETESCOの保険に対応するような工事保険をかけた。 更に、出力増加を実施した際、もし46万kWに達しなければ、その出力に応じて46万kWから金額を引きGE社に負担させるとされた。
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