スペル星人のデザイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 22:22 UTC 版)
劇中に登場するスペル星人の姿は、 全身は真っ白 凹凸のない能面のような顔 体の所々にケロイド(火傷などによる皮膚の外傷状態。通常生活でも起こりうる。)を彷彿させる黒い大きなシミのような物があり、時折オレンジに点滅する。 佐々木守の脚本におけるスペル星人は、「かぶと虫のような」と表現されていたが、その経緯について佐々木は「何かの形にしないといけないから、そういうふうに書いていただけで僕のウルトラマンの怪獣はみんなそうですよ」とのコメントを残している。 12話の特撮監督の大木淳吉は、撮影当時の現場で「被爆者を怪獣みたいに見るような、そういう意識はありませんでした」「ただコスチュームを考えるときに、実相寺さんが内臓だとか血管だとかがチラッと見えるようにしてくれと、そういった注文を出していたのを覚えています」とのコメントを残している。 監督の実相寺昭雄はデザインに関して「全身に毛細血管が浮き出たイメエジを打合せした」「色が全部出ちゃったような青白さを出したかったんだよ。血管が浮き出ているようなね。ジャミラとは違って、乾燥してない体が透けていて、白血球と赤血球のせめぎ合うイメージで」と考えていた。昆虫から人型への変更や、スペル星人の体色、ケロイドなど具体的なデザインの成田への依頼については、以下のようなコメントを残している。 ”スペル星人のケロイドや白い体は実相寺監督のアイディアだったのか?” との問いに「そうだね。でも、それがあまり成田さんのデザイン意欲をそそらなかったんだね」「あまり良いデザインではなかったから、12話での特撮シーンは少ないですよ」 ”白い体にケロイドというのを考えたのは実相寺監督だったのか?” との問いに「デザインしたのは成田さんだけど、僕が、こういうふうに(ケロイド状に)したい、と依頼したんだ」「最初は何か昆虫的なものだったらしいけど、それを僕が人間の姿にさせたんだ」「成田さんは怪獣を人間っぽくするのは嫌がる人だったから気が進まなかったようだね」 ”被爆者を連想させるようなデザインだからまずい”という抗議団体の主張に対して「人の見方だから そう見えないと言えば終わり 笑いものにしているわけではない」と反論した上で、「地球の話じゃないんだから」「地球が被爆の被害が少ないから 地球人の血を採りにきたわけだよ だからメトロン星人みたいな形じゃ困るんだよね」 腰の内臓が露出しているという注文を出したタイミングについては「元々打合せしている最中にだね。成田さんのデザインにもそういうふうにお願いしてあったから」 高山良策の作ったスペル星人の実物を見た時の感想について「オレのイメージはそれで中の内臓がちょっと露出してるって感じだけど、それ見た時にね、なんかビニールの管とか丸見えだったんでイヤになっちゃったよ。ホントに」 成田亨のデザイン画と高山良策の作った実物はイメージと違ったのかの問いに「イヤイヤ似てますよ。色々ディティールが違うって位で。腰の露出しているところとかね。それはやっぱり(成田亨の)絵のほうがきちんと書いてあったよ。実物見るとがっかりすることが多いんだよね」 デザイン画のコピーを見た上で「僕が打ち合わせした時のデザイン画は、もっと書き込まれていて、ケロイドの部分は血管まで書いてあったような気がする 大きなボードに書いてあった」「(デザイン画はどこかに現存)してるだろうね。成田さんのところだと思うよ。成田さんが誰かにあげちゃってれば別だけどね。大きなパネルくらいの大きさのデザイン画書いてたなあ」 高山良策の1967年9月10日の制作日誌には以下の記述が残されている。 「午後、円谷プロの佐藤君と成田氏やって来る。新しいデザイン、簡単なスケッチを持参。ノッペラボーのケロイドのある少々薄気味悪い宇宙人。スペル星人」 成田亨は、自著の中で彼が『ウルトラマン』で定めた怪獣デザインのポリシーと相反するために難色を示したものの、実相寺に押し切られ「ほとんど投げやりにデザインした」と回顧している。また1984年に出版された『被爆星人の逆襲』のインタビューで以下のコメントを残している。 「勿論デザインは僕がやったんだけどね。あのケロイドとか、そう云った部分は全部実相寺の考えなんだよ。ここをああしろだとか、こうしろだとか……モノ凄くしつこい男だった」 「僕自身は原爆なんかを嫌うことには賛成の方だから、ああ云ったようにケロイドを着けた被爆者みたいな宇宙人て云うのは好きじゃなかったんだけど……」「だから言われる通りに仕事をこなしただけで、まったく不本意なものだった」 「スペル星人について抗議があって、それが欠番になったことも別に何とも思っちゃいないよ」「円盤なんかは池谷さんとか、もう一人 深田さん、後は演出の人なんかがやってて僕は一つもやってない。デザイン画?あれはもう残ってないんだよね」 成田夫人も「撮影の最中に(スペル星人のことは)聞いておりました。『困ったもんだ。ケロイド状のものを子供番組向けの怪獣に作らないといけないのか』と、うちに帰って来てはっきり言っておりました」と、実相寺からデザインを要望された成田の苦悩について回顧している。
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