コレクションの基準
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/08 03:14 UTC 版)
「バッドアート美術館」の記事における「コレクションの基準」の解説
美術館のモットーは「目をそらすには酷すぎる」だが、MOBAがコレクションの取捨選択に関して厳密な基準を持っていないわけではない。マリー・ジャクソンによれば「たいていそこまで酷いわけじゃないから十あったらそのうち九はいらない。アーティストが酷いと思っていても、それがいつも我々のいう低水準を下回るというわけありません」。「バッドアート美術館とその傑作」の序文で述べられているように、MOBAが獲得する「オブジェ・ダール」(芸術品)の最大の要素は、誰かが芸術の名のもとで真面目に取り組んだ作品であるということだ。アーティストとしての技術が不足していることはコレクションにとって本質的ではない。候補となる絵画あるいは彫刻は理想的には「迫力ある生き生きした印象」をもたらすものであるべきで、あるいは名誉キュレーターのオーリー・ハロウェルが言うように「なんてこった」というクオリティーのアートであらねばならない 。 他に重要な基準として絵画や彫刻が退屈なものであってはならないという点が挙げられる。マイケル・フランクは自分たちが「ポーカーをする犬」のような商業作品には興味がないことに触れて「我々は本気でつくられたものを集めている。芸術的な作品を目指しているが、創る過程かそもそもの前提か、いずれにせよ何かが間違った方向へ行ってしまったものだ」と言っている。モンセラート美術大学はMOBAの展示会を学生にデモンストレーションを行う場として利用している。つまり「真面目であることはいつでも大事であり、目的も純粋であって当然」だと教えられるというわけだ 。 持ち込みの作品でも、基準にかなえばMOBAの収蔵品となる。キュレーターが検討に値するとみなすことが多いのは、創作に激しさや興奮をともないつつも自分の技術水準との折り合いがついていないアーティストによる作品だ。CNNの地方ニュース番組でも扱われた「もう止められない」展("I Just Can't Stop")で美術館はそれを「残酷な創造性」と呼んで大きく取りあげた。技術的には明らかに練達の域に達しているアーティストの作品もあるが、彼らの試みた実験は失敗に終わっている。マイケル・フランクはMOBAの作品とアウトサイダー・アートやアール・ブリュットのそれを比較しているが、実際MOBAのアーティストが他のギャラリーではアウトサイダーアートに分類されることもある。マサチューセッツ芸術大学の教授ディーン・ニマー(MOBAの審美眼担当エグゼクティヴ・ディレクターの称号も持っている)はバッドアート美術館とそれ以外の機関とを対比させてこう言っている。「彼らはファインアートを標榜する美術館をモデルにしながら、同じ基準でバッドアートを受けいれている…。〔彼らの方針は〕こんなことをいうギャラリーや美術館と非常に似通っている。『ええ、我々がカバーしているのはインスタレーションか写実絵画かネオ・ポストモダン抽象画です』」。 MOBAは子供の手で産み出された絵画作品は集めていない。あるいは伝統的に質の面で劣ると考えられているアートもそうで、例えばベルベット・ペインティング、パズル絵画、キッチュ、さらには旅行者向けにわざわざつくられたものも含めた工場生産のアートなどは候補から外れる。ラッチ・フックド・ラグのような手芸にもMOBAのキュレーターは関心を持っておらず、そういったものは「悪趣味美術館や国際安物コレクションでやるとか、あるいは国庫で揃えた怪しいホームデコレーションとか」もっとふさわしい場所があると言っている 。 バッドアート美術館はアンチ・アートであるとか、真面目に表現された作品を引き取ってそれを嘲るといった批判をされることがある。しかしスコット・ウィルソンはMOBAが作品を受け入れるのはアーティストの情熱に対する記念であると主張しており、マリー・ジャクソンもこの考えを繰り返し語っている。「大きな励みになると思います…何かを作り出したくても、尻込みしてしまう人にとっては特にそうです。そういう人たちがうちの作品を見たならば、恐れることなど何もないということが分かるでしょう。やってみるしかないのだと」。ルイーズ・レイリー・サッコもそれに同調して、こう言っている。「我々が何かを笑いものにしているとしたら、それは美術界だ。アーティストではない。そしてここは本物の美術館なんだ。10年続いた。メーリングリストには6千人がいる。世界中でそのその名が知られているんだ」。キュレーターたちの意見によれば、MOBAに作品が選ばれたアーティストは注目されたことを喜んでいるので、お互いに納得のいく関係が築けている。美術館には作品が1つ増えるし、アーティストは美術館で公開してもらえるのだ。1997年のシカゴ・トリビューンに載った記事によると、自分の作品がMOBAに認められたと名乗り出ている10人ないし15人のアーティストのうち、それに憤慨している人間は皆無である。 MOBAの作品の多くは寄贈されたもので、ケンブリッジの廃品回収業者組合も最終処分前のごみから救い出した作品を寄付してはいるが、ほとんどはアーティスト本人が提供したものである。フリーマーケットやリサイクルショップなどで購入された作品もある。かつてMOBAにはどんな作品にも6.50ドル以上は支払わないという方針があったが、その後、二倍、三倍の額が例外的な作品の代金として支払われている。美術館が手放すことを決めた作品群は「不合格品コレクション」("Rejection Collection")で展示され、後におそらくオークションで売却された。過去にはMOBAの作品を大量に供給した救世軍に売り上げの一部が寄付されたことがあったように、美術館は大半のオークションで利益を出している。
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