グラスファイバー弓・カーボンファイバー弓[昭和42年〜 ]
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「和弓」の記事における「グラスファイバー弓・カーボンファイバー弓[昭和42年〜 ]」の解説
1967年(昭和42年)7月、オランダ・アメルスフォートで開催された第24回アーチェリー世界選手権大会に、全日本弓道連盟から唯一和弓選手として派遣された宮田純治選手が、アーチェリー選手と最長90mの距離を飛ばし的中を競う為、内竹・外竹の代わりにアメリカから輸入した反発力の強いグラスファイバーFRP(Fiber Reinforced Plastic)を使用した和弓を開発し、同大会に使用したのが起源(月刊「秘伝」2012年11月号 参照 )。同氏が、1972年(昭和47年)にミヤタ総業株式会社を設立し、グラスファイバー弓の製造販売を開始。のちにカーボンファイバーFRPを使用した弓も開発、販売する。「学校弓道-的中率と効果的な練習方法-」(1984年5月刊行、著者:高垣俊廣、発行:株式会社タイムス)によると、「<グラスファイバー弓>現在(1984年)では学生弓道界の主流をなしているグラスファイバー弓について言及しておきたいと思います。日本弓は単材弓としての丸木弓から、平安時代になって複合弓が考案され、伏竹弓ができ、三枚打弓(平安時代末期)、四方竹弓(室町時代)へと進歩し、現在も使用されている弓胎(ひご)弓-発生時代不明-がつくられるようになりました。このような一連の日本弓発展過程において、グラスファイバー弓の出現は、時代の変遷に伴う国際的交流と科学的社会が生んだ新製品と言えます。現在のグラスファイバー弓は日本弓の形状をそのまま保存し、その材質にグラスファイバー(Fiberglass Reinforced Plastics・・・以下FRPと言う)を使用したものです。現在(1984年時点)、社会人高段者においては弓胎弓が主流として使用されていますが、学生弓道界においてはFRP弓が多く使用されています。FRP弓の創始者は宮田純治氏です。<時代背景>宮田氏の言によれば、FRP弓の必要性を強く感じた理由と、当時の社会的背景を次のように語っています。昭和39年(1964年)東京オリンピックに先立つ数年前、東京オリンピックに弓術種目が入るという話題が持ち上がった時、日本における弓の代表団体である全日本弓道連盟が、国際競技への参加権を獲得していたため、全日本弓道連盟は挙げて国際競技に対する研究に取り組むことになりました。(当時、アーチェリー連盟は日本体育協会に加盟が許可されておらず、現在に比べれば組織力・技術力においてまだ発展途上にありました。)東京(後楽園球場)において、和洋混合の国際競技大会が行われ、宮田氏は選手として出場し、日本伝統の和弓を使用して70メートル・90メートル競技において3位に入賞しました(1・2位は洋弓)。当時、全日本弓道連盟は弓具の改良を研究し、短い竹弓の試作も試みましたが約一年後、方針を転換し、洋弓との競射は行わず、日本弓道独自の道を歩む方向に転換しましたので、すべての研究はストップすることになりました。もし研究が続行され、進歩していれば、FRP弓も誕生していたと考えられます。宮田氏はその後もFRP弓と日本弓との取り組みをあきらめず、洋弓に見られぬ洗練された美しさと優秀性、理念の高さなどに引き込まれていき、国際的技術として通用するよう、射術と弓具について更に深く研究を続けていきました。洋弓の国際ルールでは4種目で、男子は(30メートル、50メートル、70メートル、90メートル)各36射、計144射が1ラウンドで4日間、2ラウンドの協議を行います。屋外で多少の風雨では競技は実施されるため、日本弓製の弓・矢と革の弽・麻弦では、耐候性の点において、洋弓の化学的製品に比べ、格段の劣勢は明白でありました。そこで洋弓関係者からFRPを購入し、7尺の和弓に張りつけて引くといった工夫と実験を重ね、矢も米国イーストン社のジュラルミンのシャフトを矢として使用するなどの研究を続けていきました。国際競技の参加権を持っている全日弓連に対しては、洋弓界から参加の働きかけがあり、再び国際競技への参加が計画され、昭和42年7月、オランダで開催された世界選手権戦に洋弓選手5名とともに、和弓代表者として宮田氏がただ一人日本弓で参加しました。弓具の差は歴然とし、結果は惨敗に終わりました。その後間もなく、国際競技への参加権は、全日本アーチェリー連盟に移譲されましたが、宮田氏の日本弓改良に対する情熱は一層強くなり、新しい素材であるFRPを使用して試行錯誤しつつ、5年の歳月を経過した後、昭和47年(1972年)9月、会社を設立し、FRP弓の製造販売を開始するところとなりました。その後、次々とFRP弓のメーカーが出るようになり、学校弓道においては不可欠の弓具となっています。」と説明されている。その他現在、グラスファイバー弓の製作メーカー・ブランドとして、タカハシ弓具(肥後蘇山)、小山弓具(直心)、大洋弓具製作所(粋)等が存在する。
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