ガラス製造の開始
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:18 UTC 版)
ガラスの歴史は古く、紀元前4000年より前の古代メソポタミアで作られたガラスビーズが起源とされている。これは二酸化ケイ素(シリカ)の表面を融かして作製したもので、当時はガラスそれ自体を材料として用いていたのではなく、陶磁器などの製造と関連しながら用いられていたと考えられている。原料の砂に混じった金属不純物などのために不透明で青緑色に着色したものが多数出土している。 なお、黒曜石など天然ガラスの利用はさらに歴史をさかのぼる。黒曜石は火山から噴き出した溶岩がガラス状に固まったもので、石器時代から石包丁や矢じりとして利用されてきた。黒曜石は青銅器発明以前において最も鋭利な刃物を作ることのできる物質であったため、交易品として珍重され、産出地域から遠く離れた地域で出土することが珍しくない。青銅器が発明されなかった文明や、発明されても装飾品としての利用にとどまったメソアメリカ文明やインカ文明においては、黒曜石は刃物の材料として重要であり続け、黒曜石を挟んだ木剣や石槍が武装の中心であった。 古代ガラスは砂、珪石、ソーダ灰、石灰などの原料を摂氏1,200度以上の高温で溶融し、冷却・固化するというプロセスで製造されていた。ガラス製造には大量の燃料が必要なため、ガラス工房は森に置かれ、燃料を木に頼っていた。そのため、その森の木を燃やし尽くしたら次の森を探すというように、ガラス工房は各地の森を転々と移動していたのである。ガラス工場が定在するようになったのは石炭と石油が利用されるようになってからである。 エジプトや西アジアでは紀元前2000年代までに、一部の植物灰や天然炭酸ソーダとともにシリカを熱すると融点が下がることが明らかになり、これを利用して焼結ではなく溶融によるガラスの加工が可能になった。これが鋳造ガラスの始まりである。紀元前1550年ごろにはエジプトで粘土の型に流し込んで器を作るコア法によって最初のガラスの器が作られ、特にエジプトでは様々な技法の作品が作製され、西アジアへ製法が広まった。 新アッシリアのニムルドでは象嵌のガラス板数百点が出土している。年代の確実なものとしては、サルゴン2世(紀元前722年~紀元前705年)の銘入りの壷がある。アケメネス朝ペルシアでは、新アッシリアの技法を継承したガラス容器が作られた。紀元前4世紀から同1世紀のエジプトでは王家の要求によって高度な技法のガラスが作られ、ヘレニズム文化を代表する工芸品の一つとなった。 中国大陸では紀元前5世紀には鉛ガラスを主体とするガラス製品や印章が製作されていた。
※この「ガラス製造の開始」の解説は、「ガラス」の解説の一部です。
「ガラス製造の開始」を含む「ガラス」の記事については、「ガラス」の概要を参照ください。
- ガラス製造の開始のページへのリンク