ガイドラインや証拠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/11 06:45 UTC 版)
各国のベンゾジアゼピン処方規制については「ベンゾジアゼピン薬物乱用#各国の状況」を参照 アメリカ精神医学会(APA)は、アメリカ内科医学委員会財団(ABIM財団)が主導する過剰診療防止のためのChoosing Wiselyキャンペーンにおいて、精神医療において避けるべき加療トップ5を公表しており、「適切な初期評価および経過観察が行われていない患者に対し、抗精神病薬を処方してはならない」「二種類以上の抗精神病薬を継続的に投与してはならない」「認知症による行動・心理症状の治療に際し、抗精神病薬を第一選択肢とすべきではない」「成人の不眠症に対し、最初の治療介入として抗精神病薬を継続的に用いてはならない」「精神障害でないのならば、児童・青年に対する最初の治療介入として抗精神病薬を継続的に処方してはならない」と勧告している。 英国国立医療技術評価機構 (NICE) は、抗うつ薬に関して、2009年のうつ病に対するガイドラインで、リスク-ベネフィット比が悪いため、軽症以下のうつ病に抗うつ薬を使用してはならないとしている。また、ベンゾジアゼピン系薬は2週間までの投与に限るとしている。日本うつ病学会による2012年のうつ病に対するガイドラインでは、軽症のうつ病に対して安易な薬物療法は避け、また1種類の抗うつ薬の使用を基本とすることが推奨されている。 日本うつ病学会による、2012年の双極性障害に対するガイドラインでは、基本的には、気分安定薬か非定型抗精神病薬による単剤治療か1剤づつの組み合わせが推奨されている。 NICEの統合失調症に対する2009年のガイドラインでは、抗精神病薬の多剤処方は薬剤切替時などの例外的短期間を除いて行なわないよう勧告している。 NICEの境界性人格障害に対する2009年のガイドラインは、自傷行為、情緒不安定、一時的な精神病的症状に薬物療法を用いるべきではなく、処方するとしても1週間以上は推奨できないこと、乱用の可能性が最小で過量服薬時に相対的に安全な薬を選択すること、としている。 厚生労働科学研究事業による2008年のガイドラインでは、過量服薬の危険性があるため研究報告の数が限られており、また有効性が示される医薬品も一時的かつ部分的な効果であり、有効性が示されないベンゾジアゼピン系の薬剤の使用を避けて、処方するとしても数日から2週間程度とし、全体的にも抗うつ薬と抗精神病薬といった組み合わせは支持できず単剤療法を中心とすることが推奨されている。 NICEの不安障害に対する2011年のガイドラインでは、全般性不安障害 (GAD) やパニック障害にはベンゾジアゼピン系の抗不安薬や、不安を鎮める目的での抗精神病薬は使用しないとしている。これらの疾患に長期的な有効性の根拠があるのは抗うつ薬のみである。 NICEの不眠症に対する2004年のガイドラインでは、ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の使用は、短期間にとどめることが推奨されている。2013年の日本睡眠学会によるガイドラインでは、危険性の高いバルビツール酸系薬剤、多剤併用、漫然とした長期処方を避けることが推奨されている。国立精神・神経医療研究センターの睡眠薬適正使用ガイドラインでは、常用量の睡眠薬で効果が不十分な場合に多剤処方が有効であるというエビデンスは存在せず、多剤処方はできるだけ避けるべきとしている 世界保健機関 (WHO) は、1996年の「ベンゾジアゼピン系の合理的な利用」という報告書において、ベンゾジアゼピン系の利用を30日までの短期間にすべきとしている。2010年に国際麻薬統制委員会 (INCB) は、日本でのベンゾジアゼピン系の消費量の多さの原因に、医師による不適切な処方があると指摘している。 アメリカ合衆国では、アメリカ食品医薬品局 (FDA) によるベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の添付文書には、7〜10日の短期間の使用に用いる旨が記載されている。 厚生労働省の認知症BPSDに対してのガイドラインにおいては、BPSDへの第一選択は原則非薬物介入であり、BPSDへの抗精神病薬投与は適応外処方である。基本的に使用を勧めず、処方時には患者および保護者に承諾を取るべきである。特に、身体拘束を意図した投薬や、多剤処方はすべきではない。 2013年に、精神症状における多剤大量処方によって、脳に萎縮が起こるとされる研究論文がイギリスから発表された。
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