Choosing Wisely キャンペーン
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「無駄な医療」の記事における「Choosing Wisely キャンペーン」の解説
詳細は「en:Choosing Wisely」を参照 Choosing Wisely(賢い選択)キャンペーンは、アメリカ内科医学委員会(英語版)が創設したABIM財団(英語版)により2011年から展開された運動である。患者と医師に対して過剰医療についての情報を提供することで、医師と患者との関係を密にし、患者中心医療の推進を目的としている。 このキャンペーンにおいて、ABIM財団はそれぞれの分野学会に対し、各分野において過剰医療を行わないための推奨事項を5項目挙げるよう依頼した。各学会よりもたらされた勧告「Five Things Physicians and Patients Should Question(医師と患者が問い直すべき5つの項目)」の一覧はABIM財団のサイトに掲載されている。 またカナダにおいてはChoosing Wisely Canadaとして、カナダ医師会が主導している。 アメリカ家庭医学会(英語版)。 危険な徴候のない腰痛に対し、発症から6週間未満はX線撮影を行う必要はない。 副鼻腔炎に対し、症状が6日以降も続く場合や初診時より症状が悪化している場合を除き、機械的に抗生物質を処方すべきではない。 自覚症状のない低リスクの患者に対し、毎年のように心電図検査やその他の心臓検査を行う必要はない。 アメリカ一般内科学会(英語版) インスリン投与を行っていない2型糖尿病患者は、指グルコース試験を毎日家で実施する必要はない。 自覚症状のない成人に対し、定期的な健康診断は不要である。 低リスクの外科手術であれば、術前の所定の検査は不要である。 平均余命10年以下の成人に対しては、がん検診は不要である。 患者や医療従事者の利便性のために、CVカテーテルを設けたり、また挿入したままにしてはならない。 アメリカ小児科学会 ウイルス性呼吸器疾患(副鼻腔炎、咽頭炎、気管支炎)と思われる場合は、抗菌薬を投与すべきではない。 4歳以下の子供の呼吸器疾患に対し、風邪薬や鎮咳剤を投与したり推奨してはならない。 頭部の軽い外傷に対し、CT撮影は不要である。 子供の単純な熱性けいれんに対し、CTやMRIなどの神経画像撮影は不要である。 日常的な腹痛の訴えに対し、CT撮影は不要である。 アメリカ老年医学会(英語版)、カナダ老年医学会(Canadian Geriatrics Society) 進行性の認知症には経管栄養法を推奨できない。代わりに経口摂取の援助を提案する。 認知症による行動と心理の徴候について、抗精神病薬を第一選択とすべきではない。 65歳以上に対し、HbA1cの7.5%未満達成のために薬物療法を行なうべきではない。ほとんどの場合は中程度の管理でよい。 高齢者の不眠症・興奮・譫妄に対して、ベンゾジアゼピンや他の鎮静催眠剤を第一選択とすべきではない。 無症候であれば、高齢者の細菌尿症に抗菌薬を用いるべきではない。 アメリカ外科学会(英語版) 軽微・単箇所の外傷に対して全身CT撮影は不要である。 平均余命10年未満であり、家族や本人に大腸腫瘍の病歴が無い患者については、自覚症状がければ大腸癌検査は不要である。 病歴や健康診断結果において目立った特徴のない外来患者に対し、入院時や手術前の胸部X線撮影は不要である。 アメリカ麻酔科学会(英語版) 癌が原因ではない慢性痛に対しては、オピオイド系鎮痛剤を第一選択としてはならない。 患者に薬物依存症を含めたリスクを説明して話し合うまで、オピオイド系鎮痛剤による長期の薬物療法を行ってはならない。 癌が原因ではない慢性痛には、大きなリスクや費用になる不可逆的となるような治療は行わない。 アメリカ神経学会(英語版) 頭痛に対し、脳波測定は不要である。 単純な失神に対し、他の神経学的症状がないのなら頸動脈造影は不要である。 片頭痛に対してのオピオイドやButalbital(英語版)の処方は、最終手段である場合を除いてすべきでない。 アメリカ耳鼻咽喉・頭頸部外科学会(英語版) 突発性難聴に対し、頭部CTは不要である。 中耳腔換気用チューブ留置後の耳漏に対し、合併症が無いのであれば経口抗生物質を処方すべきではない。 急性外耳炎に対し、合併症が無いのであれば経口抗生物質を処方すべきではない。 急性副鼻腔炎に対し、合併症が無いのであれば画像撮影は不要である。 主訴が嗄声である患者に対し、前喉頭検査をせずにCTやMRIをすべきではない。 アメリカ精神医学会(APA) 適切な初期評価および経過観察が行われていない患者に対し、抗精神病薬を処方してはならない。 二種類以上の抗精神病薬を継続的に投与してはならない。 認知症による行動と心理的な症状の治療として、抗精神病薬を第一選択としてはならない。 成人の不眠症に対し、最初の治療介入として抗精神病薬を継続的に処方してはならない。 児童と青年に対して精神障害でないのならば、最初の治療介入として抗精神病薬を継続的に処方してはならない。 アメリカ頭痛学会(英語版) 片頭痛の基準を満たすが容態が安定している患者に対し、神経画像研究は不要である。 頭痛に対し、MRI撮影が可能な状況であれば、緊急時を除いてCT撮影は不要である 臨床試験でないのであれば、片頭痛トリガーポイントへの外科的非活性化処置は推奨しない。 再発性の頭痛に対して、オピオイドやブタルビタールの処方は、最終手段である場合を除いて行わない。 頭痛に対し、OTC鎮痛薬を長期・頻繁に用いることは推奨できない(薬物乱用頭痛)。 アメリカ腎臓学会(英語版) 徴候や症状のない平均余命の少ない患者に対し、ルーチン的がん検査は不要である。 高血圧・心臓病・慢性腎臓病(CKD, 糖尿病を含む)の患者に対し、NSAIDsの処方は避けるべきである。 アメリカ睡眠学会(英語版) 合併型の睡眠障害でないのなら、慢性不眠患者への睡眠ポリフラフ検査は避けるべきである。 成人の慢性不眠症に対して睡眠薬使用を中心とした治療は避けるべきである。代わりに認知行動療法を勧め、必要なら補助療法を検討する。 児童の不眠に対し医薬品を処方してはならない。たいてい親子関係が理由であるため、行動療法的に介入する。 むずむず脚症候群の診断に対し睡眠ポリグラフ検査をしてはならない。病歴があいまいであり、周期的な脚の動きがあることを文章記録する必要がある場合は例外とする。 体重が安定した睡眠時無呼吸患者に対し、無症候性、接着性であるならば、陽圧気道療法の滴定研究を行ってはならない。 米国カイロプラクティック協会(英語版) レッドフラッグがない発症から6週間以内の急性腰痛患者に脊椎画像の検査は行わない。 患者の改善を観察するために繰り返し画像検査は行わない。 能動的治療の目標設定なしに、腰痛障害に対して受動的もしくは軽減目的の物理療法機器の長期的な使用を避ける。 心理社会的スクリーニングもしくは評価なしに長期的な疼痛マネジメントを提供しない。 長期治療や腰痛予防を目的に腰痛サポーターやベルトを処方しない。
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