エンキドゥとギルガメシュ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 05:52 UTC 版)
「エンキドゥ」の記事における「エンキドゥとギルガメシュ」の解説
「ギルガメシュ」も参照 エンキドゥはギルガメシュと共に冒険へ行き、戦い、床を共にする。外見的特徴としてエンキドゥは女のように長い髪を持ち、ギルガメシュと双子のように似ていたが、エンキドゥの方が小柄であった。エンキドゥは友人のために心を砕く性格であり、常にギルガメシュの気持ちを楽にし、死してもなおギルガメシュの愛する存在として描かれる。後述するフンババとの戦いではシャーマンのような変性意識状態になれる資質も見られる。エンキドゥは夢見と夢解きの力を有していたが、彼自身の見た夢は自身の理不尽な末路を予見するものだった。実在した可能性のあるギルガメシュに対し、エンキドゥは定かではない。 二人には様々な関係性が含まれるが、いかなる繋がりであったとしても、2人1組の半身として描写されることが多いのが彼らの特徴である。物語において記録されている最古のサイドキック(相棒)はエンキドゥである。ギルガメシュとの関係性が親友として描かれるようになったのは、粘土板の翻訳が進むにつれて『ギルガメシュ叙事詩』の内容が改変されていった影響によるものであり、元来その間柄は親友に限ったことではない。時代や書版によっては門番を務める一対の神々(タリメ)であったり、ギルガメシュの奴隷であったり、親友兼助手であったりと様々である。前述のように後世の物語では力比べをして親友になったとあるが、主従関係であったとする場合、そのように至るまでの経緯は明かされていない。 当時の文化的背景に基づけば自然だがエロティックな表現が度々見られることから、ギルガメシュと友人を兼ねた恋人関係であったとか、あるいは義兄弟、一人の人間の多面性を現した「二重身(=ドッペルゲンガー)」であるとする研究もある。エンキドゥはシャムハトと職業を同じくする「神聖男娼(神事を司る男娼)」としてギルガメシュに仕えた従者であり、掛詞を好んだシュメル人文化において、エンキドゥがギルガメシュの夢に星や斧の姿をとってやって来るのはその暗喩とされる。エンキドゥは半神半人のギルガメシュを地上に堕としめ、ギルガメシュを神の子から人間にする堕天使のような役割を持っている。エンキドゥは「戦士(シュメル語で「花婿」とも訳せる。また「死」の掛詞でもある)」のような姿でギルガメシュと出会い、死してからはギルガメシュによって「花嫁」のようにベールをかけられた。 2014年に公刊された新文書は大きな驚きをもたらした。エンキドゥは個人としてのギルガメシュを死後も支え続け、偉大な王の代わりに神殺しの罪を引き受ける役割を持つ。後述のとおりフンババを殺すことにエンキドゥは反対していたが、結局ギルガメシュに協力することになる。遠征では夢解きができない都市育ちのギルガメシュに対して、エンキドゥは夢解きができることも繰り返し示されてゆく。エンキドゥにはシャムハトのようなシャーマン的な資質があり、近未来の予知と解釈もできると考えられる。野人エンキドゥは彼の故郷である自然を捨てるが、人間にもなりきれない。エンキドゥは穢れを引き受けるべき役割とそれによる死の運命を知っていたのであり、ギルガメシュの夢を「フンババの殺害成功」と解いたこともその役割のためであったということである。
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