フンババとの戦い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 07:08 UTC 版)
2人で成し遂げた大きな功業は杉の森への遠征、すなわち森に住む神の使いフンババの征伐である。ウルクでの安楽な生活に退屈したと言うエンキドゥに、ギルガメシュは「レバノン杉の森を切り開き、シャマシュが嫌う全ての悪(=フンババ)を国から追い払い、永遠に我らの名を刻もう」と言って遠征の話を持ち掛ける。これを聞いたエンキドゥの目には涙が溢れ、遠征を強く反対される。ギルガメシュはエンキドゥの涙に驚きながらも心を痛め、土から生まれた彼にも苦しみを感じる心があることに焦りを抱いている。エンキドゥはフンババの「天命」を変えることへの罪悪感と、フンババが「人の恐れ」であることをうったえるが、ギルガメシュは大きく息を吐いた後、エンキドゥに向き直って「自分の後ろについて前へ進めと励ましてくれるだけでよい」と話し、あくまで遠征に行くと言ってエンキドゥを説得する。母ニンスンはシャマシュに「何故あなたは息子の気持ちを動かすのか」などと不平不満を言いつつ、女祭事たちと共に丁寧に祈祷を行い、エンキドゥを養子に迎え入れギルガメッシュの義兄弟とした。 ギルガメシュがフンババ殺害を企てたのは、エンキドゥという友人を得、死すべき存在として後世に名を残そうとしたからである。ところがエンキドゥは最初から、エンリルの「天命」を害することに強い罪悪感があった。エンキドゥとの言い争いは何度か繰り返されるも、最終的には二人揃って杉の森へ赴くこととなる。フンババをよく知るエンキドゥは、レバノン山地に向かう前からフンババの「天命」を変えることに抵抗感があり、自身の恐るべき結末を予感していたはずである。しかし、虚勢をはりながらも悪夢を恐れるギルガメシュを慰めるうち、彼のために自らの手を汚す覚悟を決める。エンキドゥの心のうちは複雑であり、後で下されるであろう罰を恐れ、しかしなるべくなら神々には知られないように、あるいはギルガメシュの武勇伝が成立した後に神々が知るようにと願っていたようである。これによりギルガメシュにとって後のエンキドゥとの別れはよりつらいものになっていく。 シャマシュの加護もあって、無事に凱旋し杉の木を持ち帰ったことをウルクの民たちから称賛されるが、この時のギルガメシュの雄姿に魅せられた愛の女神イシュタルによって、2人の人生は大きく動いていく。
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