インドの言語の概観
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/07 06:13 UTC 版)
インドには、話者数が少ない多数の小言語もあるが、100万人以上の話者を擁する大言語も存在している。また、印欧語族の言語とドラヴィダ語族の言語に加えて、その他に、多数のチベット・ビルマ語派の言語やオーストロ・アジア語族の言語が話されている。アンダマン諸島で話されているアンダマン諸語は、どの語族とも関連性がわかっていない。 系統的に多様である一方、言語類型論的には、インド・アーリア語派の多くとドラヴィダ語族はともに SOV で、後置詞をもち、形容詞や名詞が修飾する名詞に先行するなど、類似した特徴を持っており、ジョーゼフ・グリーンバーグはこれらの言語を日本語などとともに類型23に含めている。 ヒンディー語を筆頭に、ベンガル語、テルグ語、マラーティー語、タミル語、ウルドゥー語、グジャラート語、マラヤーラム語、カンナダ語、オリヤー語、パンジャーブ語、ビハール語、ラージャスターン語、アッサム語、ビリー語、サンタル語、カシミール語などが、比較的話者人口の多い言語である。ただし、ビハール語やラージャスターン語は複数の言語ともみなせる。ベンガル語は隣接するバングラデシュの公用語でもある。 ヒンディー語はインドの 18%の人々の母語であるが、他方、この言語を話す人口はおよそ 30%に達し、更にヒンディー語を十分理解できる人口は、それ以上の数に及ぶ。ウルドゥー語はインドの隣国パキスタンの「国(家)語」(公用語ではなく)でもある。言語学的には、ヒンディー語とウルドゥー語は同じ言語の2つの標準と言える。両者を含む名称として、しばしばヒンドゥスターニー語という言葉を使う。ヒンディー語とウルドゥー語の違いは大きく2点ある。第一に、ヒンディー語がインド系のデーヴァナーガリーで表記されるのに対して、ウルドゥー語はアラビア文字系のウルドゥー文字で表記される。第二に、ニュースや新聞などで公的な場面において、ヒンディー語がサンスクリットに由来する語彙を使うのに対して、ウルドゥー語はペルシア語及びアラビア語起源の単語に多くの語彙を依拠している。もちろん英語起源の語彙も両言語ともに多く用いられる。この2つの言語の間における差異は、イギリスによる植民地統治から独立運動の時期にかけて高まった「ヒンドゥー」/「ムスリム」という対抗意識の中で政治的に作り上げられていった側面が色濃い。 サンスクリットは、文化的に重要な古典語であり、前述の憲法第8付則言語のひとつでもあるものの、日常の会話などではほとんど使用されていない。 英語は、かつてインドがイギリスの植民地であったため、政府行政機構において準公用語の地位を保持しているが、必ずしもインドで(地理的分布としても、階層的分布としても)「広範に」使用されているとは断定しがたい側面もある。1991年に実施された国勢調査の結果では、当時の調査人口の11%が英語を第一、第二、または第三言語として使用していると回答している。 インドでは多くの言語が今なお存在しており、2013年時点で、インド全土で870ほどの言語があるという調査結果もある。しかし、一方で過去50年間で230の言語が消滅したともされる。
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