かがり屋
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/10 07:00 UTC 版)
てまり 神田明神の門前にある女郎宿「かがり屋」で客を取る身。年齢は正縁と同じ18歳。生みの親は知らず、12歳で養い親によって湯島の岡場所に売られ、その後、御箪笥町、かがり屋と転売されて、そのたびに負債の額が膨らんでいった。武家出身のおみのが女郎としてがんばっているということが、自身の支えになっており、そのおみのの願いを叶えるため、三昧聖を呼びにやって来た。 古物商の菊次に身請けの約束と、その証として鼈甲の櫛をもらっており、菊次が上方への仕入れ旅から帰るのを待っている。 御箪笥町時代の馴染みだった万蔵が死んだ事件の犯人として、卯之吉に捕縛されたが、正縁が同心の新藤と話をつけて釈放された。 おみのが死んだ後、正縁が彼女の告白については何も語らず、偽物の櫛もおみのの副葬品として焼けてしまったため、てまりは菊次の嘘も、彼がすでに死んでいることも知らない。 文化3年の大火で被災し、記憶を失って行き倒れていたところを、数珠師の与一郎に助けられた。認知症が進んだ与一郎の母富路が、彼女を死んだ嫁、香弥と間違えるようになったため、香弥として留まり、富路の看病を献身的に行なった。修復が完了した数珠を届けに青泉寺に来た際、正縁が女郎を湯灌している場面を目撃する。それで忘れていた過去を思い出した。 女郎の自分が元侍である与一郎の家に留まることはできないと考え、与一郎と富路に事情を説明したが、話が理解できない富路に必死で止められ、来年ふたり静の花が咲くまで留まらせて欲しいと与一郎に願う。 富路が臨終の際、香弥の死について与一郎と富路がどれほど苦悩してきたかを知ったてまりは、許しを請う富路の手を何度も頬ずりし、香弥の代わりに許しを与えた。 富路の火葬が終わって寺を去る際、正念に与一郎を頼む。それがおそらく富路の願いでもあると言われ、「はい」と応える。 おみの てまりが慕っている姉さん女郎。22歳。かがり屋に負債は残っておらず、近くの長屋から通いで女郎をしていた。長屋のご近所さんたちとも良い関係を築いている。 ある夜、井戸端で水浴びをしてから寝込むようになり、医者に心臓の病だと診断された。虫の息で、死んだら下落合の三昧聖に湯灌されたいと繰り返すため、てまりが青泉寺を訪問することとなった。 周囲には、自分は元々武家の娘で、父が仇討ちを果たせないまま死んだため、身を売らなければならなくなったと語っていたが、実際は百姓の娘。親に深谷宿の岡場所に売られたが、そこで武家の娘だったおみのという女郎と出会って仲良くなった。しかし、本物のおみのは胸の病で死んでしまう。その後、ある男の誘いに乗って足抜け(脱走)をしたが、その男が自分を吉原に転売するつもりだということを知って逃げ出し、神田明神界隈に流れ着いた。そして、武家出身のおみのと名乗ってかがり屋で働くようになった。 正縁が万蔵殺しの探索に協力したという話を聞くと、正縁を誘導して、菊次が犯人であることに気づかせ、それを新藤同心に伝えさせるようにした。そして、正縁の前で自ら樒の毒を飲み、自分が武家娘でないことと、てまりを守るために菊次を殺したことを告白して死んだ。 女将 かがり屋の女将。てまりがおみののために三昧聖に会いに行くことを許し、正縁たちがおみのの湯灌をすることも許した。また、正縁が薬種店の前で逡巡していると、一緒に入ってくれた。その一方で、湯灌の費用は1文も払わないと言ったり、自分から正縁を団子屋に誘っておきながら、代金を正縁に払わせたりもした。てまりは女将のことを「口煩いし強欲だけど、人でなしじゃない」と評したが、正縁も納得する。 文化3年の大火で被災し、抱え女郎のおのぶと共に火に巻き込まれたが、生死は不明。 おのぶ、ひさえ いずれも、てまりの姉さん女郎。てまり同様、おみのの体調を心配している。 文化3年の大火で被災し、おのぶは女将と共に火に巻き込まれて生死不明。ひさえはてまりと共に無事だったが、その後の消息は不明。
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