『残酷の第2段階』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 20:06 UTC 版)
原題は"Second stage of cruelty"。第2プレートでは、ロンドンの弁護士たちが共同で入居していた法学予備院(英語版)セイヴィーズ・イン(英語版)の門を舞台とするが、この場所は皮肉を込めて「泥棒宿場の門」(英: Thieves Inn Gate)と書かれることもあった。トム・ネロは成長して辻馬車の馭者(英語版)となり、学生の頃の娯楽めいた残酷さは、職業持ちの専門的なそれへと変化していた。トムの馬は長年の虐待と酷使に消耗しきって、脚を折って馬車をひっくり返し、倒れ込んでしまった。トムは馬の痛みなど気にせず、馬の目が飛び出る程、怒りに任せて打ち付けている。ホガースは風刺的に、4人の太った法廷弁護士が馬車からもがき出ようとする様子を滑稽に描いている。彼らは高名な法学者の風刺画と考えられるが、ホガースはその名前を明らかにしておらず、現在でもモデルは分かっていない。画面中では他にも動物虐待が行われており、例えば家畜商はヒツジを殴り殺しているし、後ろではロバが明らかに重すぎる荷物を背負って歩かされているほか、牛攻め(英語版)も行われている。この絵の下に付けられた警句は次の通りである。 The generous Steed in hoary Age,Subdu'd by Labour lies; And mourns a cruel Master's rage,While Nature Strength denies. The tender Lamb o'er drove and faint,Amidst expiring Throws;Bleats forth it's innocent complaintAnd dies beneath the Blows. Inhuman Wretch! say whence proceedsThis coward Cruelty?What Int'rest springs from barb'rous deeds?What Joy from Misery? かつて気高かった馬は、労苦に服従させられ横たわっているそして残酷な使役者の怒りを悲しみ、自然の力を否定している。 優しい羊は走らされて弱ってしまい、途中で力を失った無垢な訴えを鳴いて表し殴打の下で息絶えた 冷酷な悪党め! 言うがいい、いったいなぜ続くのか、このような小心者の無慈悲が?むごたらしい振る舞いからどんな喜びが湧き出るのか?不幸からどんな喜びを得られるのか? この絵の残酷さには、人間の虐待も含まれている。4輪荷馬車(英語版)は荷馬車屋(英語版)が眠り呆けている間に、遊んでいる子どもを轢(ひ)いており、荷馬車屋は子どもの怪我にも、運ぶ樽からビールが漏れ出ていることにも気付いていない。後ろにある広告ポスターでは闘鶏とボクシング戦が宣伝されており、画題となっている人々が残酷な娯楽としてこれらを好んでいることを更に裏付ける。ボクシング戦はブラウトンの円形闘技場(英: Broughton's Amphitheatre)で開催されるとあるが、これは「拳闘の父」(英: "father of pugilism")ことジャック・ブラウトン(英語版)によって設立された悪名高い無法劇場で、当時の文書には、出場者が左足を床に括り付けられた状態で戦いに挑み、最も出血傷が少なかったものが勝者と認められたと書かれている。宣伝されているボクシング戦にはジェームズ・フィールド(英語版)のものがあるが、彼はこの連作が出版される2週間前に絞首刑となった人物で、第4枚目にも名前が登場する。もう1人の参加者は、ジョージ・"バーバー"・テイラー(英: George "the Barber" Taylor)だが、彼はイングランドチャンピオンになったものの、ブラウトンに負けて1750年に引退した人物である。テイラーが1757年に死んだ時、ホガースは彼が死神を打ち負かすスケッチを数枚手掛けたが、これは彼の墓用だったと考えられている。 ヴェルナー・ブッシュ(独: Werner Busch)は、この作品の構成が、レンブラントが1626年に描いた『バラムとロバ(英語版)』"Balaam and the Ass"に影響を受けていると指摘している。 第1プレートを繰り返すように、絵の中には虐待される馬の幸福を気に掛ける人物がひとりだけ描かれている。ネロの左側には、ほとんど姿が隠れているが、ネロを通報するため、彼の辻馬車番号を書き留める男の姿が描かれている。
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