『朝日新聞』論壇時評
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三島由紀夫は、『中央公論』1968年7月号で70枚の論文「文化防衛論」を発表したが、小汀利得との対談で以下のように述べている。 読売新聞と東京新聞は、それぞれ林房雄さん、林健太郎さんが文壇時評をやっておられるからいろいろ親切に採り上げてくださる。見ようによっては親切すぎるわけですね。ところが朝日、毎日は一行も取扱わなかった。黙殺です。朝日は長洲一二さんがやっていますが一行もとりあげないし、毎日は社内記者がやっていますが、やはり一行もふれない。そうすると、一つの現象があって、この目鼻立ちがいいか悪いかわかりませんが、そこに人間がいることは確かなんですね。それを黙殺するということは、たぶんに意識的だ。意識的な態度にちがいないと思うのは、あるいは私のウヌボレかも知れません。その辺が、こっちがウヌボレで、つまり偏向だという場合と、それから実際に偏向である場合の区別がつけにくいんですね。これは実にむずかしい。私がそんなことをいうと、「あの野郎はつまらんものを書きやがって、ウヌボレやがって、とり上げられないのは当たり前だ」ということになる。じゃ第三者から見た場合はどうかというと、その第三者の中に右も左もいる。いいという奴と、黙殺するのが当然という奴がいるかもしれない。第三者だって公平とはいえない。言論の偏向ということは実にむずかしい。 — 『尚武のこころ』p4-p5「天に代わりて」 辻村明による『朝日新聞』論壇時評(1951年10月〜1980年12月)の量的分析は以下のようになる。 雑誌別言及頻度 『世界』1390 『中央公論』1072 『朝日ジャーナル』(注:1959年3月15日号創刊)556 『文藝春秋』467 否定的に取り上げらた割合 『改造』19% 『自由』15% 『文藝春秋』13% 『中央公論』10% 『世界』5% 『朝日新聞』論壇時評において『中央公論』は多く取り上げられているが、否定的に取り上げられるケースが多く、辻村明は以下のように評している。 『中公』も現実主義路線として批判されることが多かったので、このような悪い評価が比較的高くなるのであるが、『文春』『自由』となると、反左翼的、あるいは右翼反動的な雑誌として、悪い評価が一層高くなっている。『自由』が目の仇にされている様子が窺われる。(中略)『諸君!』『正論』も『自由』とほぼ同じ傾向の雑誌であり、ほとんど論壇時評にとりあげられないが、(中略)編集方針が論壇時評の担当者の意に添わないことの結果でもあろう。それはやはり比較的若い『現代の芽』や『現代の理論』がベストテンに入っていることと対照的である。 — 「朝日新聞の仮面」『諸君!』1982年1月号 1981年1月(高畠通敏)〜2009年2月(松原隆一郎)まで論壇時評者14人の言及した上位15誌は以下となる。 朝日新聞論壇時評言及頻度(1981年1月〜2009年2月)順位雑誌名総数肯定的言及否定的言及1世界 460 93.7% 6.3% 2中央公論 355 85.6% 14.4% 3エコノミスト 222 95.5% 4.5% 4文藝春秋 143 90.2% 9.8% 5朝日ジャーナル 91 98.9% 1.1% 6Voice 80 86.3% 13.8% 6諸君! 80 82.5% 17.5% 8論座 73 89.0% 11.0% 9現代思想 51 94.1% 5.9% 9週刊東洋経済 51 92.2% 7.8% 11月刊現代 46 93.5% 6.5% 12月刊Asahi 39 94.9% 5.1% 13アスティオン 34 97.1% 2.9% 13潮 34 85.3% 14.7% 15正論 33 84.8% 15.2% 相変わらず、『世界』と『中央公論』が多く取り上げられており、論壇時評者14人のうち9人が最も多く言及したのは『世界』であり、残りの論壇時評者の多くは『中央公論』を最も多く言及したが、その場合は『世界』の言及頻度は2位となる。
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