『サンゲ・サブール ― 忍耐の石』とは? わかりやすく解説

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『サンゲ・サブール ― 忍耐の石』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/11 15:31 UTC 版)

アティーク・ラヒーミー」の記事における「『サンゲ・サブール ― 忍耐の石』」の解説

第二作『数千の夢と恐怖の家』と第三作『空想的回帰はいずれパシュトー語執筆され、それぞれ2002年2005年フランス語版出版された。2008年発表された『サンゲ・サブール ― 忍耐の石』は、ラヒーミーが初め最初からフランス語執筆した作品であり、同年ゴンクール賞受賞した。さらに、2013年映画化されゴルシフテ・ファラハニ主演)、同年サン=ジャン=ド=リュズ国際映画祭フランス語版)で最優秀作品賞監督賞を受賞したほか、フランス各地行われた複数映画祭ノミネートされた。 「サンゲ・サブール」はペルシア語で「忍耐の石」を表わすペルシア神話では、この黒い石向かって他人に言えない苦しみ悲しみ打ち明けると、石はこれに忍耐強く耳を傾け、その言葉秘密吸い取ってくれる、そして、この石がある日粉々に打ち砕ける、その瞬間語り手苦しみから解放されるという。小説『サンゲ・サブール』では、戦場での乱闘撃たれ植物状態となって戻ったに対して、女がこれまで耐え忍んできた苦しみ恨み次々とぶつける。身内本人残虐行為裏切り欲望不義強姦と、その語りあまりにも露骨で、グロテスクであり、語る女自身がやがて半狂乱に陥っていく。 この作品には、「夫に惨殺されアフガン女性詩人N. Aの思い出のために書かれたこの物語をM. Dに捧げる」、アントナン・アルトー言葉身体から、身体通して身体とともに身体始まり身体に終わる」、そして「アフガニスタンのどこか、または別のどこかで」という3つのエピグラフがある。「夫に惨殺されアフガン女性詩人N. A」とは25歳アフガニスタン女性詩人ナディア・アンジュマンのことであり、ラヒーミーは2005年11月1日韓国の映画祭に招かれたときにこの知らせを受け、3週間後にアフガニスタン調査開始した血管ガソリン注入して自殺図った夫に刑務所病院会ったとき、「私が女性だったら、この男の傍にずっといて、この男に何もかもぶつけただろう」と思った、そしてこれが『サンゲ・サブール』を書くきっかけになったという。ヌーヴェルヴァーグ映画作家の「精神的父親」として知られる映画批評家アンドレ・バザンの「映画世界開かれた窓であり、我々のまなざし代わりである」という言葉映画制作方向性見出したというラヒーミーは、「アフガン文化においては、主体存在しない、見る者は存在しないまなざし存在しない。見る者の意識存在しないからである」とし、『サンゲ・サブール』では、主体としての女性身体としての女性、見る者としての女性、そして女性の「まなざし」を通して見る世界描こうとしたという。 アフガン女性抑圧されていると言われる確かに社会から咎められたり禁止受けたりしているが、他の女性同様に1つ身体であり、この身体には欲望があり、夢があり、幻想がある。(中略外の世界ブルカ着ている女性シルエットにすぎず、他の女性区別がつかないが、内の世界ではブルカ脱ぎ、そして自由に語るのだ。 ラヒーミーはまた、フランス語書いた理由について、母国語では「口にすべきではない言葉内在化し、無意識のうちにそういった言葉を口にするのを自らに禁じてしまう」、すなわち、自己検閲してしまうのに対してフランス語なら「登場人物内面入っていくことができるし、身体について語ることができる」、母国語以外の言葉で書くのは解放であり、喜びであると説明している。

※この「『サンゲ・サブール ― 忍耐の石』」の解説は、「アティーク・ラヒーミー」の解説の一部です。
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