《聞く》の謙譲語
「聞く」の敬語表現
自分自身が「聞く」という行為を目上の相手に対して伝えたい時に、「聞く」をそのまま使うのは敬語として不適切です。「聞きます」「聞いています」などの丁寧語にかえても、相手に十分な敬意を示すことはできず、目上の人にとって失礼な表現にあたります。そこで、目上の人に「聞く」と言いたい時には、相手にしっかりと敬意を表すことができる謙譲語に置き換えることが必要です。「聞く」という言葉を使って正しい敬語表現に言い換えたい場合には、付け足し型の謙譲語である「お〜する」を使った「お聞きする」が適切です。やわらかい印象を与えるのと同時に、謙譲語によって自分の動作をへりくだることで、目上の相手を立てることができます。
また、「聞く」を全く別の言葉に言い換える謙譲語としては、「伺う」が一般的です。「伺う」には「目上の人の意見や指図(さしず)を得る」という意味があり、「伺います」「伺いましょうか」というように丁寧な表現にすることもできます。会話や文章にも多用される便利な言い回しで、ビジネスシーンにおいても問題なく使える敬語表現です。
「聞く」の敬語の最上級の表現
「聞く」の敬語には、「拝聴する」「拝聞する」という堅い表現もあります。「拝聴」「拝聞」は、いずれも「謹んで聞くこと」や「ありがたく聞くこと」を意味する謙譲語で、「拝聴する」「拝聞する」という改まったフレーズを用いることで、目上の相手に最上級の高い敬意を示すことが可能です。ただし、「拝聞する」は、意見、演説、講話など人の話を聞くことに限定して使われるのに対して、「拝聴する」は、人の話以外に、歌唱や音楽の演奏などを聞く場合にも幅広く使うことができるという違いがあります。日常ではあまり耳にしないかしこまった表現なので、会話の中で用いるよりも、ビジネスメールや手紙などの書き言葉として使うのに適していると言えるでしょう。「聞く」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「御社の本店が移転するとお聞きしました」「昨日はたいへん貴重なお話をお聞きすることができました。誠にありがとうございます」
「ご住所を伺うのを失念してしまい、たいへん申し訳ございません」
「お手数ですが、ご連絡いただいた案件の詳しい内容について、伺いたく存じます」
「先日の企画についてのお考えを拝聴したいと思っております。よろしくお願いいたします」
「明日のコンサートで、演奏を拝聴するのを楽しみにしております」
「この度の会合に参加させていただいたことで、たくさんの有益なお話を拝聞することができ、感謝の念に堪えません」
「先生のご評判はあちこちで拝聞しています」
「聞く」を上司に伝える際の敬語表現
上司に「聞く」と言いたい場合には、「お聞きする」「伺う」などの謙譲語表現が妥当です。日頃から親しみを持ってラフに接してくれる上司であっても、ビジネスシーンにおいて「聞きたいです」「聞きました」などの表現は控えるようにしましょう。一方で、上司との良好な関係を保つためには、形式的な敬語に拘らずに、状況や目的に合わせた柔軟な言い換え表現でコミュニケーションを取ることも大切です。例えば、「お聞きしたい」「伺いたい」と伝える時には、「今、お聞きしてもよろしいでしょうか」「ご意見を伺いたいのですが、お時間いただけますか」と丁寧な疑問形すると、上司に考える猶予を与えることになり、謙虚な姿勢も示せます。また、「わかっている」と伝えたい場面では、シチュエーションに応じて「承っています」「承知しました」「かしこまりました」などの別の謙譲語を使っても問題ありません。適切な敬語を使って円滑に意思疎通を図ることは、業務のスムーズな進行にもつながり、上司にも好印象を与えることができるでしょう。
「聞く」の敬語での誤用表現・注意事項
「伺う」を丁寧に言い換える時に「伺わせていただく」「お伺いする」と表現するのは、文法的に誤りです。「伺う」が謙譲語であるため、「〜させていただく」や「お〜する」という謙譲語と組み合わせることで、二重敬語となってしまいます。同じく、「拝聴する」「拝聞する」を「拝聴いたします」「拝聞いたします」とするのも、謙譲語+謙譲語の二重敬語で不適切とされています。二重敬語は、特に違和感を感じないという人も多いですが、受け取る側で判断が分かれるため、念のためビジネスシーンにおいては使わないようにするのが無難です。そのほかの誤用が多い敬語表現としては、「弊社へ伺ってくださいますか」「講演を拝聴されましたか」など、目上の人の行為に謙譲語を使ってしまうケースがあります。謙譲語は、自分自身の動作をへりくだる時に用いるという原則を忘れずに、誤って敬う相手の動作に使わないよう注意が必要です。普段は正しく使えていても、緊張で焦って言い間違えることもあるので、落ち着いて正しい敬語表現を心掛けましょう。
「聞く」の敬語での言い換え表現
伺う伺います
伺いたいと思います
伺っています
伺いましょうか
伺えますか
伺いました
たしかに伺いました
伺いたく存じます
お聞きする
お聞きすることができる
お聞きします
お聞きした
お聞きできた
お聞きしたいと思います
お聞きしています
お聞きしましょうか
お聞きしますか
お聞きしました
お聞きしてもよろしいでしょうか
たしかにお聞きしました
お聞きしたく存じます
拝聴する
拝聴します
拝聴できる
拝聴できました
拝聴したいと思います
拝聴しています
拝聴しました
たしかに拝聴しました
拝聴してもよろしいでしょうか
拝聞する
拝聞します
拝聞できる
拝聞できました
拝聞したいと思います
拝聞しています
拝聞しました
たしかに拝聞しました
拝聞してもよろしいでしょうか
《聞く》の謙譲語
「聞く」の謙譲語表現
「聞く」の謙譲語には様々な表現方法がありますが、代表的なものとして「伺う」・「拝聴する」があります。「伺う」は、「~を伺う」・「~から伺う」などの用法で、聞く対象に対して敬意を表します。また「伺う」は「行く」・「来る」・「尋ねる」の謙譲語表現でもあります。より丁寧な表現に「お伺いします」があります。「拝聴する」は敬語表現の中でも、会話の話し相手に対して敬意を表する丁重語に分類されます。やや硬い表現で、ビジネスの場での会話よりも文書で用いられることが多いです。丁寧な表現に「拝聴しております」があります。「聞く」の謙譲語での誤用表現・注意事項
まず敬語を重複して使う二重敬語は誤用表現です。「伺う」の場合は「お伺いいたします」、「拝聴する」の場合は「ご拝聴する」・「拝聴させていただく」がよく見られる誤用表現となります。また「伺う」は自分がへりくだり、聞く対象に敬意を表して相手の地位を高める謙譲語です。「母から伺っています」・「同僚の山田から伺っています」のように、自分の身内や自分に近い人に対して使うのは誤用表現になります。身内や同僚は地位を高める対象ではないからです。また「伺う」と「拝聴する」の使い分けにも注意が必要です。「伺う」は聞く対象を、「拝聴する」は話し相手を高めます。「明日、先生の話を伺います」・「明日、先生の話を拝聴します」という例文は両方適切な表現です。しかしながら、前者は「先生」に対して敬意を表しているのに対して、後者は会話している話し相手(先生とは別の人)に対して敬意を表しています。したがって敬意を表する相手に応じて使い分けるのが適切です。「聞く」の謙譲語での言い換え表現
「聞く」の謙譲語には他にも言い換え表現があります。「お聞きする」は「伺う」・「拝聴する」の両方から言い換えが可能です。使い分けに自信がない場合は「お聞きする」を用いるのが無難です。ただし「お聞きになる」は尊敬語です。「承る」は「拝聴する」の言い換え表現ですが「引き受ける」の意味も含んでいます。「拝聞する」・「謹聴する」・「謹んで聞く」は「拝聴する」を更に丁寧な表現にしたものです。最上級の敬意表現ですが、堅苦しい印象を与えるため適切な状況で用いることを推奨します。「清聴する」は「拝聴する」に似ていますが、「清聴する」は自分の話を相手が聞いてくれた状況(「ご清聴ありがとうございます」)で使います。したがって「清聴する」は「聞く」の尊敬語であり、謙譲語ではありません。- 《聞く》の謙譲語のページへのリンク