《引き受ける》の敬語
「引き受ける」の敬語表現
「引き受ける」の敬語表現は、「お引き受けする」です。一般的には、さらに丁寧な言い回しとして「お引き受けします」「お引き受けいたします」といった形で使われます。なお、目上の相手が「引き受ける」場合には「お引き受けいただく」「お引き受けくださる」といった表現になります。「引き受ける」の敬語の最上級の表現
「引き受ける」の敬語の最上級は、「お受けいたします」です。これは美化語である「お引き受け」に、謙譲語の「いたす」を加えた表現です。さらに丁寧な言い方をするなら「つつしんでお受けいたします」との形になります。ただし、「つつしんで」「お受けいたします」は両方とも、日常的に使う言葉ではありません。かなり公的で、特別な場面でなければ用いる機会は少ない言い回しです。なお、相手が「引き受ける」場合の最上級は「お引き受けたまわる」です。「お引き受け」という美化語に、「たまわる」という尊敬語がつながることで、かなり強い敬意を表現しています。ただし、この言葉も日常的に使う類のものではありません。非常に社会的地位が高かったり、尊敬していたりする相手の行為についてのみ、使用される敬語です。
「引き受ける」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「明日の展示会には、何時頃行かれますか」「A社に行かれる時には、同行いたします」
「来週、出張で大阪にいらっしゃると伺いました」
「本日のパーティーにいらっしゃるのであれば、○○様によろしくお伝えくださいませ」
「次のご旅行は、どちらにおいでになるのでしょうか」
「来週の食事会には、おいでになりますか」
「家元がお出ましになる際には、是非ともお知らせくださいますようお願い申しあげます」
「次回の全社会議には、会長にお出ましいただくことになりますので、何卒よろしくお願いいたします」
「引き受ける」を上司に伝える際の敬語表現
上司は身内の人間ではあるので、敬意を表しつつも、強い敬語表現を使う必然性は薄いといえるでしょう。そのため、相手が主語のときは「お引き受けいただく」を使って問題ありません。また、自分が主語で上司とやりとりしている際には、「お引き受けします」といった表現を使います。そのかわり、相手が重役や社長になれば、強い敬意を表現しなければなりません。その場合は「お引き受けいたします」「お引き受けたまわります」といった、最上級の敬語を使うようにします。「引き受ける」の敬語での誤用表現・注意事項
非常に多い誤用表現が、「謙譲語と尊敬語の取り違え」です。原則的に、謙譲語は主語が自分や身内のときに用いる表現です。それに対し、尊敬語は目上の人間が主語のときに使います。すなわち、「父にお引き受けいただきました」や「お客様がお引き受けいたしました」といった用法は間違いです。また、「お引き受けしてください」「お引き受けしていただく」といった書き方、話し方もしないよう注意しましょう。これらは単に「お引き受けください」「お引き受けいただく」とするのが正解です。「引き受けいたします」「引き受けいただきます」のように、美化語の「お」を省略してしまうのも正しい形とはいえません。「引き受ける」の最初に「お」をつけるからこそ、敬語として成り立ちます。「お」を省いた後に「いたす」や「いただく」を付け加えても、日本語として不自然なので気をつけましょう。
ビジネスシーンでよくある間違いが、「お引き受けいただけますでしょうか」「お引き受けくださいますでしょうか」といった表現です。この場合、「ます」という丁寧語の後に、同じ丁寧語の「でしょうか」が続いています。同じ種類の敬語が連続して使われるのは「二重敬語」といって文法的な過ちです。目上の人に対して「より丁寧な表現を心がけよう」と意識しすぎると、二重敬語は起こります。これらは「お引き受けいただけますか」「お引き受けくださいますか」とするのが正解です。
「引き受ける」の敬語での言い換え表現
「お引き受けする」の類語には「お受けする」があります。両者はほとんど意味が変わりません。「命じられたり、任されたりしたことを受け入れる」という文脈で使われる敬語です。ビジネスシーンや目上の人とのやりとりでも、「お受けする」は使用可能です。また、日本語にはあえて難しい表現を使うことで、特別な敬意を示すという表現もあります。「受諾する」「承知する」「承諾する」といった言葉も、「お引き受けする」の言い換え表現だといえるでしょう。そのほか、「伝えられた意味を理解し、受け入れた」という意味での敬語では「かしこまりました」が日常的に使われてきました。これも「お引き受けする」に近い言葉のひとつです。
《引き受ける》の敬語
「引き受ける」の敬語表現
「引き受ける」という言葉には「応対する」「責任をもって仕事を受け持つ」などの意味があります。日常的には誰かに何かを依頼されて自分が引き受ける場合に使う言葉ですが、自分の方から相手に「引き受けてもらえないか」という気持ちをもって依頼する場合にも用いられる言葉です。敬語表現にする場合には、この二通りのケースで考える必要があるでしょう。まず「引き受ける」主体が自分であるような場合、謙譲表現「お…する」を使って自分を低め、相手を立てる言い方が適当です。「お引き受けします」などがよいでしょう。いっぽう、「引き受ける」主体が相手の場合、敬語表現「お…くださる」を使って行為自体に敬意を込める言い方が適当です。このときは「お引き受けくださる」などといった表現になります。また、謙譲表現で相手を立てる言い方にして「お引き受けいただく」などと表すこともできます。「引き受ける」の敬語での誤用表現・注意事項
「引き受ける」の敬語表現は、言葉の主体が自分なのか相手なのかという視点の違いによって変わるわけですが、尊敬語と謙譲語を混在させてしまって、文法的に誤った表現にならないように注意することが必要です。たとえば「引き受ける」主体が相手の場合、こちらがへりくだって相手を立てるときには「お引き受けいただく」などと言いますが、より丁寧に言おうとするあまり「お引き受けしていただく」というように、「して」を加えてしまうケースがあります。これは自分を主体にする謙譲表現の中に、敬意を示す相手の行為を紛れ込ませることになり、文法が破綻している表現になってしまいます。また「引き受ける」主体が自分のときは「お引き受けします」などとなりますが、よりへりくだった言い方で丁寧さを出そうとして「お引き受けさせていただきます」などとする場合があります。しかし使う場面によってはそれが不適切になることもあるのです。「させていただく」は相手側、または第三者の許可を受けて行う場合、さらにそのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使うことができると定義された言葉です。引き受ける内容が重い責任感や義務感を伴う場合、「お引き受けさせていただく」では、不本意ながらやりましょう、といった皮肉を込めた言い方に捉えられかねない恐れがあります。「引き受ける」を敬語で表現する場合は、このような点に注意しましょう。「引き受ける」の敬語での言い換え表現
「引き受ける」の敬語表現をほかの言い方に換えるとすれば、「承る」「承知する」「お受けする」「ご快諾いただく」などを挙げることができます。自分に向けて依頼されたことを引き受ける際には一般的に「承りました」「承知しました」などと返します。「お受けします」は、二者択一の意向を打診され、受け入れた場合の回答などに使われる言い方です。「ご快諾いただく」は「引き受ける」主体が相手の場合に使い、謙譲表現で敬意を表した表現となります。- 《引き受ける》の敬語のページへのリンク