《引き取る》の敬語
「引き取る」の敬語表現
「引き取る」を敬語で表現する場合、動作の主体が相手か自分かで表現が変わります。動作の主体が相手になる場合は、「お引き取りになる」という尊敬語としての表現が適切です。「引き取る」という動詞に、に尊敬語としての「お~になる」という表現を付け足して語形変化させた表現であり、動作の主体となる相手を敬うニュアンスが追加されます。同様に尊敬語としての語形変化を行った「引き取られる」という表現もありますが、受動態としての語形変化も「引き取られる」となりますので、混同を避けるためにも文脈上不自然にならない範囲で「お引き取りになる」を使う方が良いでしょう。一方、動作の主体が自分になる場合は、「お引き取り致します」あるいは「お引き取り申し上げる」といった謙譲語としての表現を使用します。「お~致す」「お~申し上げる」は謙譲語としての語形変化です。「お引き取りする」も謙譲語の表現として問題はありませんが、やや丁寧さに欠けるとみなす向きもあるため、「お引き取り致します」とするのが無難でしょう。
例外的に、動作を行うのが相手でありながら、「お引き取りいただく」という謙譲語表現を用いるパターンがある点に注意しましょう。「もらう」の謙譲語「いただく」が末尾につくことで、相手に「引き取ってもらう」という受け身の表現となります。引き取るという動作自体は相手が行いますが、引き取って「もらう」のは自分側になりますから、謙譲語を使用するのが相応しいのです。
「引き取る」の敬語の最上級の表現
「引き取る」の敬語表現で最上級の敬意を示す場合、尊敬語では「お引き取りになります」、謙譲語では「お引き取り申し上げます」となるでしょう。いずれも「尊敬語+丁寧語」もしくは「謙譲語+丁寧語」の形となり、最上級の敬意を表現する形となります。特に謙譲語の場合は、「お引き取り致します」よりも「お引き取り申し上げます」の方が敬意のニュアンスが強く出ています。「お引き取り申し上げます」が二重敬語であるとみなす意見も散見されますが、「お」は丁寧語としての接頭辞であり、「申し上げる」は謙譲語です。二重敬語は「尊敬語+尊敬語」、「謙譲語+謙譲語」のケースを指すため、「謙譲語+丁寧語」である「お引き取り申し上げます」には該当しません。
「引き取る」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「引き取る」の敬語表現をビジネスメールや手紙で使用する場合は、動作の主体が自分になるか相手になるかを見極める必要があります。相手が物品などを引き取る際には「先日○○様がお引き取りになった資料につきまして」などのように尊敬語の表現を使用します。「本日、○○様が荷物をお引き取りいただけたようで何よりでございます」のように、受け身としての謙譲語表現を使用しても問題ありません。一方で自分が引き取る側の場合は、「本件、当方でお引き取り申し上げます」「先日御社より送っていただいた荷物につきまして、先程当社の者がお引き取り致しました」のように謙譲語の表現を用います。「誰が」「何を」引き取ったかを明確にすると、間違えることはないでしょう。これは尊敬語の表現を用いるケースでも同じことが言えます。
「引き取る」を上司に伝える際の敬語表現
上司とのやり取りの中で「引き取る」を使う場面としては、物品の引き取りの他に、「担当者が不在、もしくは他に担当者がいるタスクを引き受ける」という意味合いで用いることがあります。例えば、「この作業、誰かやってくれる人はいますか?」と上司が問いかけた際の返答として、「では、その作業は私の方でお引き取り致します」と言うようなケースです。ちなみに、「お引き取り申し上げる」という表現は、上司との口頭でのやり取りの際には敬意のニュアンスが強すぎるため、「お引き取り致します」に留めておくのが良いでしょう。強すぎる敬意のニュアンスを持つ言葉を使ってしまうと、かえって慇懃無礼と捉えられる可能性があるためです。
「引き取る」の敬語での誤用表現・注意事項
「引き取る」の敬語表現の中には、「お引き取りください」というものがあります。これは、物品を引き取って欲しいという意味合いの他に、「出ていって欲しい」という意味も持ちます。「○○をお引き取りください」のように、具体的に何を引き取って欲しいかを省略してしまうと、「出ていってください」の意味と捉えられてしまう可能性があるため、注意しましょう。「お引き取りいただく」と、受け身としての表現を用いる場合も「何を」引き取るのかが無い場合は「出ていってもらう」という意味にとられてしまう恐れがあるため、こちらも注意が必要です。「引き取る」の敬語での言い換え表現
「引き取る」の敬語での言い換え表現としては、相手が引き取る場合「お引き受けになる」「お受け取りになる」などが該当します。いずれも尊敬語としての表現です。また、自分が引き取る場合は「拝領する」「頂戴する」といった謙譲語表現で言い換えることができます。いずれの表現も「差し出された物品等を自分のものにする」という意味を持つため、先述した「お引き取りいただく」などの表現を使用することで意味の誤解を招くケースを避けたい場合などに、言い換えを行うようにするとよいでしょう。- 《引き取る》の敬語のページへのリンク