猟具
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/13 07:50 UTC 版)
現代では鉄砲が使用されるが、明治維新以前は火縄銃が用いられた。鉄砲を意味する「シロビレ」というマタギ言葉もある。このほか槍(タテ)やトリカブトの毒矢を用いた時代もあったと言われる。鉄砲が登場する以前は熊槍と呼ばれる槍を携帯し、これで熊を突き殺して仕留めることもあった。なおアイヌもアマッポ(罠)を見回る際に、護身用として穂先にトリカブトの毒を塗った槍「オプクワ」を携帯していた。 マタギの使用する武器は時代と共に進歩し、明治時代には陸軍払い下げの村田銃、その後はスコープ付きのライフル等どんどん高性能な武器を利用している。しかし、高性能な武器の存在が、集団で狩りを行う必然性をなくし、マタギ文化が衰退した一因ともなっている。古くは、鉄砲に使用される鉛弾や弾薬はマタギたちが自分で調合・作成していた。 その他の持ち物としては、ナガサと呼ばれる独特の形状の山刀を所持した。このナガサは鉈として藪を切り払う他は、料理の時には包丁として使ったり、仕留めた獣の皮を剥ぎ肉を切り分けたりするのにも使用され、いよいよの時は身を守る武器にもなった。このナガサは通常の腰鉈のように木製のハンドルがついたもののほか、鉄を打ち延ばして持ち手の部分を袋状に整形したフクロナガサという一体成型型のものも存在し、ここに棒を差し込んで即席の熊槍として使用することもできた。このナガサは現代に於いても和製サバイバルナイフとして人気があり、アウトドアにも用いられている。 武器以外では、アマブタと呼ばれる編み笠をかぶり、防水・防寒用に犬やカモシカの毛皮をはおった。手袋(テキャシ)もかつては毛皮製であった。穴掘り道具や杖として使う木製のヘラ(オオナギャ、コナギャ)を持ち歩き、冬山ではカンジキを履いた。 その他、ウサギを狩るウサギマタギはワラダと呼ばれる稲藁を編んだものを用いた。ウサギを見つけると、これをフリスビーのように投擲する。その擦過音を猛禽類の羽音と勘違いしたウサギは本能的に身を固くしてじっとしてしまうため、そこを手づかみで捕獲した。 マタギといえばとかく狩猟犬を連れているイメージがあり、マタギ犬と呼ばれる日本犬もいるが、実際のマタギは狩りにあまり犬を用いなかった。これは、マタギの行う狩猟形態が、単独で行われるシノビ猟(獣の足跡を追跡し、仕留める猟)から、多人数で行われる巻狩りに移行したためであると思われる。集団で行う巻狩りのような形態の狩猟においては、クマに対して激しく吠えつく犬の存在はかえって邪魔になったためである。戦前は「地イヌ」と呼ばれる、狩猟犬用として小型の秋田犬がいたが、これは現在知られている大型の秋田犬とは違うとされる。
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