摩擦力 摩擦力の概要

摩擦力

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/10 22:49 UTC 版)

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ざらざらで水平な机の上で、ある質量をもった物体を水平方向に引っ張る場合と、なめらかな氷の上で同様に物体を引っ張る場合とでは、その物体を動かすのに要する力は明らかに異なる。すなわち、氷の上で物体を引っ張ると簡単に物体が動いてしまうのに対して、ざらざらな机の上では物体を引っ張って動かすには、それよりも大きな力が必要である。これは、机の上においた物体の方が、何らかのより大きな力が水平逆向きに働いたからに他ならない。

この様に、質量をもった物体が動いている時、その物体の進行方向と逆向きに働く力を摩擦力(Frictional Force)という。後述の静止摩擦力と区別するために動摩擦力(Dynamic Friction または Kinetic Friction)ともよぶ。動摩擦力は、物体が面を滑る時に働くので、すべり摩擦力(Sliding Friction)と呼ばれる。

また、静止している物体を動かそうとする際に働く摩擦力を静止摩擦力(Static Friction)という。物体の質量が大きい場合、その物体を動かすのにより大きな力を要し、ある限界値以上の力でないと物体は動かない。この物体が静止している限界でかかっている力、すなわち物体が動き出す直前にかかっている力を最大静止摩擦力(最大摩擦力)という。物体がその曲面で転がっている時は静止摩擦力が働いている。それは、接触面に接する線一本一本は面と平行に動いていないからである。つまり、接触面に平行な方向に働く力は、面に接する線が面から離れるまでの一瞬に働き、その瞬間には物体が水平方向に動いていないと考えることができる。この摩擦力を特に転がり摩擦力(Rolling Friction)と呼ばれ、すべり摩擦力と対照的に用いられる。

静止している物体を動かすために斜面を作り、重力を使うことも出来る。このとき物体が動き出す斜面の角度を摩擦角(Friction Angle または Angle of Friction)という。

流体の粘性に起因して生じる力を粘性摩擦力という。これは相対速度に比例した力として定式化されるため、逆に数理モデルにおいて速度に比例する抵抗力のことを指してこう呼ぶ場合もある。詳細は粘度の項を参照。

クーロンの摩擦法則

摩擦係数
coefficient of friction
量記号 μ
次元 無次元量
種類 スカラー
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クーロンの摩擦法則、あるいはアモントン=クーロンの摩擦法則と呼ばれるこの法則は、古くはイタリアのレオナルド・ダ・ヴィンチ、フランスのアモントンそして同じくフランスのクーロンにより繰り返し発見された。ちなみにダ・ヴィンチの発見(牽引実験によるもの)からアモントンの再発見までは約200年、アモントンからクーロンまでは約100年の歳月が流れている。

ダ・ヴィンチとアモントンは、次の二つを発見した。

(1) 摩擦力が垂直荷重に比例する。
(2) 摩擦力が見かけの接触面積によらない。

クーロンはその再確認を行うとともに、さらに次の二つを見出した。

(3) 最大静止摩擦力が動摩擦力よりも大きい。
(したがって、動かし始める力に比べて動かし続ける力は小さくて済む。)
(4) 動摩擦力は速度によらず一定である。

荷重を P比例定数μ とすると、摩擦力 F は次式で表される。

このときの比例定数 μ摩擦係数と呼び、面及び物体の材質や表面状態(凹凸など)によって定まる。なお、この値は動摩擦力と静摩擦力で異なるため、動摩擦係数静摩擦係数とそれぞれ呼ぶ。しかしながら、実際に一定の荷重・速度で摩擦係数の測定を行なっても、摩擦力が数%~数10%は変動する場合もある。いわゆるスティック・スリップ現象という摩擦力が周期的に大きく変動する現象が現れることもある。この摩擦係数が小さいものを自己潤滑性(self-lubricity)があると表現したりもする[1]

摺動する面の面積に摩擦力が無関係なのは、マクロレベルの仕上げでは表面の凹凸があり、原子レベルの相互作用の生じるぐらいの距離に近づく部分(真実接触面積)が極めて限られていて、みかけの接触面積が意味をもたないからであると考えられている。

摩擦力が発生する原因

摩擦力が発生する原因として考えられている一般的なものを次に示す。

  • 2つの面の間の凝着の発生と破壊によるものと、柔らかい材質側を変形させる力によるもの。摩擦係数は、金属どうしで0.4ぐらいであるが、固体潤滑剤二硫化モリブデングラファイト)では、0.2程度まで低下する。固体潤滑剤は、きわめて壊れやすい構造をもった材料であることが、摩擦力の低減に有効である。
  • 物体の凹凸が面の凹凸を乗り越す力によるもの。面の凹凸を乗り越す時に物体を持ち上げるため、摩擦力が垂直抗力に比例する(クーロンの摩擦法則(1)が成り立つ)。また、面の凹凸の大きさやその傾斜の角度が摩擦力に関係する。
  • クーロン力によるもの。物体と面の間に摩擦力が起きるとき、明らかに物体と面は接触している。この物体を構成しているのは何万個もの原子であり、また物体と接触している部分の面も原子で構成されている。これらの物体の原子と面の原子同士がお互いにクーロン力によって引っ張り合う。これが摩擦力及び静止摩擦力を引き起こす原因である。また、物体が動き出すのは、このクーロン力が切れてしまうからである。このことから動いている物体と面の間に働く摩擦力は常に一定だということが分かる。――という見方もあるが、摩擦力がクーロン力のよい事例であるかどうかは疑問である。定性的には、2種類の金属間のいわゆる乾燥摩擦状態での、摩擦係数を比較する実験からは、原子間距離の近い金属の組合せの摩擦係数が大きいなどの結果がある。
  • 近年有力である、さらにナノレベルで真実接触面積に比例するという説。「ナノトライボロジー」を参照。

なお、クーロンの摩擦法則は、現在の科学技術レベルから見ると、「限られた範囲でのみ成立する経験則」と理解するのが無難である。ハードディスクドライブのメディアなど、極端に平滑な表面では上の (2) は成り立たないし、比較的狭い速度範囲でも (4) が成り立たない(従って (1) も成り立たない)のは良く経験される事実である。




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