四斤山砲 四斤山砲の概要

四斤山砲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/24 01:20 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
四斤山砲
種類 山砲
原開発国 フランス
運用史
配備期間 1859年 -
配備先 フランス
日本幕府陸軍薩摩藩大日本帝国陸軍ほか)
関連戦争・紛争 第二次イタリア独立戦争
普仏戦争戊辰戦争
西南戦争,日清戦争ほか
開発史
開発者 ジャン・エルンスト・ライット
開発期間 1859年
製造業者 フランス、日本(関口製造所集成館大阪砲兵工廠ほか)
派生型 長四斤山砲(弥助砲)
諸元
重量 218kg(全備)、100kg(砲身)
銃身 0.96m[1]

口径 86.5mm
砲尾 前装式
反動 駐退機なし
砲架 単脚式
仰角 -9° ~ +16°
初速 237 m/秒(榴弾)
最大射程 2,600m
テンプレートを表示

開発

ライット・システムの砲弾の解説。表面に12個のスタッドがある。

フランス陸軍砲兵士官で外務大臣も務めたジャン・エルンスト・デュコ・ド・ライット(en)のもとで1859年に開発された。ライットが整備した「ライット・システム」と呼ばれる一連のライフル砲体系に属する火砲で、同時に整備された砲として四斤野砲(Canon de campagne de 4 rayé modèle 1858)や12斤カノン砲(1853年型12斤カノン砲のライフル砲改造型)など多種が存在する。なお、幕末の日本では「ナポレオン砲」とも呼ばれたが、“Napoleon cannon”は本来は滑腔式の1853年型12斤カノン砲のことである[4]

ライット体系の火砲が従来のフランス軍火砲と比べて大きく変わった点は、砲身にライフリングが施された点である。六角形のポリゴナルライフリングが使われており、椎実型砲弾(長弾)の側面に埋め込まれた亜鉛製のスタッド(筍翼)と噛み合わさって、発砲時に砲弾に回転を与える仕組みになっている。ライフリングは砲口に近い部分では溝幅にゆとりがもたせてあり、次第に奥に向かうにつれて幅が狭くなるが、一条を除いては若干のゆとりが残るようになっている。この工夫により、砲弾の装填が容易になり、かつ噛み合わせは確かなものとなる効果があった[5]。砲身の製造法は、中身が詰まった状態で鋳造したうえ、内側を切削加工する方式だった。

ライフル砲となったことで、有効射程・命中率が向上するとともに、球形砲弾(円弾)を使用した場合に比べると同口径でも大質量の砲弾を使用できるようになった[6]。例えば、新しい四斤山砲の場合、従来の同口径砲では4リーブル(1リーブルは0.5キログラム弱)の円弾だったのが、4キログラムの長榴弾(全備重量=弾殻+炸薬+信管)を使用可能となっている。弾種は榴弾と榴散弾が用意された。なお、日本語名称の「斤」は、火砲の場合に一般的には弾丸重量をポンド単位で指すが、本砲の場合はフランスで公用されていたメートル法のキログラムを意味する[3]

山砲として設計された本砲は、砲身が短くて射程などは四斤野砲に比べて劣ったものの、軽量で機動性に優れていた。分解すれば馬2頭に駄載することが可能で、山岳地帯での運用に適していた。一方、野砲では馬8頭が牽引に必要だった。

実戦

フランス陸軍に配備された本砲は、1859年の第二次イタリア独立戦争での出兵で、初めて実戦使用された。この戦役でのオーストリア帝国軍との戦闘で、四斤野砲を主力とするライット体系の各砲は優秀な成果を収めた[7]

その後もフランス第二帝政期のフランス陸軍の野戦火砲としてライット体系の各種火砲は使用された。しかし、1870年-1871年の普仏戦争では、プロイセン王国軍のクルップ砲後装式鋳鋼製)に対し発射速度や有効射程で劣ることになり、フランスの敗戦の一因となってしまった。


  1. ^ 幕末軍事史研究会(2008年)、90頁による数値。英語版en:La Hitte systemでは0.82m、0.86mともある。
  2. ^ 読みは、熊本市立熊本博物館公式ウェブサイト展示解説に拠った。
  3. ^ a b c d 幕末軍事史研究会(2008年)、90頁。
  4. ^ 12斤カノン砲装備のナポレオン3世の軍がクリミア戦争で活躍したことに由来。
  5. ^ a b c 幕末軍事史研究会(2008年)、91頁。
  6. ^ “Rifled Ordnance in England and France,” pp. 500-501.
  7. ^ ただし、旧式の12斤カノン砲ライフル改造型は、出動はしたものの発砲はしていない。(“Rifled Ordnance in England and France,” p. 505.)
  8. ^ 靖国神社(2003年)、35頁。
  9. ^ タイムスクープハンター(NHK総合1ch 2013年7月20日放送分「会津 女達の決死行!」番組内説明
  10. ^ 陸軍省 「不用砲払下の件」 アジア歴史資料センター Ref.C04014313700、明治40年12月「壹大日記」(防衛省防衛研究所


「四斤山砲」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「四斤山砲」の関連用語

四斤山砲のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



四斤山砲のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの四斤山砲 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS