便器 便器の概要

便器

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/05/18 08:25 UTC 版)

世界中のあらゆる建築物、住宅や施設の便所に、設計や形態で設置されている。便器の形状や設置の仕方、汚物の処分方法は、使用されているそれぞれの国の人々の生活習慣によって違う。

小用専用の小便器と、大小用兼用の大便器がある。大便器には、トラップとよばれる水たまりを持つ水洗式の便器と、主に汲み取り式として使われる、便器に穴が空いた落下式の便器がある。

水洗式便器は、水道管を便器の給水口に接続して、流水により便器内の排泄物を洗浄する。便器の排水部は、下水道が設置されている地区では下水道に接続し、下水道が設置されていない地区では浄化槽に接続する。

水洗式便器の排水部に接続される下水管は現在は主に硬質塩化ビニル管(VU管)や強化プラスチック管(FRPM管)、ポリエチレン管(PE管)が使用されるが、古くは概ね土管と呼ばれる陶管(セラミック管)や鉛管と接続された。

水洗式便器に使用する洗浄水は上水道の他、一般住宅以外のトイレでは雨水や 井戸水の他、中水道工業用水道などが使用される場合が多い。

便器洗浄水は、殺菌などの水処理を行う必要や濁度の基準はないが、中水道は人体と直接接しない目的や場所でしか用いることが出来ない為に手洗い付洗浄タンクは使用出来ず、密閉タンクやフラッシュバルブが使用される。

小便器

尿石防止の薬剤供給装置サニタイザーが連結された自動フラッシュバルブ内蔵低リップ型小便器 TOTO UFS800系
床置(ストール)、トラップ脱着型フラッシュバルブ式小便器 TOTO U307C

日本にある近代的な陶器製の小便器は、主に男性用で、座らずに用を足す形になっている製品がほとんどである。衛生面から跳ね返り、尿石の付着を防ぐためにトイレボールと呼ばれる洗浄薬剤を排水口付近に置いたり、水洗式小便器上部の給水管に連結した、サニタイザーディスペンサー(薬剤供給装置、Sanitizer dispenser)により薬剤を便器に供給することもある。

古い公共の施設(公園などの公衆便所鉄道駅の構内など)では混雑時に複数人同時に並んで用が足せるように個別でない設備もあり、その場合人の立つ場所が一段高くなって、向かい側の溝に流す形になる[1]。しかし近年は個別の設備が並んで設置されるのがほとんどである。

種類

  • 床置(ストール)型小便器- 縦長の床置型小便器で大型、中型、小型に分類される、公衆便所に並んで設置される場合、ささやかな仕切り板が付けられることがある。 以前の水洗便所用の製品ではトラップがなく、別に地中に埋め込まれた鉛管のトラップと組み合わせて設置される方式であったが、現在の製品は大方が施工が容易な便器作り付けのトラップであり、尿石付着時の清掃を容易にするためにトラップが脱着式になった製品がほとんどである。 また、トラップがない製品は汲み取り便所で使用される場合もある。
  • 壁掛け型小便器 - 戦前からあり、俗に朝顔と呼ばれる楕円形の普及品であったが、最近は、大型、中型の様々な形状の製品が存在する。成人男性の股間の高さに設置されていることが多く、このタイプは子供には使いにくい。このため、低めの高さに設置されたり、踏み台を設けたり、床置(ストール)型小便器と併設されたりすることもある。
  • 低リップ型小便器-壁掛け型と床置(ストール)型の折衷型の小便器で壁掛け型ながら床置(ストール)型同様の縦長の小便器で子どもから大人まで楽に使える形状で床清掃も容易で最近新設や改修されるトイレの小便器の主流になっている小便器。
手洗い付小便器
  • 手洗い付小便器 - 西日本高速道路会社とTOTOの共同開発で低リップストール型小便器の天板に、底に六つの穴があいた手洗い器になっており。蛇口に手をかざすと水が出て、手を洗った水が下の便器まで洗う機能で。壁に赤外線センサーがあって、離れると洗浄水が便器を流れる通常の機能に加えて。手洗いに使った分だけ便器に流れる水量が減る仕組みで、手洗い水を便器の洗浄に再利用する節水機能が評価されエコプロダクツ大賞エコサービス部門の優秀賞を受賞した。
  • 筒型小便器 - 竹筒のような形状の便器で和風の飲食店のトイレで使われることが多く、はね返りと臭気防止のためを投入してある(尿素アンモニアへの酸化分解による臭気発生を低温にすることで防ぐ)場合もある。
  • 省スペース型小便器 - 一般住宅でも取り付けが可能な細身のデザインとなっている。TOTOでは「スリムU」の愛称がある。(ただし、2005年6月に生産終了した。現在では発売されていない)
女性用小便器の一例
  • 女性用小便器(サニスタンド)- アメリカで1930年代に当時は高級品のナイロンストッキングが普及した際、腰掛式では座った際に伝線などの恐れがあったが、中腰ならそれが防げるとして発売された女性の立ち小便用の便器。日本では1951年に東洋陶器(現:TOTO)が製造・販売を開始したが、まだ和服が多く、女性が座らず小用をするとは奇妙な製品だと一般に受け取られ、その結果普及せず、1971年に製造中止となった。なお、1964年東京オリンピックの際には、女子選手用として国立霞ヶ丘陸上競技場内に設置された[2]
  • 幼児用小便器 - ストール型小便器を幼児(男児)が使いやすいようにサイズを小さくしたもの(通常のストール型を幼児用として設置する場合もある)。幼稚園保育所及び公共施設(近年(百貨店ではかなり前から)、母親と共に訪れた幼い男児向けに、このタイプの小便器が女子トイレや多目的トイレに設置されていることが多い)で用いられる。INAX製のものはミニチュア版ストール型小便器といった形だが、TOTO製のものは丸型の独特の形をしている。
  • 壁式小便器 - 公園などの公衆便所鉄道駅の構内など小便器の場合、古い施設では混雑時に複数人同時に並んで用が足せるように、個別に便器が無く、タイルコンクリートの壁、(便器は存在しないが、便宜上「壁式小便器」と呼ばれたりする。タイルやモルタルの壁のみがあり(仕切板が存在する場合もある)、その壁に尿が当たって下の溝に流れる形態である)あるいはFRP製の壁のような便器があり、その場合人の立つ場所が一段高くなって、向かい側の溝に流す形で、水洗式の場合でも、その壁に水を流す管が付いているだけのトイレが多用されていた。しかしこのタイプは水洗式であっても、小便の跳ね返りや尿石からの悪臭やなどの衛生害虫が発生しやすい等、利用者から臭くて不潔な印象としてかなり不評であり、最近は個別に小便器を設置したトイレに改修された場所も多く、急速に減少している。
  • 尿瓶(男性用、女性用)
  • 尿筒(しとづつ)

構造

上部を起点に:上水道管、洗浄用のフラッシュバルブ(センサーやハイタンクによる自動洗浄の場合は水道管のみ)、洗浄水の吐水口、中心部、リム部(排泄時にちょうど尿が当たる部分)、排水口、陶器製のトラップ、配水管、排水管の途中に設けた排水トラップの順番となっている。

一方、壁掛け型小便器は便器本体がボルトやネジで壁に固定されており、便器の下部に排水トラップ部が露出している。

大便器

大便器は大小用に用いられる普通の便器のことであり、しゃがみこみ式(おもに和式・和風)と腰掛式(おもに洋式・洋風)がある。

和風大便器(和式大便器)

ロータンク式和式洗い出し大便器 明治時代の和式大便器(禅寺)
左: ロータンク式和式洗い出し大便器, 右: 明治時代の和式大便器

しゃがみこみ式のひとつで、日本特有の構造であることから通常は和式と称される[3]和便(わべん)または日本式とも言う(韓国など海外では「東洋式」と呼ばれる場合もある)。床に埋め込まれる形で施工される、跨り屈んで使用する大便器。材質は陶器製で、列車用などにはステンレス製、公衆便所などの一部にはFRP製もごく少数ある。便器前部に、金隠しと呼ばれる部分があり、その形状は長らく半円状であったが1990年代頃より台形状にモデルチェンジされたものが殆んどである。 和風便器は平面床に埋め込んで施工される一般の和風便器と和風便器を一段(20〜30cmほど)高くした床に設置し、便器後部を段違い部に張り出させて男子小用を兼ねる和風両用便器(兼用便器、段差式とも呼ばれる)が存在し、後者は小便器の設置空間が取り難い日本の住宅環境もあり、一般住居で広く採用された。

和風水洗便器の給水方式は床上給水式と床下給水式がある。

使用方法
床上給水和風便器 TOTO C755VU

床上給水式は金隠し前上部にある給水口に、タンクからの給水管やフラッシュバルブを直接、接続する方式で、施工が容易なため、隅付ロータンクと組み合わせた和風便器や、戸建住宅に施工されている和風便器のほとんどがこのこの床上給水式が採用される。特に木造住宅の場合床下給水式で施工した場合、給水管と根太が干渉し、根太の下から給水管を通すと給水管にトラップが形成され洗浄機能に著しく影響するために、施工の際、根太を欠き取らねばならないという面倒な施工方法を強いられるために、一般的に木造住宅では床上給水和風便器で施工される。しかし、この床上給水式は給水管が露出するため目障りであり、さらにフラッシュバルブ給水の場合フラッシュバルブの位置が低い位置となることから、操作レバーペダルを足で踏まれて操作されることが多く、故障や汚損の原因になったり、しゃがみこんだ時に給水管が邪魔になったり、不潔なイメージがあるフラッシュバルブを避けて排便位置が後ろよりになりやすく、便器後部のリム部に汚物が付着することがあり、さらに、清掃時に給水管が邪魔になるなど、床上給水式はフラッシュバルブとの組み合わせには機能面・美観面で不利な面がある。

床下給水和風便器 TOTO C755U

床下給水式は給水口が金隠し部の床下にあり、地中に埋め込まれた給水管と接続されるが、地中に埋め込まれた給水管や壁内に配管されている給水管には主に鉛管(便器接続部付近は黄銅管や銅管)を使用するために鉛管を曲げ加工する熟練した職人を要し施工が難しい反面、給水管が露出せずフラッシュバルブを壁や便器から離れた場所、壁内などの自由な場所に設置出来、壁フラッシュバルブの場合、床上給水式とは違い、しゃがんだ時にフラッシュバルブを邪魔にならない位置に設置できることから、排便位置が後ろよりになることも少なく、便器から離れた場所や壁内にフラッシュバルブを設置した場合、和風便器の個室内は便器と壁に取り付けたフラッシュバルブの起動ボタンや起動センサスイッチーのみにすることができ、給水管が全く露出しないトイレにすることも出来るため、清掃面・悪戯防止・施工後の見た目がスッキリしているなど、機能面・美観面で優れているため、デパートホテルオフィスなど非住宅のパブリックな空間で、主にフラッシュバルブとの組み合わせで広く採用されている。

便器内の残水排出中の床下給水和風便器の残水穴部

また床下給水和風便器は、給水口が便器の通水部(リムの下部)より低い場所にあるため、便器内通水路部の残水を排出する排出用の小穴(冬場の残水凍結による破損防止のため)が設けられている。このためにフラッシュバルブが閉止後かつ便器洗浄終了直後は、便器の金隠しの残水穴から、便器内の残水をちょろちょろと排出する姿が見られ、これは床下給水和風便器の特徴となっている。

一般便器では鉢の長さを伸ばして金隠しの高さを低くした(少しでも前方にしゃがませて便器後方リム部への汚物付着防止を図った)エロンゲートタイプが増えている。

和風便器とタンクやフラッシュバルブからの給水管(水道管)の接続にはスパッドとよばれる真鍮製のテーパー状の部品を便器の給水口に組込み接続する。和式便器の給水口内もテーパーになっており、スパッドにはテーパー状になった合成ゴム製のスカートパッキンが付いており、これを便器給水口に挿入し、外パッキンと挟み込み締め付けることにより、完全に半永久的に便器に密着して漏水しないようになっている。スパッドのほとんどは便器の洗浄管(給水管)同様ニッケルメッキされているが、床下給水和風便器用のスパッドは地中に埋め込まれることからメッキなしで真鍮の地肌剥き出しとなっている。

かつて団地などに見られた洋式便器の使い方のステッカー
和風便器埋め込み部に貼られる注意喚起ステッカー

和風便器はコンクリート床に埋め込んで施工されるが、コンクリートの収縮や床のひずみなどによる陶器の破損防止のために陶器とコンクリートが接する埋め戻し部分(リム下部にある通水路部)には緩衝材としてアスファルトが各メーカー出荷時より標準で塗装されている(アスファルト塗装無しは注文生産)。また便器埋め込み部全面をモルタルで埋め込んで施工する場合は便器の埋め込み部全面にアスファルトを塗装する必要がある。和風両用便器等木枠で施工が前提でアスファルト塗装されずに出荷される製品に対してもモルタルで施工する場合等、施工状況によりアスファルト塗装する必要があり、この場合メーカーでは無償でアスファルト塗装に対応している。このためメーカーでは和風便器(両用便器を含む全種の和風便器が対象)の出荷時には埋め込み部にアスファルト塗布を促す注意喚起ステッカーが貼られており和風便器の破損防止を喚起している。

また和風便器の排水口部は便器の排水部を排水管下水管)に直接差し込んで接続する一般型と、便器の排水部にフランジがあり、便器のフランジ部と排水管(下水管)のフランジにガスケットを挿み、繋ぎ合わせて接続するフランジ型がある。

掃除口付き和風便器

和風便器には詰まりが発生した時に容易に異物を取り除けるように掃除口を設けた和風便器がパブリックのトイレを中心に設置されていることが多い。掃除口付き和式便器は便器後方にステンレスの蓋が付いた掃除口があり、掃除口は便器の排水部分に繋がっており異物を簡単に取り除けるようになっている。一部の掃除口付き和風便器は掃除口が便器のボウル部分(便鉢部)にあるものもある。

和風水洗便器初期の頃の製品は便器とトラップが別に作り分けられた分離トラップ式であったが、便器のトラップは組み合わせによって「○穴」と「●穴」の場合があり、、「○穴」は陶器製トラップとの組み合わせ、「●穴」はトラップが鉛管土管・トラップなしの場合であるが、「●穴」の場合の多くは当時排水管は鉛管が多く使われており、その鉛管を職人技で巧みに曲げてトラップを作りこまれ、手作りの鉛管であるので、黒っぽく見えていた。どちらも施工が大変な為、現在はトラップが本体と一体に設けられた物に変わり、これらの初期の和風水洗便器は歴史の古いな建造物の未改修のトイレに僅かに見られる程度となっており、現在は不凍帯にトラップを埋め込む寒冷地仕様の一部や特殊用途以外では生産されなくなった。

幼児用和風便器 TOTO C103

幼稚園、保育園向けにサイズを約80%小さくした幼児用和風便器も存在する。特にTOTOの幼児用和風便器であるC103は金隠しが丸型の一般用旧型和式便器C75(現在は廃番)をミニチュアにした形である。

常時不特定の人が多く使う高速道路サービスエリアパーキングエリアの和風便器は長らく半トラップ式の特殊な便器(TOTOではC183R型便器)が採用されていた。排水口はJ字状で、排水管とは直接結ぶことはできず、傾斜のあるU字溝に流し落とす方法。排水路が短いため詰まり難い構造だが、便器の排水以後の保守点検が必要だった。現在は通常品の掃除口付床下給水和風便器(TOTOではC755CU)が採用されており、改修工事などで半トラップ式の和風便器は急速に減少している。

金隠しが凶器となるおそれがあるため、刑務所用に金隠しのないタイプもある。

便器に直結されているフラッシュバルブや給水管につかんでしゃがみこむとパイプ管を破損する恐れがあるため、列車便所のように便器の前に手すりを設ける場合もある。

洋式への移行

水洗便器の場合、住宅やオフィスの新築・リフォーム用としては洋式型に移行が進み、公共空間でもバリアフリーの観点から洋式の設置が進められている。しかし不特定の人が利用する便座に直接座ることを好まない人もいるため、不特定多数の利用がある公共施設への和式設置を望む声もあり、すべてを洋式にというわけには行かないようである。住宅用では、腰掛便器に改造工事ができるアタッチメント(TOTOの商品名は「スワレット」)もあり、簡単に腰掛式にリフォームできるようになった。

その他のしゃがみこみ式

Squat-toilet-with-tank.jpg

しゃがみこみ式には和式以外にもいくつかの伝統的な様式が存在する。

アラブ式
中東からアフリカにかけてのイスラーム文化圏に多く見られる様式。金隠しがなく、しゃがみこむ際に足を乗せる部分も一体になっている。
トルコ式
アラブ式から発展した形態で、日本では腰掛の「洋式」と区別するため(イスラーム圏の)トルコ式と呼称しているが、実際にはヨーロッパキリスト教圏の国で見られる形態である。
日本においてはこの便器をモチーフにした製品をかつてスターライト販売が生産していた。黒色プラスチック製のたらいに足場を設けたような風貌で、便器全体を洗浄するという非常に画期的な便器であった。かつては国鉄の主要駅や全国の公衆便所で採用されたが、いずれの形式も金隠しがない、ボウル面が狭い、しゃがみこんだ時の足幅が狭いなど、和式ほど洗練されていなかったこと、日本型の水洗便所に適さなかったなど、文化的に受け入れられなかったかったことから現存数は少ない。

腰掛大便器(洋式・洋風大便器)

ウォシュレット一体型便器 『ネオレスト』
日本初の国産サイホンゼット便器C38形。東洋陶器(現:TOTO)が製造した。2013年現在、箱根富士屋ホテルで稼働中。
洋式・洋風大便器のウォシュレット、便器洗浄操作のリモコン制御盤

水洗便所、簡易水洗便所のほか、非水洗にも商品がある。男女大用、女子小用は便座に腰掛け、男子小用は便座を上げ立位で使用する便器で、本体の他、便座、便蓋で構成される。

日本ではペリー来航以来欧米諸国から伝わったため洋式と称するが、しゃがみこみ式に比べ洋式の形態は多様ではなく、ほぼ世界で共通した形式と言える。また西洋でもしゃがみこみ式の便器の採用例は多いが、日本では「洋式」と称した場合この腰掛式を指す。

身体障害者の使用に資する他、快適性の向上を図るため、

  • 便座が電熱機能を持った暖房便座
  • 温水を噴出させ大小用後の洗浄ができる温水洗浄便座(商品名:TOTO「ウォシュレット」、INAX「シャワートイレ」など)が開発され、広く普及している。

和風便器に比べ、使用姿勢の支障のなさや安定性に勝り、生活空間の水まわりにおけるバリアフリー化、ユニバーサルデザイン化の核となる機器であるが、使用時に便座が直接身体に接触することが嫌われるほか、公共便所における清掃性、堅牢性は一般に和式便器の方が高い。洋式に慣れない中高年の一部には、便座を上げて便器の縁に足を乗せ、和式便器と同じ体勢で排便する者も存在する。また、このニーズに応えるために、便器の縁を広くし、足を乗せやすくした洋式便器が中国の一部メーカーで製造されている[4]が、2010年現在ほとんど流通していないという。

近年、さらなる高機能化が進み、便蓋の自動開閉、便器の自動洗浄機能などを搭載する商品も多くなり、電装化の進みつつある製品でもある。

なお、便器鉢部分の前後方向長さから、大きく分けて標準サイズとエロンゲートサイズ(大型)がある。大きさとしては標準サイズが32 - 34cm、エロンゲートが36 - 38cm前後と3 - 4cm程度の差であるが、洗浄方式(下記)においてサイホン式やサイホンゼット式が一般化したことや、便器そのもののサイズがコンパクトになったことから、近年はエロンゲートが主流となっている。また、背の低い子どもでも安心して使えるように高さを低くしたものもある。

片持ち支持方式の洋式便器。
幼児用の便器と通常の便器

身体障害者用として長方形、長円形のものや車椅子で移動しやすいように高さを上げたものも存在する。長方形や長円形のものは前向きに座っても、後向きに跨いでも使用できる。

幼児用として小型サイズのものもあり、幼稚園や保育園、近年では商業施設や公共施設の多目的トイレにも用いられる。これには洋式便器のミニチュア版と細長い長円型があり、後者は前向き、後向きどちらにでも座って(跨いで)使用できる。また、便器の蓋の代わりに幼児用の小さい便座を装備した「親子便座」を設けることも多い。

相撲部屋においては力士の体重に耐えられる大型の洋式便器が設置されている。

洗浄方式

もっとも簡易な普及品なのが洗い出し式、洗い落とし式であるが、構造上の欠点も多く、便器として性能が高いのは快適性や洗浄力を高めるべく開発された、サイホン式、サイホンゼット式である。汚物を水没させて便器の汚れ付着や臭気発散を防ぐ封水(溜まり水)の大きさ、洗浄力や排出力の強さと、背反となる洗浄水量の節減とが特にオイルショックに始まる「省資源時代」の技術的課題である。

在来型の便器は便鉢外周の縁(リム)内に水を流し、その下部に幾つも設けられた孔から便器内に吐水するが、INAX(当時は伊奈製陶)の節水型タンク密結便器「カスカディーナ」以来、洗浄水の水勢を損なわずに効率的に便鉢洗浄する設計とするため縁水路を廃止しノズル吐水を行う構造が改良されてきた。このような構造は最近の家庭用新設便器において定着した感があり、さらに高級住宅向け便器として、洗浄、排出を電磁切り替えで行う水道直圧による節水便器(TOTO「ネオレスト」、INAX「サティス」)の拡販が図られている。

洗浄水量は、洗い落とし式で10リットル前後、サイホンゼット式では13リットル(いずれも大洗浄)というのが一般的であったが、最近は大洗浄で8リットル、小洗浄では6リットル程度への節水化を果たした新型製品が品揃えされた。その契機となったのは、1978年から1年近くにわたって続いた福岡大渇水であった。福岡市ではこの大渇水を契機に、サイホン系であっても洗浄水量を10リットルにするよう条例で義務付けた。これに“地元”のTOTOがいち早く対応し、「福岡市専用」商品を発売した。その後全国でも渇水の影響が広がったことから、現在ではライバルメーカーを含め節水型を「基本商品」に位置づけて対応。更なる節水効果をうたった商品も販売されている。

洗い出し式(和式)

和式便器で一般的な方式であり、もっとも安価なものである。使用中は汚物をいったん便鉢部分にためてから、リム部および後部からの水勢のみで汚物を流す。便鉢奥側にトラップ(排水路の封水)があるが、手前側の便鉢部の溜水部が少なく汚物が空気に触れるため臭気が発散しやすく、汚れの付着も多い欠点がある。

洗い落とし式(腰掛式、和式)

和式便器にも存在しているが、特に腰掛便器普及品の洗浄方式である。便鉢に吐出された水勢のみで汚物を排出する。欠点としては封水面が小さいため、汚物が付着しやすいほか、座面と封水との落差から水のはね返り(汲取式便器にならって、俗に「おつり」という)を気にする使用者も多い。ちなみに、洗い落とし式の和式便器は、現在は、寒冷地対応品(寒冷地仕様)程度にとどまっている。

ネオボルテックス式(腰掛式)

洗浄水の渦作用と水勢で流す方式。洗い落とし式の一種であるが、洗い落とし式の排出力の弱さを水流によって作る封水面の渦水流によって補う方式で、封水面も洗い落とし式より広い。便鉢はサイホン式より小さくなるが、洗い落とし式に比べ高い性能を、サイホン式より少ない洗浄水量と低価格で実現し、あわせて狭小現場への対応を図ることを狙いINAXで開発された方式で、タンク密結式の他に、一部公共用システムトイレ製品(壁掛式洋風便器)も発売されている。システムトイレ用のネオボルテックス便器はTOTOでも発売されている(TOTOでの呼称は「ニューボルテックス式」)。2006年には溜水面を拡大した「ワイドボルテックス式」がマンションリフォーム用に追加された。マンション用の排水芯が高い(155mm)床上排水では、サイホン作用を作ることが難しいため、ネオボルテックス式をベースに大型便器に適した改良がなされた。

サイホン式(腰掛式)

屈曲した排水路により管内を満水させ、サイホン作用を起こさせることによって汚物を吸引して排出する方式。大きな封水と強い排出力を持つ上位機種である。欠点としては吸引時の空気巻き込みによる騒音発生があるが、現在の住宅新築用では主流となっている方式で、性能確保と節水、消音化との両立が技術課題である。

セミサイホン式(腰掛式)

サイホン式の一種であるが、便鉢や封水量を小さくし、洗浄水量の節減と低価格化、あわせて狭小現場への対応を図ったTOTOの方式である。 欠点は便鉢および便座の小さいこと、及び汚物がサイホン式と比べ付きやすいこと。

サイホンゼット式(腰掛式、和式)

サイホンゼット式便器(幼児用簡易便座付属)

サイホン式をさらに強化し、封水部から屈曲部に向けてゼット孔を置き、このゼット孔からの水流で強制的にサイホン作用を起こさせる方式である。サイホン式よりさらに大きな封水面と強い排出力を得られるが、大きな封水面とゼット孔水流の必要から洗浄水量は多くなり、サイホン式に比べより大きな騒音や高価格となるのも欠点である。サイホン式同様の技術課題により公共用、タンク密結式とも改良が行われており、採用は多くなってきている。和風便器も発売されていたが、現在は発売が中止されている。

サイホンボルテックス式(腰掛式)

高級住宅向けのタンク一体型超消音便器として開発された方式で、便器の奥に一体化されたタンクから洗浄水を短時間に独特の窪みのついた便鉢の封水下へ吐出させ、落水音なく水位差をつくり、空気を巻き込まない渦作用の起こる便鉢形状によってサイホンを発生させ、空気を吸い上げることなく排出する。排水路の構造が複雑なため異物の詰まりやすい傾向があり、また大量の吐出水を確保するため洗浄水量はサイホンゼット式よりさらに多くなり、節水面、維持費用面の欠点となるが、強い排出力のほかサイホンゼット式よりさらに大きな封水面を確保でき、徹底して空気の巻き込みを排した洗浄騒音の静粛さが特徴である。タンクが便座とほぼ同じ高さにありローシルエットである。高級住宅、ホテルのほか、公共用にも静粛性が求められる場所で採用されている。

ブローアウト式(腰掛式、和式)

強力な水勢のゼット孔をトラップ底面から排出口へ向かって設け、もっぱらその噴出力で汚物を排水路へ吹き飛ばし排出する方式。封水面が広く排出力が強い。サイホンゼット式と違い、サイホンを発生させず排出力は水勢のみで排水路の構造を直線化でき、特に異物の詰まりに強いが、その反面、水勢を強い噴流発生に集中させるため、便鉢流下水が少量となり洗浄力がやや弱いほか、構造上噴流が空気中に露出し騒音が非常に大きいのが欠点で、一定以上の水圧が必要なので、洗浄方式もフラッシュバルブに限られ住宅用には適さず、特に詰まり対策を期待する公共便所やシステムトイレで、近年腰掛式、和式とも採用が広がっている。

水道直圧式(腰掛式)

TOTO「ネオレスト」(同社は「シーケンシャルバルブ式」と呼ぶ)やINAX「サティス」(同社は「ダイレクトバルブ式」と呼ぶ)の洗浄方式で、サイホンゼット式に準ずる封水を持たせ、

  1. 水流を便鉢に流下させ洗浄
  2. 続いて排水路に噴流を流し排出
  3. 排出後再び洗浄水を流下、便鉢の封水を復元する

一連のタイミングを電磁弁でコントロールして便器洗浄する節水型便器。2006年現在、大6リットル洗浄をいち早く実現している。汚物をゼット孔の噴出力のみで排出することからブローアウト式の一種といえるが(ただしTOTOでは「サイホンゼット式」の一種としている)、特有の騒音はゼット孔を排水路の深い位置に置くことや噴流の噴出時間を自動コントロールすることで抑制している。洗浄操作を自動化(センサー化)した操作性、ロータンクを廃止したデザイン性や節水性に優れるほか、貯水が不要となり連続使用も可能にするが、停電時は特殊な手動操作により洗浄しなければならないほか、一般に便鉢の洗浄力はサイホン式よりやや劣り(サイホン式は便鉢を100%の水流で洗うが、この方式の場合は70%程度)、水圧の低い場所では使用できないのが欠点である(INAXサティスは、水圧の低い場合にそれを補う低流動圧対応ユニットをオプションで用意している)。

ハイブリッドエコロジーシステム

TOTOの商品。水道直圧式をベースに小型タンクを組み合わせ、水道から直接流れてきた水はボール内の洗浄に、内蔵タンクからの水はポンプで加圧してゼット穴部分から勢いよく噴出させる新洗浄方式。これにより従来タンクレストイレが使えなかった水圧の低い場所(戸建て2階、マンションの高層階、高台など)でも使用可能になっている。2007年8月1日発売の「ネオレストハイブリッドAH」で採用。[5]

トルネード式(腰掛式)

便器のリム面からボウル面全体を水平方向に洗浄するトルネード水流と孔の位置を従来の封水部の屈曲部方向から左サイドに置き、孔から封水部縦方向に水流を発生させて汚物を排出するTOTOで新規に開発した洗浄方式。2006年10月2日に発売した壁排水専用便器「ピュアレストMR」で初採用された。壁排水便器専用の洗浄方式である、床排水便器には採用されなかった。

ツイントルネード式(腰掛式)

壁排水便器専用の洗浄方式であるトルネード式を基本とし、封水部垂直方向にトルネード水流を発生させて汚物を排出する床、壁排水に対応したTOTOの洗浄方式。従来のサイホン式と比べて吸引時の空気巻き込みによる騒音発生が一部を除いて大幅低減され、洗浄水量は4.8Lで洗浄するため、従来の13Lよりも8.2Lの節水に成功した。洗浄音は従来の超消音便器サイホンボルテックス式(洗浄水量16L)並みになった。結果、従来品と比べて節水、洗浄音の面で優れた洗浄方式となった。TOTOでは2010年4月1日に発売されたウォシュレット一体形便器「GG」に初採用され、同年8月2日発売された「ピュアレスト」シリーズ、手洗い付きウォシュレット一体型便器「GG-800」、住宅用システムトイレ「レストパルSX」にも採用された。

6リットル便器

INAXでは2006年より、大洗浄6リットル・小5リットルを実現した節水便器「eco6」(エコシックス)を発売している。現在の節水型サイホンゼット便器が限られた洗浄水量において排出性能確保をゼット孔吐出水に依存しており、便鉢流下水量を制約して洗浄力を低下させているとの反省に立ち、節水と便鉢洗浄力向上との両立を念頭に再設計された新系列である。ゼット孔を設けず、独自設計の分配管を介して洗浄水を吐出させる「まる洗い洗浄」を核にしたサイホン式(サティスアステオ・アメージュV・Pita)およびネオボルテックス式(アメージュC)と、「まる洗い洗浄」にゼット孔排出を併用した水道直圧式(サティス)との3種が品揃えされた。

TOTOも同年8月より、INAXサティス競合品のネオレストで大6リットル・小5リットル・男子小4.5リットル洗浄の新シリーズを発売した。さらに11月からは、ピュアレストシリーズやウォシュレット一体型便器:Zシリーズ、住宅用システムトイレ:レストパルSXなどのロータンク式サイホンゼット便器で便器内部構造の改良により6リットル洗浄を実現している。


[ヘルプ]
  1. ^ 便器は存在しないが、便宜上「壁式小便器」と呼ばれたりする。タイルやモルタルの壁のみがあり(仕切板が存在する場合もある)、その壁に尿が当たって下の溝に流れる形態である。
  2. ^ TOTOきっず:トイレなんでもアラカルト
  3. ^ ブルーノ・タウトは『タウトが撮ったニッポン』(武蔵野美術大学出版局)の中で「日本式のしゃがむトイレは優れている」と書いている。
  4. ^ Narinari.com編集部 (2010年4月19日). “和式と洋式が合体? 大手メーカーもわからない謎の「2WAY便器」を求めて。 | Narinari.com”. Narinari.com. 2013年2月14日閲覧。
  5. ^ TOTO - タンクレストイレ・ネオレスト






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