盛期中世から初期近代とは? わかりやすく解説

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盛期中世から初期近代

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 16:37 UTC 版)

魔術」の記事における「盛期中世から初期近代」の解説

中世ヨーロッパ世界で科学魔術は同じものであった錬金術キミア)は自然科学であり、化学であった中世哲学前提に、人間が神との融合向けて精神的な全さ目指し努力するのと同様に地球上物質も完全的物質になることが可能であると考えられた。すべての自然物精妙には調和して収まり万物マクロコスモスとミクロコスモス照応によって結びついていた。占星術魔術一部であり、大学教えられ数学医学とも深く結びついていた。 錬金術師にとって完全な金属である金の探究道徳探究でもあり、滓を取り除き、より物質洗練させ、純粋なエッセンス抽出することを目指した。こうした超自然的深遠な知識は、教会によって禁断知識ともされたが、当時錬金術魔術と自然は対立するものではなく自然と調和するものと考えられていた。こうした知識悪用し悪魔との接触などを行う場合は「魔法」と呼ばれ非難対象となった13世紀神学者オーヴェルニュギヨームアルベルトゥス・マグヌス著作は自然魔術というジャンル確立促した教父アウグスティヌスあらゆる魔術悪霊との交渉であるとしたが、13世紀パリ司教ギレルムス(オーヴェルニュギヨーム)は別の考え示した。かれは論文『法について』のなかで他の多く著述家同様に魔術断罪したが、それだけでなく非法魔術合法魔術とを区別した。その合法魔術すなわち自然魔術 (magia naturalis) とは、悪魔関係するもの教養人たちから誤解されているが、実際には自然の理に則った驚異なのであり、自然の事物の自然本性的力能 (virtutes naturales) の活用であるとギレルムスは論じた中世広く流布し作者不明の自然魔術書『アルベルトゥスの実験』別名『薬草、石、動物効能について』は、少なくともその一部アルベルトゥス・マグヌス著作基づいているが、そのなかには鉱物薬草秘められた力を利用してを黙らせたり、術者不可視にするといった驚異を行う方法記されている。 初期近代ヨーロッパにおける、互いに結びついている目的持った世界という見解は、キリスト教神学と、古代ギリシャの哲学プラトンとアリストテレス思想大きく源泉とする。プラトン思想、特に新プラトン主義者たちは、完全で超越的な一者から不活性生命のない下等な物体まで、世界存在は皆連続する階梯の中の特定位置をもつという「自然の階梯scala naturae)」という発想生まれた一者から遠い下等な存在ほど、一者とは似ていないと考えられた。プラトン思想著作は、ヨーロッパでルネサンス期再発見された。 アリストテレス思想寄与したのは、物事を知るためには「原因について知識」が必要という考え方である。彼の目的因作用因という考えは、事物を他の対象との関係性定義しようとするもので、神によってデザインされ摂理ある世界というキリスト教考え相性良かった。神による目的因は、被造物内部埋め込まれ記号化されていると考えられていた。思想史家エルンスト・カッシーラーは、ルネサンス期魔術占星術は深い同一性結ばれており、象徴シンボル)と因果律自然法則秩序)の融合がその概念主調であった述べている。ある事物について知るには、その事に関するネットワーク知り、特にそれを存在せしめ利用している他の事物について知ることが重要であると考えられていた。当時自然研究全体自然哲学と呼ぶが、学問分野宇宙様々な局面も、互いに事物が結びついているという感覚特徴と言えるイエズス会碩学アタナシウス・キルヒャーは、百科事典的な著作口絵で、神学頂点に、自然学詩学天文学医学音楽光学地理学などの学問並べ相互つながり示しているが、自然魔術magia naturalis)も自然哲学一分野としておかれている。自然魔術は、近代科学それ以前科学中間的な学問だった。 魔術実践者は、世界埋め込まれ隠され結びつきhidden qualities, qualitates occultae。「オカルト性質という訳もあるが誤解招きやすい)を知り制御し操作することを目指した。キルヒャー口絵で、自然魔術太陽を追うヒマワリ首振り表されているが(図の左上)、これは事物の間の隠され結びつき典型例である。事物結びつきは、一般的に共感sympathy)」によって機能しているとされ、共感作用媒体が「世界精気」あると考えられていた。隠され結びつき感覚では気づけないと考えられており、慈悲深い神が世界隠したヒント見抜くために、注意深く観察し先人文献読み込むことが重視された。科学史研究者ローレンス・M・プリンチペは、魔術magia)を現代語直すなら、「習熟mastery)」が最適だろうと述べている。磁石アヘン催眠効果潮汐対する月の影響など実例として知られた。 自然魔術では実践重視されたため、陳腐なことから崇高なことまで、かなり幅広く行われていた「崇高」の方にマルシリオ・フィチーノがおり、生活の仕方儀礼という形で実践し自分悩みの種であったメランコリー(四体液のうち黒胆汁優勢な気質)と学者的な生活の関係を研究してライフスタイル改善提案した。「陳腐」の方にデッラ・ポルタがおり、彼の著作『自然魔術』は、人工宝石花火香水作り方動物品種改良、肉の焼き方果物保存方法などの雑多なレシピ大部分占めていた。 魔術科学史重要な部分であるとみなされている。中世から初期近代の「科学革命」の時期神・人間・自然は互いに切り離されておらず、学者研究範囲意図広大なものであった16・17世紀には、コスモス的・自然哲学的な視点は、濃淡はあれ広く共有されており、ルネサンス期の自然魔術師たちによって、経験科学視点萌芽現れた。17世紀後半には科学的研究仕組み解明される自然の事象も現れ19世紀になると今日みられるような専門化された狭い観点徐々に移り変わっていった。中近世ヨーロッパにおいて、宇宙(自然)は有機的につながったネットワークであり、人間その中で周囲調和して存在する生きる実感を持つひとつの生物であった。プリンチベは、現代的な研究法は知を細分化して成果上げたが、世界バラバラにし、人間感性宇宙から遠ざけ根無し草にしたともいえると述べている。魔術を含む自然哲学は、包み込むような広い世界観持ち学者たちの研究動機疑問実践は、その世界観から湧き出していた。磁力や虹など魔術研究対象であった物事仕組み科学的に解明されると、秘儀性を取り除かれ公になった学知は近代科学技術吸収されていき、残され解明されていない学知、科学ではどうしても解決できない現象魔術とされた。中世初期近代には、理性的な思想とはキリスト教的な知であった魔術キリスト教との対比非合理考えられたが、キリスト教科学分離したことで、科学的合理性対局として、非合理なものとして魔術的神秘置かれるようになった。現在魔術というと神秘的な魔法想像されるのはこのためである。 中近世キリスト教世界には、自然魔術以外の魔術存在したデッラ・ポルタ魔術を自然魔術降霊術分けている。トマソ・カンパネッラは、モーセなど聖人神の使者として自然を従わせて起こす「神的魔術」(奇蹟)、「自然魔術」(白魔術)、「悪霊魔術」(黒魔術魔法)に分けて考えていた。 自然魔術知識人階級行われたが、黒魔術庶民の間で広まった黒魔術太古からあるが、特に注目集めたのはルネサンス期である。この時代中世ヨーロッパ社会終わりに当たり、貨幣経済宗教改革疫病封建社会教会大い揺るがされていた。黒魔術は自然の中の悪霊精霊デーモン)が相手魔術であるが、これに民衆社会不安絡み魔術というより一種アニミズム呪術といった様子であった教会は、「魔法には生産的護身面があるのと同時に破壊的要素も強いこと」「魔法の及ぶ範囲問題があること」(精霊介入黙認できない)という理由で、呪術的動き疑いの目で見ており、素朴な民衆土着文化現れ悪魔崇拝異端であるとみなすこともあった。

※この「盛期中世から初期近代」の解説は、「魔術」の解説の一部です。
「盛期中世から初期近代」を含む「魔術」の記事については、「魔術」の概要を参照ください。

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