シュール
シュールとは、現実と夢、または現実と非現実が混ざり合ったような状態を表す言葉である。この言葉は、主に芸術や文学の世界で使われ、特にシュールリズムという芸術運動で広く知られるようになった。シュールリズムは、20世紀初頭にフランスで生まれ、現実の枠組みを超えた表現を追求した。シュールな作品には、不条理でありながらも鮮やかなイメージが描かれ、観る者に深い印象を与える。シュールな表現は、絵画や彫刻、映画、文学など、多岐にわたる芸術分野で見ることができる。
シュール
「シュール」とは・「シュール」の意味
「シュール」とは、「現実離れ」「非現実的」という意味の言葉で、ネット上でよく使われる「カオス」などと間違いやすい若者用語の1つである。「シュール」には、そのほかに「不条理である」「極めて独創的である」「非日常的で理解できない」などの意味合いがあり、芸術やエンターテインメントなどを評価する言葉としても頻繁に用いられている。一方で、「シュール」と間違いやすい言葉である「カオス」は、「混沌としている様子」「めちゃくちゃに混乱しているさま」などを表している。いずれも凡人に理解することが難しいというニュアンスが共通しているが、「カオス」のほうが「シュール」よりも無秩序で訳がわからないという意味合いが強い。一方で、「シュール」は、「カオス」にはない独特の世界観や個性を指して使うケースが多い。
さらに、「シュール」と間違いやすい言葉には、「ファンタスティック」がある。「ファンタスティック」は「幻想的」という意味の言葉で、「シュール」と同じく現実離れしていることは共通している。だが、「ファンタスティック」は「感動的で素晴らしい」「夢を見ているようなさま」といったニュアンスが強い言葉であり、「シュール」にはそのような意味合いは含まれていないことが大きな違いである。
現在の若者が、人や物に対して「シュール」を使うのは、明らかにまわりと異なる場違いな様子であったり、ずば抜けて奇抜であるというような場面だけには限られない。少しだけ変わっているものやちょっと珍しいと思う光景などを見た時にも、雰囲気だけで「シュール」と表現することがある。そのため、「シュール」という言葉のニュアンスは、伝える側と受け取る側で異なることが多々あり、慎重に使わなくてはいけない。
例えば、すぐには真似のできない独特の個性や奥深い世界観に対して感動や賛辞の意を込めて「シュール」と表したつもりが、言われた側にとっては奇妙なものに対する批判や皮肉のようなマイナスのイメージで伝わってしまうこともある。また、同じ意味であっても、「シュール」という言葉の曖昧なニュアンスによって、肯定的にも否定的にも表現できてしまう。そのため、「シュール」を使う時には、どのような意図で使っているのかをはっきりするために、表情を工夫したり、言葉を補ったりすることも必要である。
「シュール」の語源・由来
「シュール」の語源は、フランス語の「シュルレアリスム」である。「シュルレアリスム」とは、第一次世界大戦中の欧米で展開された既成の価値観を否定する「ダダイズム」に続いて、1920年代にフランスでおこった芸術運動の名称であり、日本語では「超現実主義」と訳される。「シュルレアリスム」は、戦争に対する抵抗感を象徴する「ダダイズム」の影響を強く受けているが、現実をすべて否定する「ダダイズム」とは異なり、現実を超えて新たな道を生み出そうとしたのが特徴である。「シュルレアリスム」の支柱となっているのはフロイトの「精神分析理論」であり、破壊の後の時代を生きるために個人的な主観を排除した「無意識」「偶然」「集団意識」などに重点が置かれている。
1924年、フランスの詩人アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」により「シュルレアリスム」が本格的にスタートしたと言われている。大きな時代の潮流とともにサルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、マルク・シャガールなどの偉大な画家たちがインパクトの大きい前衛的な作品を多く生み出したことでも知られている。アンドレ・ブルトンが宣言の中で「シュルレアリスム」を「思考の真の働きと表現手段としての心の自動現象」と定義し、常識や倫理的先入観にとらわれない人間の解放を重要視したが、その考え方は現在の「シュール」という言葉の意味にも結びつく部分がある。
「シュルレアリスム」のほかにも、日本語では「シュルリアリスム」「シュールレアリズム」「シュールリアリズム」といったさまざまな表記があるが、「シュール」はこれらの表記が略されて生まれた言葉である。「シュール」という日本語は、「シュルレアリスム」の現実には再現できない奇妙な世界や、理性にコントロールされない不安定で不条理な世界観を踏襲しながらも、時代を経て、若者の心をつかむ独特な意味を持つカタカナ語として派生し、広く用いられるようになっている。
「シュール」の熟語・言い回し
「シュールだね」とは
「シュールだね」の「だね」とは、念押しや問いかけの目的で用いられる語尾の言い方である。「シュール」であると感じる相手に対して直接伝える場合以外にも、「シュールな人がいるものだね」「この作品はかなりシュールだね」といった意味合いで、自分の感想を誰かに伝えたり、共感を得たい場面でも使われている。
ただし、「〜だね」というフレーズには、友人関係などの親しい人に使われるラフなイメージがあるため、目上の相手やあまり親しくない間柄の人に使うのは適切ではない。「シュールだね」という言い回しでは相手に失礼になると感じる場合には、「だね」を「ですね」に置き変えて「シュールですね」と丁寧に伝えるのが望ましい。
また、「シュールだね」という言葉は、伝える側の言い方や表情、受け手の気持ち、シチュエーションによって、褒め言葉にも悪口にも変わってしまう可能性がある。肯定的な意味で使う場合にも、言い方に十分気をつけたり、説明を加えることが望ましい。大切な場面で誤解が生じることを避けるのであれば、あえて「シュール」という表現は使わずに「超現実的」「奇抜」「不条理」「難解」といった言い換え表現を用いる方法もある。
「シュールすぎる」とは
「シュールすぎる」に使われている「〜すぎる」という表現は、物事の度合いが普通のレベルを超えている場合や、水準よりかなり上である時に用いる。「シュール」という言葉自体にも、現実を突き抜けているというニュアンスがあることから、「シュール」である状況をさらに超えていることに驚いているという気持ちを表すフレーズとして使われる。
「シュールな感じ」とは
「シュール」という言葉は、「シュールな感じ」と同様に、「な」を付けて「シュールな〜」と形容動詞のような役割で用いることが多い。「シュールな感じ」で使われている「〜な感じ」とは、人や物事に接した時に受ける印象を表す時や、感覚的に生じたイメージについて表したい時に使う言い回しであり、自分の主観で「シュール」だと思う時に使われる。
「シュール」の使い方・例文
・この映画はブラックジョークが多く練り込まれていて、作品全体としてはかなりシュールだね・あの人たちは、会話がかみ合っていないのにニコニコ笑いながら楽しそうに話し続けている。ある意味とてもシュールだね
・あれほど奇抜な格好で人出の多い街中を歩くことができるとは、なかなかシュールな人たちだと思う
・昨日の集まりは、私にはシュールすぎるやりとりが多かったので、あまり会話についていくことができなかった
・彼が演出した舞台はシュールな作風が多いが、見ているうちにいつのまにか引き込まれてしまう魅力がある
・最近のお笑い芸人のコントは、シュールな笑いを誘うようなネタが多くて本当におもしろい
・昨晩、家の中にあるぬいぐるみや植物が突然しゃべり出すというシュールな感じの夢を見た
・彼の新作のTシャツには、とてもシュールでかわいいイラストが描かれている
・シュールでありながら誠実で真面目な部分も併せ持つ人柄が気に入っている
・世間で評価されている新鋭の芸術家たちの中には、シュールな世界観の持ち主が多くいる
シュール
「シュール」とは、フランス語のシュルレアリスムの略で「現実離れ」や「超現実的」「奇抜な」といった日常生活で目にすることのない並外れた様子のことを意味する表現。シュールレアリスムの略。シュールレアリズム、シュールリアリズムなどと表記されることもある。近現代では現実感を無視した作風への傾倒として用いられたが、日本において特に若者が使用する際は、明らかな奇抜さだけではなく、ちょっとした違和感や独特な雰囲気に対して用いることがある。
シュールの語源
シュールの語源は、日本で「超現実的」と訳されるフランス語である。この言葉を最初に使ったのは、フランスの詩人ギヨーム・アポリネールであるといわれている。1917年に上演されたコクトーによる前衛バレエ作品「パラード」のプログラム序文で使用したとされ、1918年に上演されたアポリネール自身の戯曲「ティレジアスの乳房」は、シュールレアリスム演劇の先駆けといわれている。シュールレアリスムの語が有名になったきっかけは、1924年に刊行された、フランスの作家アンドレ・ブルトンによる「シュールレアリスム宣言」という書物にある。第一次世界大戦中にブルトンは、当時のフランスではあまり有名ではなかったフロイトの心理学に触れ、「人間にとって意識は氷山の一角にすぎない」「夢こそが願望の充足である」というその深層心理学に大きな影響を受ける。そしてブルトンは、理性によって支配された現実世界ではなく、夢・幻想など潜在意識的な世界を表現することで人間の開放を目指すという思想を「シュールレアリスム宣言」として発表した。
シュールレアリスム宣言に影響を受けた多くの画家が、現実を無視したかのような絵画を発表するようになり、いつしか「シュールレアリスム」は芸術運動の名前となっていった。まるで夢の中を見ているような非現実感のある芸術作品を発表したサルバドール・ダリ、マックス・エルンスト、ルネ・マグリットなどがシュールレアリスムを代表する画家として知られる。また、ピカソも後にシュールレアリスムに傾倒したという。そうして、シュールレアリスムに影響を受けた芸術家たちは「シュールレアリスト」と呼ばれた。
シュールとダダイズム
シュールレアリスム宣言は、第一次世界大戦中から大戦後にかけて欧米で起こった「ダダイズム」という芸術運動にも影響を受けているが、戦争に対する抵抗感や虚無感を抱えたまま、常識を攻撃したり、破壊するような、いわば「現実を否定」していたダダイズムに対し、シュールレアリスムは「現実を超える」ものであった。シュールレアリスム宣言は日本の芸術家たちにも影響を与えることになる。西脇順三郎や友部正人といった詩人がシュールレアリスム宣言に影響を受けた詩を発表。小説では安部公房、漫画ではつね義春の「ねじ式」などにシュールレアリスム的な表現が見られた。画家では、古賀春江、福沢一郎、北脇昇、写真家では山本悍右などが影響を受けたとされる。
しかし、現在の日本では「シュールレアリスム」という単語ではなく、「シュールな」という形容詞として使われることが多い。バラエティ番組で、お笑い芸人の現実的ではない発言に対して「シュールなボケ」、ありえない設定のコントに対して「シュールな設定」など、ただただ現実離れしているという意味で使用されることが多い。まさしく「シュールレアリスム」から「レアリスム」がなくなったような状態である。本来の「シュールレアリスム」とは別の意味を持つ言葉になっており、「あの光景シュールだったね」「シュールな漫画だった」など、大人から若者まで幅広く使われるようになっている。
近年の日本で一般的に「現実離れしている」という意味で使われる「シュール」という言葉の反対語は「現実」といえる。また、本来のシュールレアリスム「超現実」の反対語も「現実」と考える向きもある。
シュール【(フランス)sur】
特定非営利活動法人シュール
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シュール
シュルレアリスム
(シュール から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/09 18:54 UTC 版)
シュルレアリスム[注 1](仏: surréalisme[注 2]、英: surrealism[注 3])は、戦間期にフランスで起こった作家アンドレ・ブルトンを中心とする文学・芸術運動である。すでに1919年から最初のシュルレアリスムの試みである自動記述が行われていたが、1924年にブルトンが『シュルレアリスム宣言』を発表し、運動が本格的に始まった。ブルトンはこの宣言でシュルレアリスムを「口頭、記述、その他のあらゆる方法によって、思考の真の動きを表現しようとする純粋な心的オートマティスム。理性による監視をすべて排除し、美的・道徳的なすべての先入見から離れた、思考の書き取り」と定義した[1]。シュルレアリスムはジークムント・フロイトの精神分析とカール・マルクスの革命思想を思想的基盤とし、無意識の探求・表出による人間の全体性の回復を目指した。ブルトンのほか、ルイ・アラゴン、ポール・エリュアール、フィリップ・スーポー、バンジャマン・ペレらの詩人を中心とする文学運動として始まったが、ジョルジョ・デ・キリコ、マックス・エルンストらの画家やマン・レイらの写真家が参加し、1920年代末頃からスペインやベルギーからもサルバドール・ダリ、ルイス・ブニュエル、ルネ・マグリット、カミーユ・ゲーマンスらが参加。分野もダリとブニュエルの『アンダルシアの犬』に代表される映画などを含む多岐にわたる芸術運動に発展した。
- 1 シュルレアリスムとは
- 2 シュルレアリスムの概要
シュール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/11 06:18 UTC 版)
妖術師。全ての神の頂点に立つという野望を持ち、そのためにコルムを利用する。
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シュール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 15:06 UTC 版)
「Destiny (ビデオゲーム)」の記事における「シュール」の解説
「ナイン」と呼ばれる謎の人物、または組織に仕えるエージェント。全身を黒ずくめの服で覆っており、その顔面には謎の襞が蠢いている。日本時間金曜の午後6時から日曜の午後6時までタワーに現れ、エキゾチックの装備品や希少価値の高い消耗品を取り扱う。彼と取引するには「奇妙なコイン」が必要。
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シュール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 09:13 UTC 版)
ナインと呼ばれる謎の人物のエージェント。特殊な武器や防具を持ってくる。
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シュール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 16:32 UTC 版)
※この「シュール」の解説は、「アソボット戦記五九」の解説の一部です。
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