レアリスム【(フランス)réalisme】
読み方:れありすむ
リアリズム
【英】:REALISM
【別称】:レアリスム
フランス語読みではレアリスムと言う。ふつう「写実主義」と訳すが、訳語よりも原語の方が幅広いニアンスを含んでいるため、近年はそのまま外来語として使うことが多くなっている。原語には「写す」の意味は含まれず、現実主義とか実在主義といった訳語の方が適切な場合が多いことや、その内容が時代や著述家によって異なり一義的でないからである。描写対象で捉えれば、慣習的に美しいものや高貴なものでなく、醜いものや庶民の生活の平凡な場面を描くことを言う。クールベやカラヴァッジオの作品がここに入る。描写方法の側面から述べれば、抽象化、歪曲化(デフォルマション)、様式化、理想化の方法をとらないものを言う。しかし、例えばダリの絵画は、対象を抽象化せず細部まで抽き込んでいる点でリアリズムと言えるが、自然の外観を著しく歪曲化している点でそうとは言えず、それぞれ相対的であり排他的な意味を持っている。なお、20世紀の抽象表現主義以後、抽象的なものや超再現的なものを含んでこの用語を使う傾向もある。
写実主義
レアリスム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 13:40 UTC 版)
バルザックは非常にこまごまとした、あふれるほどの詳細さでヴォケール館、住人たち、それを取り巻く世界を描写している。この手法こそ、彼がレアリスム小説の父と呼ばれるゆえんなのである。この詳細な描写は、もっぱらヴォケール館の住人たちの困窮ぶりを浮かび上がらせている。これに対して富裕層の家庭の描写ははるかに雑である。ボーセアン子爵夫人の部屋はさらりと触れるだけ、ニュシンゲン家の生活についての描きぶりも仔細さとは程遠い。 小説の冒頭でバルザックは、英語で "All is true" (すべて真実なのだ)と断言している。登場人物と設定は仮構であるものの、描かれている細部は - 当時のパリの現実生活を反映したものであるのだが - ヴォケール館の世界を忠実に表現している。ヌーヴ=サント=ジュヌヴィエーヴ通り(そこにヴォケール館があった)は、「家々にぞっとするような外観」を与えたが、「それが高い壁を持つことから、牢獄を示唆するものであった」。屋内の調度は、粗末な居間(「これ以上に憂鬱になる場所はない」)から祝祭を描いた壁紙(「郊外の小さな食堂でもそんなもの使わないような紙」)まで、まずい食事で有名な家を飾る皮肉な装飾が微細に叙述されている。バルザックはこれらの細部描写を、壁紙貼りの修行をした専門家の友人イアサント・ド・ラトゥーシュから教わっている。ヴォケール館はそのぞっとするような、下宿館独特のにおいについてまで描写されている。
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