Quality of Service 優先制御と帯域制御の限界

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Quality of Service

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/14 16:17 UTC 版)

優先制御と帯域制御の限界

優先制御と帯域制御はルーターでの機能であるため、ルーターで区分されたインターネット内部では機能しない。パケットの優先度を指定してもL2スイッチL3スイッチは無視するだけである。

固定的な帯域制御の指定値設定も、実効帯域からずれがあると回線の使用に悪影響が出る。実効帯域が広がっても帯域制御が狭いままでは、回線使用に無駄が生じる。実効帯域が狭くなって帯域制御の設定値上限値以下になれば、帯域制御が機能しなくなりパケット廃棄が起こりやすくなる。こういった固定設定の問題を回避するために、一部の新しいルーターでは、拠点側ルーターから測定用のUDPパケットをいくつかセンター・ルーターに送って受信間隔や損失情報を送り返してもらい、回線の状況に合わせて帯域制御の指定を動的に変更する機能が備わっているものもある[3]

その他

QoS保証の必要性

QoSの保証が必要になる最大の理由は輻輳(ふくそう、Congestion)である。ネットワーク・トラフィックの量が限られていれば、特別の工夫をしなくてもQoSに関する問題はほとんどおこらないからである。輻輳を避けるため電話網においては、第1にアドミッション制御が行われる。すなわち QoS が保証できないときには新しいサービス要求を拒絶する。電話網においては第2に個々の呼(Call)を確立する際に、輻輳が起こらないルートを検索して使用する。一方、インターネットをはじめとする IPネットワークにおいては、従来、ネットワーク・レベルではこのような制御が行われなかった。そのため、IPネットワークは緊急通信をはじめとする高信頼性が要求される通信用途に使用するのが困難だった。IPネットワークの用途がひろがるにつれて、そこでも QoS保証へのニーズが高まっている。

また、IPネットワーク固有の要因として、近年しだいに QoS保証を必要とするアプリケーションが増加してきていることがその必要性を高めている。すなわち、1990年代にはいってからインターネット上で音声通話や動画配信といったリアルタイム・アプリケーションが使われるようになり、またビジネス向けの高品質なサービスも求められるようになってきた。また、データ通信が音声通信を量的に上回り、電話網に匹敵する品質をインターネットにおいて実現することが必要となってきている。これはインターネットからみた表現であるが、電話網の側からみればインターネットに匹敵する(あるいはそれ以上の)柔軟さを新しい通信網すなわち NGN(Next Generation Network)において実現することが目標となっている。

IPネットワークにおけるQoS保証

インターネットの標準化は IETF(Internet Engineering Task Force:インターネット・エンジニアリング・タスク・フォース)において進められているが、QoSに関してもIETFにおいて次のような技術が標準化されている。

  • IntServ (イントサーブ) - 個々の通信フローごとにQoSを保証するための技術あるいは枠組みである。
  • DiffServ (ディフサーブ) - 複数の通信フローをまとめたサービスクラス(Class of service, CoS)ごとにQoSを保証するための技術あるいは枠組みである。

使用例

QoSは、他者と差別化し優先させることで安定したスループットや低遅延を実現している。CoSの使い方としては、IP電話やビデオ会議/テレビ電話といったリアルタイム系トラフィックを最優先。SNAといった遅延に弱い基幹系トラフィックや、重要度の高い業務系トラフィックを2番目に優先。電子メールWebへのアクセス等遅延が生じても問題にならない情報系トラフィックを最も低い優先度とする。

LANスイッチでの優先度制御

LANスイッチ(レイヤー2スイッチ)でも、IEEE 802.1QのVLANで使用される拡張MACフレームのヘッダーに含まれる情報を使って優先度の制御を行なう。拡張MACフレームのヘッダー部の4番目にある「Tag Control Information」フィールドの先頭3ビットが優先度を示す数値になっている[7]


  1. ^ QoSとは”. network.yamaha.com. 2020年9月26日閲覧。
  2. ^ a b c d 日経NETWORK 2004年1月号 「特集2 QoS」p84-p85
  3. ^ a b c d e 日経NETWORK 2007年8月号 「特集2 通信品質」p74-p75
  4. ^ Stallings, William (2016). Foundations of modern networking : SDN, NFV, QoE, IoT, and Cloud. Florence Agboma, Sofiene Jelassi. Indianapolis, Indiana. ISBN 978-0-13-417547-8. OCLC 927715441. https://www.worldcat.org/oclc/927715441 
  5. ^ a b 日経NETWORK 2007年12月号 『VoIPを導入するための機能』 p.160
  6. ^ Stallings, William,. Foundations of modern networking : SDN, NFV, QoE, IoT, and Cloud. Agboma, Florence,, Jelassi, Sofiene,. Indianapolis, Indiana. ISBN 978-0-13-417547-8. OCLC 927715441. https://www.worldcat.org/oclc/927715441 
  7. ^ 那須野洋一、岡田孝博著「スイッチ・ネットワーク 不要なパケットは止めて重要なパケットを優先する」 日経NETWORK 2005年8月号 p.171


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