スイカ 食材

スイカ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/15 14:49 UTC 版)

食材

すいか 赤肉種 生[21]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 155 kJ (37 kcal)
9.5 g
デンプン 正確性注意 (7.6) g
食物繊維 0.3 g
0.1 g
飽和脂肪酸 (0.01) g
一価不飽和 (0.02) g
多価不飽和 (0.03) g
0.6 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(9%)
69 µg
(8%)
830 µg
チアミン (B1)
(3%)
0.03 mg
リボフラビン (B2)
(2%)
0.02 mg
ナイアシン (B3)
(1%)
0.2 mg
パントテン酸 (B5)
(4%)
0.22 mg
ビタミンB6
(5%)
0.07 mg
葉酸 (B9)
(1%)
3 µg
ビタミンC
(12%)
10 mg
ビタミンE
(1%)
0.1 mg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
1 mg
カリウム
(3%)
120 mg
カルシウム
(0%)
4 mg
マグネシウム
(3%)
11 mg
リン
(1%)
8 mg
鉄分
(2%)
0.2 mg
亜鉛
(1%)
0.1 mg
(2%)
0.03 mg
他の成分
水分 89.6 g
水溶性食物繊維 0.1 g
不溶性食物繊維 0.2 g
ビオチン(B7 0.9 µg

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[22]。廃棄部位: 果皮及び種子。廃棄率: 小玉種の場合 50 %
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
切り分けた果実

みずみずしい食感と甘味を持つスイカの果実は、夏の7 - 8月が主なとされる[23][4]。果実は全体につやがあり、縞模様がくっきりしていて、手に持つとずっしりとした重みのあるものが良品といわれている[23]。また、カットしたときに種が黒く熟しており、果肉の赤色と果皮の白色の境目がはっきりわかるものがよいとされる[23]。収穫後は日ごとに風味が落ちるため早めに食べきるのが良く、果実を丸のまま保存する場合は風通しの良い日陰に置き、カット品は切り口をラップに密着させて全体を包み冷蔵する[23]

果実

原産地域に自生する果実は、果肉に苦味が強いため、ヒトの食用には適さない。それは原産種に近縁の種も同様である。これらの品種の果肉について、少なくとも現代のヒトは、含まれる水分を飲料水以外の生活用水に利用するのみとなっている。一方、キリンなど野生動物などは好んでこれを食べる。

食用できる果実は、いずれの文化圏であれ、両手で持ちやすい半円形や片手で持ちやすい三角形になるよう薄く切ったり、一口で食べられる小さなキューブ状(立方体)に切り分けるなどして食べるのがオーソドックスである。イスラエルの場合は、甘みを引き立たせるために現地で「ブルガリット(ブルガリアチーズ)」と呼ばれている白くて硬質な塩漬けチーズ(ブルガリアではシレネと呼ぶ)を振り掛けるのが[24]昔からの定番であった[25]。これも強い塩味で甘みを引き立たせる[24]というものであるが、この食習慣は21世紀の若者にはあまり引き継がれていない[25]

日本には、果肉と果汁を加熱濃縮した「西瓜糖(すいかとう)」と呼ばれる加工食品が現在もあり[26]明治時代ごろから大正時代にかけては民間療法健康食品として特によく売れた[26]という。日本のものより古い時代の中国の文献にも「西瓜糖」の名があることから、中国ではもっと古い時代に作られていた可能性がある[26]。西瓜糖はジャム状の食品であり、砂糖が入っておらず、スイカ自体の糖分によって甘みがある[26]。ジャムや甘味料の代わりにも用いられる[26]

世界では、ジェラートゼリー缶詰などに加工されることも多い。

赤色であれ黄色であれ、スイカの果肉の瑞々しく鮮やかな色彩は、非常に見栄えがするため、料理においては色彩的演出効果が高い。この特徴を効果的・大々的に活用してきた例として、中華料理において縁起の良い文字や絵を刻んで装飾したものが宴席に供されている。

種子

アジアでは種子を炒って歯で割り、中身を食べる地域が多い。中国では西瓜子と呼ばれ、酒のつまみ、料理、菓子などに用いられており、炒って味付けされたものは日本に輸入されている。普通のスイカよりも大きな種をつける、採種専用の品種も存在する。またスイカの原産地であり利用や栽培の始まったアフリカでも、種子を炒って粉末にするなどし、食材として利用する食文化が存在する。特に原産地に自生する果肉の苦味の強い近縁種は、果肉自体は人間の食用に適さないので飲料水以外の生活用水として利用し、種子のみを食用とする。また、スイカ皮や、より品質の高い果実を収穫するために摘果した小さな未熟果実の漬物・ピクルスもポピュラーである。

栄養価

スイカの甘味は果糖で、冷やしすぎると舌が甘味を感じにくくなるので、食べる2 - 3時間前に冷やすのが理想とされる[23]。果肉や種子に含まれるカリウムむくみ解消ならびに利尿作用があるため[4]、暑さで体力を消耗し水分を過剰摂取することで起こりがちな夏バテに効果があるとされている。スイカから発見されたアミノ酸の一種で、他のウリ科の作物にも含まれるシトルリンもまた、むくみ解消や利尿作用の効果があるといわれ、特にスイカの果皮に多く含まれている[23]。赤い果肉の色素は、抗酸化作用があるカロテノイドβ-カロテンリコピンが豊富に含まれていることでも知られる[23][27]


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