スイカ 栽培

スイカ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/15 14:49 UTC 版)

栽培

春(4月ごろ)に苗を植え付けて夏(7月ごろ)に収穫する果実的野菜[33]。野菜のうちでは最も強光を好み、生育適温は昼間28 - 30度、夜間15度以上と高く、日当たりのよい場所で栽培する[32]。土質は選ばず、砂質から粘土質まで適応幅は広い[32]。しかし、連作を最も嫌う野菜として知られており、畑は他のウリ科作物を4 - 5年作っていない砂質の水はけと日当たりの良い場所にする[33][8]。湿度にも弱く、連作ができないため栽培難度は高いといわれている[10]。家庭で育てる場合は、小玉種が育てやすい[33]

現在では病気や連作に強いを育てるため、カンピョウ(ユウガオ)やカボチャ台木にした接ぎ木苗を購入して栽培するのが一般的になっているが[10]、種から育てる実生栽培のほうが食味は優れている[8]。敷き藁でマルチングをして乾燥気味かつ清潔に育てるのが重要となる[10]

苗をつくるときは、育苗箱に種をまき、発芽適温は25 - 30度で保温して発芽させる[34]。発芽後、本葉1枚になったら育苗ポットに鉢上げし、本葉5 - 6枚の苗に仕上げる[34]。圃場には植え付け1か月前から元肥を入れて良く耕しておき、幅2.5 - 3 mのを作り、苗を80 - 100 cm以上間隔を空けて植え付ける[33][35]。深植えしすぎないようにし[34]、植え付け後はたっぷりの水を与える[33]。植え付けから初夏まではツルが伸びていく時期で、伸びたツルの本葉5 - 8枚ほど(5 - 8節)で先端を摘んで小ヅルを3 - 6本ほど出して、各小ヅルに2個の実を成らせる[33][35]。大玉品種は1株3 - 4個、小玉品種は1株7 - 8個ほど実を成らせるのが基本とされ、実が膨らんで鶏卵大になったら摘果する[36]。生長期の孫ヅルはすべて摘み取る[33]。また、小ヅル同士が重ならないように整えたら、ツルの下には敷き藁を敷いておく[37]

スイカは雌雄異花の虫媒花である。1番花と2番花は良い果実ができないため、小ヅルの20節前後につく3番花を結実させる[35]。黄色い花は、雄花とつけ根に丸い膨らみがある雌花があり、晴れた日の朝(6 - 9時)のうちに雄花を花茎ごと摘んで、雌花の雌しべ(花柱)に花粉()をこすりつけて人工授粉させると確実に着果する[33][35]。授粉後、雌花のつけ根がタマゴ大に膨らんだら、ツルの先端に少量の追肥しておくとよく、授粉後35日 - 45日前後で収穫時期を迎える[33][35]。果実が地面に接している部分は色づきが悪くなるため、ある程度の大きさになったら実をツルごと持ち上げて置き直す「玉直し」を行うと、実が均等に熟す[33]。実の近くの巻きひげが枯れてきたころが収穫の目安で、収穫後は2 - 3日ほど追熟するとさらに実は甘くなる[33]。収穫は果実を叩いて低い音で判断することもあるが、熟度を知るには確実性欠けるため、交配日を目印にしておけば熟度は判定できる[35]

連作障害・病害

水持ちが良い土壌で栽培すると、途中でつる割病などが発生して枯れてしまう[8]。病気に対しては、雨の後と、晴天時でも10日ごとに殺菌剤を散布することにより予防につながる[35]炭疽病は雨の多いときに発生しやすく、葉が混み合っているところを入念に薬剤散布して防除する[38]

連作障害やつる割病に弱いため、台木としてユウガオ[39]カボチャ[40]などの台木を用いる接ぎ木栽培がをすると、耐病性が付与され、連作も可能になる[32]

スイカ果実汚斑細菌病(BFB)の病原細菌はウリ科雑草のアレチウリカラスウリに病原性を有するが、アマチャヅルには病原性がない。病斑を形成した発病苗やウリ科雑草は2次伝染源となる可能性がある。スイカ作付け圃場周辺にカラスウリ、アレチウリが自生している場合は、抜き取って処分する。わが国では1998年にスイカで発生、その後メロン、トウガンなど瓜類での発生が確認されており、瓜類の種子伝播を防ぐため種苗メーカーによる厳格な検査体制を敷いている[41]

スイカの爆発

収穫直前に大雨が降るなどして内部に腐敗を生じガスで内圧が高まることで爆発を起こすことがある[42]

2011年、中国の村で、収穫前のスイカが自然破裂する現象が、相次いで起きた。地元当局は「スイカ爆発事故調査チーム」を結成した[43]。原因については、開花時期に使用すべき植物成長調整剤であるホルクロルフェニュロンを誤って収穫直前に使用したこと[42]や豪雨などが報道されている[44]


  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrullus lanatus (Thunb.) Matsum. et Nakai スイカ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月25日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrullus battich Forssk. スイカ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月25日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrullus vulgaris Schrad. ex Ecklon et Zeyher スイカ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月25日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 198.
  5. ^ 『あて字用例辞典:名作にみる日本語表記のたのしみ』雄山閣、1994年。 
  6. ^ a b すいか、メロン、いちごは野菜か果実か 農林水産省のQ&Aページ
  7. ^ 文部科学省『五訂増補日本食品標準成分表』果実類. 食品番号:07077 すいか (PDF) . p.6.
  8. ^ a b c d e f g 市川啓一郎 2021, p. 68.
  9. ^ a b 米国ボイス・トンプソン研究所、ミュンヘン大学(ドイツ)などの研究チームが『米国科学アカデミー紀要』に発表したゲノム分析による。「スーダンのスイカが祖先か 病害虫に強い特徴―国際チーム」時事通信(2021年6月2日配信)2021年6月26日閲覧。『日本農業新聞』2021年6月10日9面などに転載。
  10. ^ a b c d e f g 金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編 2011, p. 48.
  11. ^ a b c d e f スイカ”. いわき市. 2019年10月19日閲覧。
  12. ^ 「スイカ、知られざる5000年の歴史」ナショナルジオグラフィック日本語サイト(2015年8月27日)
  13. ^ 西瓜の歴史【スイカにちゃれんじ!】”. www.suikachallenge.com. 2018年8月23日閲覧。
  14. ^ 西瓜(スイカ)の歴史 前編 - 東京スイカ研究会”. suicup.jp. 2018年8月23日閲覧。
  15. ^ a b c d e 竹下大学 2022, p. 144.
  16. ^ すいか(西瓜)の歴史・効能・レシピ”. www.yc.zennoh.or.jp. 2018年8月23日閲覧。
  17. ^ 戦後日本のイノベーション100選 高度経済成長期 接ぎ木(野菜)”. koueki.jiii.or.jp. 公益社団法人発明協会. 2020年4月15日閲覧。
  18. ^ a b c d e f 竹下大学 2022, p. 145.
  19. ^ 市川啓一郎 2021, p. 69.
  20. ^ 池谷和信『人間にとってスイカとは何か:カラハリ狩猟民と考える』(臨川書店 2014年、ISBN 9784653042358)pp.186-187
  21. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  22. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  23. ^ a b c d e f g h 主婦の友社編 2011, p. 210.
  24. ^ a b イスラエル大使館 (2016年7月29日公開、8月19日更新). “夏にぴったり!スイカとチーズのサラダ”. クックパッド. クックパッド株式会社. 2022年7月2日閲覧。
  25. ^ a b カイチューブ KaiTube ー日本のイスラエル人ー (2 July 2022). 【外国人対策】日本の猛暑ヤバい!イスラエル流 夏対策!【kaitube カイチューブ】 (動画共有サービス). YouTube. 該当時間: 06分37秒~07分20秒. 2022年7月2日閲覧
  26. ^ a b c d e 民間療法に使われる『スイカ糖』って一体なに??”. あまいスイカ. あまいスイカ(ブランドスイカ専門店) (2020年12月12日). 2022年7月3日閲覧。
  27. ^ 夏の熱中症予防にはスポーツドリンクよりスイカが最適な理由…低カロリーで食物繊維が豊富”. Business Journal (2020年8月6日). 2020年11月23日閲覧。
  28. ^ 軟X線照射花粉の授粉による種なしスイカ作出法”. 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所. 2008年3月27日閲覧。
  29. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 146.
  30. ^ a b c d e f g h i j k 竹下大学 2022, p. 147.
  31. ^ 金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編 2011, p. 49.
  32. ^ a b c d 板木利隆 2020, p. 56.
  33. ^ a b c d e f g h i j k 主婦の友社編 2011, p. 211.
  34. ^ a b c 板木利隆 2020, p. 57.
  35. ^ a b c d e f g 市川啓一郎 2021, p. 70.
  36. ^ 板木利隆 2020, p. 59.
  37. ^ 市川啓一郎 2021, p. 71.
  38. ^ 板木利隆 2020, p. 58.
  39. ^ 李鎔一「野菜産地の形成と維持機構」『人文地理』1999年 51巻 5号 p.494-510, doi:10.4200/jjhg1948.51.494, 人文地理学会
  40. ^ 笹原健夫, 佐藤ノリコ, 阿部利徳「スイカの健苗育成への鉱物粉末施用の効果」『日本作物学会東北支部会報』1996年 39巻 p.103-104, doi:10.20725/tjcs.39.0_103, 日本作物学会東北支部
  41. ^ BFB対策に関する指針 日本種苗協会(2012年11月1日)2021年6月26日閲覧
  42. ^ a b 食品衛生検査所レポート No.34 青果市場でのすいか爆発事例について” (PDF). 福岡市食品衛生検査所. 2017年9月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年4月8日閲覧。
  43. ^ “中国でスイカの「爆発」相次ぐ 化学薬品が原因か”. 47NEWS. 共同通信. (2011年5月18日). オリジナルの2015年8月26日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150826115432/http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051801001040.html 2011年6月9日閲覧。 
  44. ^ 中国スイカに続々と超怪奇現象 白い泡、中毒症状、そして爆発 原因はやはり…”. 産経WEST. 産経新聞. 2020年4月15日閲覧。
  45. ^ a b c d e f g FAOSTAT>DOWNLOAD DATA”. FAOSTAT. 国際連合食糧農業機関(FAO)language=英語. 2014年11月19日閲覧。
  46. ^ a b c Watermelon production in 2016; Crops/Regions (World list)/Production quantity (from pick lists)”. Food and Agriculture Organization of the United Nations, Statistics Division (FAOSTAT) (2018年). 2018年2月10日閲覧。
  47. ^ a b すいか(西瓜、スイカ)産地(都道府県)”. ジャパンクロップス. アプレス. 2023年8月5日閲覧。
  48. ^ 熊本市植木町商工会”. 2016年12月5日閲覧。
  49. ^ 食の王国山鹿 山鹿市農産物ガイド”. 2016年12月5日閲覧。
  50. ^ JA富里市 富里スイカについて”. 2016年12月5日閲覧。
  51. ^ “スイカ模様のガスタンク、解体へ 千葉・富里のシンボル”. 毎日新聞. (2020年9月6日). https://mainichi.jp/articles/20200906/k00/00m/040/108000c 2020年9月30日閲覧。 
  52. ^ “雄姿見納め…富里のシンボル スイカのガスタンク撤去へ”. チバテレプラス. 千葉テレビ放送. (2020年9月29日). https://this.kiji.is/682878702228145249 2020年9月30日閲覧。 
  53. ^ ラッカボッチ.com”. 2016年12月5日閲覧。
  54. ^ 尾花沢市役所 尾花沢の夏スイカ”. 2016年12月5日閲覧。
  55. ^ ながいファン倶楽部”. 2016年12月5日閲覧。
  56. ^ a b c d e f g h i 『鳥取県まるごと読本』,鳥取県今井出版/編,今井出版,2015,ISBN 9784901951838,p30-31,43
  57. ^ “鳥取スイカ、今年もドバイへ ブランド向上期待”. 日本海新聞. (2009年5月15日). オリジナルの2009年5月17日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090517105912/http://www.nnn.co.jp/news/090515/20090515047.html 2016年8月1日閲覧。 
  58. ^ 新潟・食品名産図鑑”. 2016年12月5日閲覧。
  59. ^ 新潟・食品名産図鑑”. 2016年12月5日閲覧。
  60. ^ 松本ハイランド農業協同組合”. 2016年12月5日閲覧。
  61. ^ 阿見町役場 阿見町の特産品”. 2016年12月5日閲覧。
  62. ^ JA全農石川県本部”. 2016年12月5日閲覧。
  63. ^ JA全農石川県本部”. 2016年12月5日閲覧。
  64. ^ アグリパーク食彩村”. 2016年12月5日閲覧。
  65. ^ 90年代よ永遠に!「やまだかつてない」DVD-BOX発売”. お笑いナタリー (2009年10月15日). 2024年1月12日閲覧。
  66. ^ スイカバーとは Lotte land「海の家スイカバー」
  67. ^ Satoko Yasuda 安田 聡子 (2023年11月8日). “「スイカ」がパレスチナへの連帯で使われる理由。愛される食べ物が抵抗のシンボルになるまで”. ハフポスト日本版. BuzzFeed Japan株式会社. 2023年11月13日閲覧。
  68. ^ スイカのバトンで停戦を 抵抗の象徴、SNSで発信”. 共同通信社 (2023年11月10日). 2023年11月13日閲覧。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「スイカ」の関連用語

スイカのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



スイカのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのスイカ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS